障害者グループホーム(共同生活援助)を運営するとき、さまざまな制約があります。その中の一つが避難訓練です。
規模の大きい障害者グループホームでは、消防法で避難訓練が義務付けられています。ただ規模の小さい障害者グループホームであっても、消防法とは異なる指針によって避難訓練を実施しなければいけません。つまり、すべての共同生活援助で避難訓練が必須です。
それでは、どのように考えて障害者グループホームで避難訓練を実施すればいいのでしょうか。共同生活援助での避難訓練について確認していきます。
もくじ
障害者グループホームで避難訓練は必須
消防法では、特定の施設について防火管理者の設置を義務付けています。障害者グループホームであれば、収容人数が30人以上の場合に防火管理者の設置が必要です(区分4以上の入居者が8割超の場合、収容人数10人以上で防火管理者の設置が必要)。
それと同時に避難訓練も必須です。一般的には、こうした施設では年2回以上の避難訓練を実施します。
それでは、規模の小さい共同生活援助では避難訓練の義務がないかというと、そうではありません。確かに消防法での規定はないものの、厚生労働省の規定では「共同生活援助では災害への対策が必須」となっています。こうした災害への対策には避難訓練も含まれます。
参考までに、厚生労働省による調査では、避難訓練を実施している共同生活援助は9割ほどであり、ほとんどの施設で避難訓練をしていることがわかっています。そのため避難訓練はすべての施設で行うといいです。
障害者の特性に配慮して避難訓練を実施
健常者であれば、避難訓練はスムーズです。ただ障害者が入居している施設のため、障害者の特性を考慮して避難訓練を実施しなければいけません。
軽度の障害者であれば、事前に避難訓練の実施を伝えておくことで、大きな問題なく避難訓練できます。一方で重度の障害者では、自らの力で避難できないケースが多いです。
- 知的障害により、避難訓練の事実を認識できない
- 精神疾患で思うように動けない
- 車いすで急な動きが困難
こうした障害者については、通常は職員による避難の誘導も必要になります。また、火事や地震など実際に災害が起こったとき、利用者が施設内のどこにいるのかわからない状況で避難させなければいけません。そこで、あらゆる状況を想定した避難訓練でなければいけません。
なお通常、小規模の障害者グループホームであっても年1~2回ほどは避難訓練を実施します。このときは昼間だけでなく、支援する介護スタッフが少なくなる夜間の避難訓練も想定しなければいけません。
障害者グループホームは夜間(夕方から次の日の朝)に利用者を支援する施設であり、夜に災害が発生するケースもあります。そのため、夜の避難訓練も重要です。
事前に業務継続計画(BCP)を策定する
それでは、障害者グループホーム(共同生活援助)で単に避難訓練を行えばいいかというと、そういうわけではありません。事前に業務継続計画(BCP)を策定しましょう。
共同生活援助では、感染症や災害に備えて業務継続計画(BCP)が必須になっています。もし業務継続計画(BCP)を策定していない場合、減算となります。減算を回避するためには、以下の対策が必要になります。
- 業務継続計画(BCP)を策定:感染症と災害の両方
- 業務継続計画(BCP)に従い、必要な対応を行う
避難訓練というのは、利用者の安全を確保するだけでなく、災害が発生した後であっても素早く業務を再開させるスタッフのための訓練でもあります。そこで災害を想定した避難訓練を実施すると共に、業務継続計画(BCP)についても確認しましょう。
避難訓練を行い、記録を残す
また実際に避難訓練を実施したのであれば、きちんと記録を残しましょう。監査時に避難訓練について聞かれたとき、記録を残していれば避難訓練の実施について確認されても問題なく返答できます。
そこで、避難訓練の実施と同時に避難訓練報告書やチェックリストなどを残しましょう。
前述のとおり、業務継続計画(BCP)の策定は減算にも関わる重要な項目です。そこで避難訓練の実施と共に業務継続計画(BCP)の内容を確認し、災害時に利用者の安全確保とスタッフの連携確認を行えるようにしましょう。
障害者グループホームで避難訓練を行う
すべての障害者グループホーム(共同生活援助)について、避難訓練が必要になります。規模の大きい施設や重度の障害者をメインで受け入れている施設だけでなく、小規模の共同生活援助であっても避難訓練は必要です。
実際に避難訓練を行うとき、重度の障害者への対応を考えなければいけません。軽度の障害者とは異なり、一人だけでの避難が困難だからです。そのため避難方法を事前に職員が確認するのは必須ですし、チェックリストの作成も重要です。
また昼間だけでなく、夜間の避難訓練も想定しなければいけません。実際のところ、共同生活援助は夜間の支援がメインです。また避難訓練をしたら記録を残しましょう。
すぐの避難が難しい障害者が入居しているからこそ、避難訓練は重要な項目になります。そこで、小規模の施設であっても定期的に避難訓練を実施しましょう。