障害者グループホーム(共同生活援助)を運営するとき、利用者(障害者)が入院してしまうことがよくあります。入院によって障害者グループホームは報酬の算定ができません。

ただ入院中の利用者に対して、適切な支援を行えば基本報酬とは異なる内容にて請求できます。そうした入院中に関する加算に入院時支援加算・長期入院時支援特別加算があります。

それでは、利用者が入院したときにどのように加算を活用すればいいのでしょうか。入院時支援加算・長期入院時支援特別加算について解説していきます。

利用者の入院で算定できる加算

利用者(障害者)が病院へ入院する場合、一般的には家族が支援をします。健常者であっても、家族が病院へ出向くことで必要な支援を行うのが普通です。

ただ障害者グループホームに入居している利用者では、家族と縁が切れているなど、家族の支援を得られないケースがよくあります。そうしたとき、家族の代わりに共同生活援助のスタッフが入院中の利用者の支援を行います。

もちろん、毎日病院へ行くことはありません。ただ、入院時に必要な支援を行うことで加算を得られるというわけです。

なお、支援の内容としては、入院先を訪問しての「洋服の準備」「病院との連絡調整」「利用者の相談支援」などが挙げられます。

加算を取得できる共通の条件

それでは、入院時支援加算・長期入院時支援特別加算の共通事項としては何があるのでしょうか。入院時に利用者の支援を行うのは当然として、以下の点が共通事項になります。

  • 家族による入院支援が困難
  • 個別支援計画に状況を記載:家族が遠方に住んでいる、家族と連絡を取れないなど
  • 相談支援や病院との調整など、記録に残す

事前の届け出は不要であるものの、入院日の記録や支援記録の整備が必要になります。このとき、訪問頻度としては7日に1回以上を目安にしましょう。

  • 入院期間が7日未満:訪問1回以上
  • 入院期間が7日以上:訪問2回以上(7日に1回以上)

なお入院日と退院日を除いて入院日数をカウントします。入院日と退院日について、障害者グループホームは基本報酬を算定できます。そのため、入院時支援加算・長期入院時支援加算で入院日や退院日の報酬を気にする必要はありません。

加算の内容を確認

それでは、入院時支援加算と長期入院時支援特別加算にはどのような違いがあるのでしょうか。両方を算定することはできず、一方だけの算定になります。

実際に算定するとき、支援内容に大きな違いはありません。そこで入院日数や加算の点数を考慮して、有利なほうの加算を得るようにしましょう。このとき、大まかな違いは以下になります。

  • 入院時支援加算:月に1回算定
  • 長期入院時支援特別加算:3日目から日ごとに算定

それぞれについて確認していきます。

入院時支援加算:月に1回算定

入院時支援加算には2種類あります。違いは入院日数だけであり、以下のようになっています。

  • 入院時支援特別加算 イ:561単位
  • 入院時支援特別加算 ロ:1,122単位

【入院時支援特別加算 イ】

入院日数が3日以上・7日未満の場合に算定できます。つまり、入院日数が2日未満の場合は算定できません。

なお入院期間が月をまたぐ場合、それぞれの月で「何日の入院期間があるのか」を確認し、算定します。例えば5/29に入院する場合、5月の入院期間は5/29を除く5/30~31の2日間です。そのため、5月は入院時支援特別加算を算定できません。

【入院時支援特別加算 ロ】

その月の入院日数の合計が7日以上の場合に算定できます。それぞれの月ごとに入院日数を確認するとき、特定の月の入院日数が7日以上である必要があります。

長期入院時支援特別加算:3日目から日ごとに算定

月1回の算定ではなく、日ごとに算定するのが長期入院時支援特別加算です。3日目から日ごとに算定するのはどれも同じですが、共同生活援助の形態によって算定可能な単位が異なります。

  • 長期入院時支援特別加算 イ:122単位(介護サービス包括型)
  • 長期入院時支援特別加算 ロ:150単位(日中サービス支援型)
  • 長期入院時支援特別加算 ハ:76単位(外部サービス利用型)

長期入院時支援特別加算は最大3か月間まで算定可能です。また月をまたぐ入院の場合、それぞれの月の入院期間について、2日間は算定しないで請求します。

支援の日や家賃請求はどうなる?

なお利用者が入院するとき、支援する日について気になります。入院日について、前述の通り入院時支援加算・長期入院時支援特別加算を算定できません。ただ、実際に支援を行うのはほとんどのケースで入院日です。

このとき、必要な生活支援や連絡調整を入院日に行い、加算を算定するのは問題ありません。つまり、必ずしも入院後に支援を行う必要はありません。むしろ、入院日に共同生活援助のスタッフが支援をしないと利用者は困ります。そのため、入院時に必要な支援をしても大丈夫です。

なお利用者が入院するとき、障害者グループホーム側で基本報酬は算定できないものの、退院後に利用者を迎え入れるために部屋を開けたままにする必要があります。3か月以上の長期入院となる場合は強制退去にできますが、それまでは他の利用者を入れることができません。

そうしたとき、入院中であっても利用者に家賃請求するのは可能です。そこで、家賃補助を考慮して利用者に家賃分をもらいましょう。

障害者グループホームで入院時の加算を請求する

共同生活援助を運営する以上、利用者(障害者)の入院を避けることはできません。特に精神障害者を受け入れる場合、どこかのタイミングで入院となる人が出るのは普通です。

そうしたとき、入院日を含めて適切な支援を行うことにより、入院時支援加算・長期入院時支援特別加算を算定できます。

入院時支援加算と長期入院時支援特別加算について、同時の算定はできません。利用者への支援内容は基本的にほぼ同じであるため、利用者の入院日数を考慮して、有利な方にて請求するといいです。このとき入院日と退院日は基本報酬を算定し、入院時の支援に関する加算は算定しません。

障害者にとって入院は重要です。そうしたとき、家族の支援を得られない利用者は多く、共同生活援助の職員に頼らなければいけません。そこで入院に必要な支援を行い、入院時支援加算・長期入院時支援特別加算を請求しましょう。