非常に重度の障害者として人工呼吸器を装着している方がいます。こうしたほぼ寝たきりの人について、通常は家で過ごしているにしても、場合によっては外出を考えるのは普通です。

当然ながら、一人での外出はできません。そこで、家族やヘルパーによる外出支援が欠かせません。このとき、外出支援サービスを用いて外出できないか考えましょう。これにより、ヘルパーが外出を支援してくれます。

それでは、人工呼吸器を活用している人が外出支援サービスを利用するとき、どのように考えればいいのでしょうか。重度の障害者に対する外出支援について解説していきます。

人工呼吸器の利用者も外出が可能

重症心身障害者や難病患者(ALSなど)の場合、人工呼吸器を装着しなければいけない場合があります。こうした人は基本的に寝たきりとなるため、外出は困難です。

ただ、人工呼吸器を利用している人であっても家族の助けのもとで外出することは可能です。

それでも一人での外出は不可能ですし、家族が他の人の面倒を見なければいけない状況(例えば健常者の子供と一緒に外出)などであれば、人工呼吸器を装着している障害者と一緒の外出は困難です。そうしたとき、外出支援サービスを活用できます。このとき、以下の公的サービスが候補になります。

  • 移動支援
  • 重度訪問介護

これらの公的サービスを活用すれば、重症心身障害者や難病患者であっても外出できるようになります。

移動支援を利用して外へ出る

自治体独自の制度として移動支援があります。移動支援を利用することにより、ヘルパーの助けによって障害者は外出できるようになります。

最重度の障害者が寝たきりであり、こうした障害者は当然ながら移動支援の対象になります。そこで、移動支援の利用申請をすることでヘルパーと一緒に外出しましょう。

・家族同伴で利用できるかどうかは自治体の判断

なお一人での外出ではなく、「家族と一緒に障害者が外出する」という場面は多いです。このとき、人工呼吸器を利用している寝たきり障害者に対して移動支援を依頼できるのでしょうか。

これについては自治体ごとの判断になります。移動支援は自治体独自の制度であり、自治体によって細かい利用基準が異なります。

例えば、「保護者が他の子供(健常者)の面倒を見る必要がある」という場合、障害者に対する移動支援を利用可能にしている自治体は存在します。一方、家族が障害者と同行する場合、どのような場面であっても移動支援の利用を認めていない自治体もあります。そこで、あなたが住んでいる自治体でサービス内容を確認しましょう。

重度訪問介護の利用者は時間の制限がない

ただ移動支援の場合、「家族と一緒の外出で利用できない自治体がたくさん存在する」「宿泊を伴う外出での利用が困難」などの制限があります。そのため、どうしても使いにくいです。

そこで重症心身障害者や寝たきりなのであれば、重度訪問介護を活用しても問題ありません。人工呼吸器を利用している最重度の障害者であれば、重度訪問介護を依頼できます。1回の利用が3時間以上と長時間にわたって利用できるホームヘルプが重度訪問介護です。

重度訪問介護の特徴として、利用プランが事前に決まっていないことが挙げられます。つまり依頼の自由度が高く、どのような介護をヘルパーに依頼しても問題ありません。要は、外出や外泊を含めて重度訪問介護では何でも依頼可能です。例えば、家族と障害者が一緒に行く旅行で重度訪問介護を依頼して問題ありません。

障害児については、重度訪問介護を利用できません。そのため重症心身障害児ではなく、あくまでも大人の重症心身障害者や難病患者である必要はあるものの、重度訪問介護であれば寝たきりの障害者の外出であっても実現できます。

介護職員は医療行為を行えない

なお注意点として、基本的に介護職員は医療行為を行うことができません。人工呼吸器を装着して外出するとなると、どうしてもトラブルのときに大変です。ただ介護職員は医療行為を行えない以上、医療行為に関係する対応は同伴している家族が行わなければいけません。

実際のところ、特殊な研修を受けている介護士であれば、多少の医療行為については対応が可能です。ただ、ヘルパーで可能な医療行為は以下に限られます。

  • 喀痰吸引
  • 胃ろうでの経管栄養

移動支援や重度訪問介護によって障害者の外出は可能です。ただ、人工呼吸器など生命維持装置を利用している人の外出では、どうしても考えるべきポイントが多くなります。

民間救急車や看護師の派遣は可能だが費用は高額

なお介護士ではなく、看護師であれば何も問題なく医療行為を行うことができます。仮に生命維持装置にトラブルがあっても、その場ですぐに対応できます。

そうしたとき民間救急車を利用したり、看護師派遣を依頼したりすれば、人工呼吸器を装着している障害者であっても何も問題なく外出できるようになります。

ただ、どうしても費用は高額になります。そのため何回も利用するのは現実的ではないですし、低所得者では金銭面の関係でそもそも利用が困難です。そのため看護師を用いた外出は理論的に可能であるものの、現実的には金銭面の問題で利用が難しくなっています。

寝たきりでも外出支援サービスを利用できる

重症心身障害者であったり、ALSなどの難病患者であったりする場合、人工呼吸器を利用している人がたくさんいます。こうした寝たきりの障害者が外出したい場合、移動支援や重度訪問介護などを活用して外へ出ることができます。

移動支援について、家族同行が認められるかどうかは自治体の判断によります。一方で重度訪問介護であれば、家族同伴での旅行を含めてさまざまな場面で利用できます。

ただ医療的ケアが必要な障害者の場合、医療行為について考えなければいけません。介護士は医療行為を行うことができないため、外出時に何かトラブルがあると家族が対応する必要があります。また、看護師派遣を依頼することは可能ですが非常に高額です。

重症心身障害者や難病患者を含め、人工呼吸器の装着・寝たきりの人が外出するのは大変です。そこで、移動支援や重度訪問介護を利用することで外へ出るようにしましょう。

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