精神障害者が入手できる障害者手帳に精神障害者保健福祉手帳があります。ほかの障害者手帳とは異なり、精神障害者保健福祉手帳には申請・更新するときに特別なルールがあります。

例えば、精神障害者保健福祉手帳へ申請するためには、精神疾患の初診日から6か月以上が経過している必要があります。

また精神疾患では、時間経過と共に症状の重さが変化するのは普通です。そのため定期的な更新が必要になりますが、このときは医師の診断書が必要になります。期限切れだと利用できないため、早めに更新しなければいけません。

それでは、精神障害者はどのように障害者手帳へ申請・更新すればいいのでしょうか。精神障害者保健福祉手帳の申請・更新の方法や必要書類について解説していきます。

精神障害者保健福祉手帳の新規申請・更新に必要なもの

障害者手帳を入手するためには役所で手続きする必要があります。そこで、まずは役所に出向いて精神障害者保健福祉手帳の申請を相談しましょう。

このとき、多くのケースで必要書類は以下になります。

  • 申請書(役所に置いてある)
  • 医師の診断書
  • 写真
  • マイナンバーを確認できる書類

こうした書類を障害福祉課などで提出することにより、精神障害者保健福祉手帳の手続きが進むようになります。これは、新規申請だけでなく更新時も同様です。

初診日から6か月以上が経過している必要あり

それでは、いつでも精神障害者保健福祉手帳の新規申請が可能かというと、そういうわけではありません。身体障害者や知的障害者とは異なり、精神障害者は「障害がある」という状態がわかりにくいです。また身体障害や知的障害とは異なり、精神疾患が治ることもよくあります。

そこで精神疾患が長期間継続しており、回復の見込みが薄い状態である必要があります。症状固定により、病気が治りにくい状態である必要があり、身体障害とは違って発症してすぐに障害者手帳を入手できないのです。

そのため、精神障害者は「精神疾患の初診日から6か月以上が経過している場合に障害者手帳へ申請できる」となっています。

統合失調症やうつ病、双極性障害、パニック障害、発達障害と人によって症状は異なるものの、いずれにしても初診日から半年以上が経過している必要があります。

・交付まで2か月ほどかかる

それでは、すべての書類を集めて精神障害者保健福祉手帳へ申請する場合、どれくらい時間がかかるのでしょうか。一般的には、障害者手帳へ申請して新たに交付されるまでに約2か月かかります。

初診日から6か月以上の経過が必要であり、必要書類を集めて提出してさらに約2か月が必要であるため、精神障害者が障害者手帳を交付してもらうにはある程度の時間がかかると考えましょう。

医師の診断書が最も重要な書類

このとき、精神障害者保健福祉手帳への申請・更新で最も重要な書類は医師の診断書です。新規申請のときだけでなく、更新時も医師の診断書が必須です。

精神障害者保健福祉手帳には1~3級があり、症状の重さによって等級が変化します。また症状が軽すぎる場合は障害者手帳を得られません。このとき、「精神障害者保健福祉手帳を得られるかどうか」「どの等級になるのか」を判断する書類が医師の診断書(意見書)です。

医師の診断書からしか、どの程度の症状をもつ人なのかを判断できません。ただ身体障害者や知的障害者とは異なり、精神疾患では症状の重さを示す客観的なデータを数値によって提示することができません。そのため、記載される診断書の中身は医師によって大きく異なり、障害者手帳を入手できるかどうかが違ってきます。

そのため、診断書を書いてもらうときには「具体的にどのような生活上での困難があるのか」を詳細に伝えましょう。例えば以下は、精神障害者保健福祉手帳へ申請するときの診断書の一部です。

このように、アパートで一人暮らしをしていると仮定して「身辺の清潔保持ができるか」「他人との意思疎通ができるか」「社会的手続きが可能か」などについて、行えるかどうかが記載されることになります。このうち、できない項目について正しくチェックしてもらう必要があります。

・診断書作成の費用は補助が可能

なお医師に診断書作成を依頼するとき、作成費用は保険適用とはならず、すべての人について完全自費となります。通常、診断書の作成費用は「5000円+消費税」です。

ただ精神障害者は満足に働けず、低所得者であることが多いです。こうした人にとって、診断書の作成費用が重荷になることは多いです。そこで以下のように、障害者手帳の申請に必要な医師の診断書作成代を補助してくれるケースは多いです。

実費のうち、どれだけ補助してくれるのかは自治体によって異なります。ただ、このように診断書の助成制度があることは認識しましょう。

書いてくれない場合、医師を変えればいい

ただ精神障害者にとって、最も問題となるのが医師による協力です。医師によっては、「精神疾患による症状は一つの性格であり、診断書を書きたくない」と考える人もいます。

しかし、そうなるとあなたは困ります。本来であれば、医師の診断書によって障害者手帳を発行してもらい、障害者として公的サービスを受けなければいけないにも関わらず、医師の主観による判断によって精神障害者保健福祉手帳を発行できないからです。

この場合、仕方ないので医師を変えましょう。あなたのことを考えていないダメな医師ではなく、あなたの生活状況を踏まえて、本当の意味で寄り添ってくれる人を主治医にしなければいけません。意味不明な理由で診断書を拒否する医師に依頼する必要はありません。

診断書の内容によって「障害者手帳を入手できるか」が大きく変わるにも関わらず、そもそも診断書すら書いてくれないのは論外です。そこで、優れた医師を探す必要があるのです。

更新はいつから?有効期限があり、2年おきに更新が必要

それでは、いつから更新作業を進めればいいのでしょうか。精神障害者保健福祉手帳には有効期限があるため、その前に更新作業を完了しなければいけません。以下のように、障害者手帳に有効期限が明記されているはずです。

精神障害者保健福祉手帳について、有効期限は2年です。また、有効期限が切れる3か月前から申請できます。そこで、更新できるようになったら早めに手続きを開始するといいです。

新規申請のときと同じように、医師から診断書をもらい、必要書類を役所で提出すれば更新作業が完了します。

期限切れは利用できず、早めの更新手続きが必須

なお障害者手帳の更新を忘れてしまった場合、期限切れとなります。当然ながら、期限切れの障害者手帳を利用することはできません。

更新を忘れてしまった場合、それはあなた(または親族)の責任です。この場合は福祉サービスの利用ができなくなったり、障害者割引の利用ができなくなったりします。つまり、健常者とまったく同じ条件になります。

そうなると必然的に毎日の支出が高額になり、日々の生活が苦しくなります。期限切れになるとデメリットばかりであるため、できるだけ早めの更新手続きが必須なのです。

障害者手帳が手元にない場合、障害者割引はない

なおおすすめなのは、更新が可能になった段階(期限切れの3か月前)で素早く医師の診断書を入手し、役所で更新手続きをすることです。

障害者手帳の更新作業は一般的に1~2か月の時間がかかります。また精神障害者保健福祉手帳の更新中であっても、仮証明書などを発行しない自治体が多いです。そのため、有効期限のギリギリになって更新手続きをする場合、「更新中だが手元に障害者手帳がない」という状況に陥ります。

残念ながら、この状態であっても障害者割引を利用できません。手元に新しい障害者手帳がないからです。そのため、それまで利用していたバス料金は半額ではなく、正規料金になります。更新の時期が悪ければ、所得税・住民税の控除を受けられないリスクもあります。

精神障害者保健福祉手帳の更新というのは、有効期限までに手続きをすればいいわけではありません。障害者手帳の再発行に1~2か月の時間が必要であることを考慮すると、障害者手帳のない空白期間を作らないため、更新手続きが可能になった段階で素早く必要書類を提出するべきです。

精神障害者保健福祉手帳の申請・更新を行う

身体障害者や知的障害者とは異なり、健常者であっても急に精神疾患を発症する人は多いです。誰でも精神障害者になる可能性があるため、精神障害者保健福祉手帳へ新規申請・更新を考える人はたくさんいます。

こうした精神障害者について、初診日から6か月以上が経過していなければ申請できません。また、審査では医師の診断書が最重要になるため、日常生活で困っていることを詳細に伝え、診断書に反映してもらうようにしましょう。

なお精神障害者保健福祉手帳には有効期限があります。当然、期限切れの障害者手帳は利用できません。また更新・再発行まで1~2か月の時間がかかるため、更新可能になったら可能な限り早い段階で手続きをしなければいけません。

精神障害者保健福祉手帳を保有するとき、独自の注意点があります。医師の診断書によって却下されるかどうかが変わりますし、有効期限にも注意が必要です。そこで、これらの内容を把握して精神障害者保健福祉手帳の新規申請や更新手続きを行いましょう。

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