低所得者が主に利用する施設があり、その一つが簡易宿泊所(ドヤ)です。以前は日雇い労働者が寝泊まりする場所として簡易宿泊所が多く利用されていました。

そうしたとき、いまでも安い金額で宿泊できる施設が簡易宿泊所です。簡易宿泊所というのは、要はゲストハウスと部屋の構造が同じであり、相部屋や狭い部屋、共用のトイレ・バスルームなどによって宿泊費用を低く抑えた施設を指します。

それでは生活保護受給者や住所不定のホームレスが簡易宿泊所(ドヤ)を利用するのは優れるのでしょうか。低所得者が利用する簡易宿泊所について解説していきます。

ドヤで知られる簡易宿泊所

昔、日雇い労働によって栄えた町が複数あります。いまでは日雇い労働が禁止されているものの、以前の名残を受けて簡易宿泊所(ドヤ)が多く立ち並んでいる地域があります。部屋が小さくトイレ・バスルームが共用であることから、宿(ヤド)とは呼べず、反対から読んで「ドヤ」と呼ばれました。

またドヤ街でなくても、観光客などが安く宿泊できるゲストハウスは日本中に存在します。ゲストハウスに住む場合、相部屋や極小の部屋にて住むことになります。

そういう意味では、低所得者でなくても旅行などで簡易宿泊所を利用するのは普通です。安く泊まりたい需要は多いからです。

なおカプセルホテルを利用するとなると、それなりに値段が高いです。一方で簡易宿泊所の場合、さらに安い金額で泊まれるようになります。

料金は賃貸に比べて高く、安いわけではない

失業者や障害者、ホームレスなどの低所得者の中には、住む場所がない人がいます。そうしたとき、人によっては簡易宿泊所(ドヤ)の利用を検討する場合があります。

一般的なホテルに比べると、簡易宿泊所の料金は非常に安く、一泊あたり2000~3000円になります。そのため旅行などの宿泊で利用する場合、安い金額になるので優れます。

ただ同じ場所に継続して生活することを考えると、一般賃貸に比べて高額になり、必ずしも安いわけではありません。例えば一泊2500円の場合、ザックリと月に7万5000円となります。

  • 2500円 × 30日 = 7万5000円

この場合、生活保護で支給される住宅扶助の上限金額を超えてしまいます。当然、住宅扶助の上限金額を超えると生活保護の対象外になってしまい、支給拒否されます。簡易宿泊所というのは、あくまでも日雇い労働を含めた収入のある人の場合で有効な宿泊場所であり、生活保護(十分な収入のない人)には向いていません。

住民票を登録できないケースは多い

また簡易宿泊所(ドヤ)の料金が一般賃貸に比べて高くなることに加えて、ゲストハウスと同じ仕組みなので住民票を登録できないケースが多いです。基本的にホテルに住民票を置けないのと同じように、簡易宿泊所にも住所登録できません。

昔の名残により、簡易宿泊所(ドヤ)にて住民票を登録できる自治体が存在するのは事実です。ただ、すべての簡易宿泊所が住民登録に対応しているわけではありません。

住所不定のホームレスで社会復帰が進まない理由として、住民登録できないことがあげられます。このような現実によって、さまざまな公的サービスを利用できなくなるのです。そのため、やはり失業者や障害者、ホームレスを含めた低所得者が簡易宿泊所を利用するのは適切ではありません。

生活保護・ホームレスは無料低額宿泊所を利用する

そのため住所のない低所得者は通常、無料低額宿泊所を活用します。たとえ住所不定のホームレスであっても、何も問題なく住める場所が無料低額宿泊所です。

簡易宿泊所と無料低額宿泊所は大きく異なります。簡易宿泊所では住民票を置くことができなくても、無料低額宿泊所であれば住民票を置けます。つまり、住所不定の状態ではなくなります。ホームレスは年々少なくなっていますが、この理由として無料低額宿泊所の普及があります。

また無料低額宿泊所の場合、必ず住宅扶助の上限範囲内に家賃が設定されます。そのため生活保護であれば、確実に無料低額宿泊所に住めます。

このとき、トイレやお風呂が共同利用になるのは簡易宿泊所と共通しています。ただ無料低額宿泊所の場合、相部屋や極小の部屋ではなく、個室で過ごすケースが多いです。

法改正により、無料低額宿泊所の開業では個室が原則になりました。なお以前から運営されている無料低額宿泊所では極小の部屋(簡易個室)が残っているものの、個室利用できる無料低額宿泊所のほうが多いです。

・低所得者のみ無料低額宿泊所を利用できる

なおゲストハウスと部屋の構造が同様である簡易宿泊所について、旅行客や外国人を含めて誰でも利用できます。一方で無料低額宿泊所は生活保護や住民税の非課税世帯など、低所得者のみ利用でき、誰でも活用できるわけではありません。

また、住居を確保できない低所得者が役所から紹介される施設は簡易宿泊所ではなく、無料低額宿泊所になります。無料低額宿泊所というのは、低所得者のみが利用できる宿泊場所と考えましょう。

一般賃貸や障害者グループホームを視野に入れる

なお低所得者が無料低額宿泊所を利用するとはいっても、あくまでも一時的な利用が原則になります。事実、多くの自治体で「無料低額宿泊所の利用は1年以内」などのガイドラインを出しています。そこで生活保護やホームレスで無料低額宿泊所を利用するにしても、どこかのタイミングで他の施設へ移りましょう。

このとき、一般的には以下のように考えます。

  • 健常者:賃貸マンション・アパート
  • 65歳未満の障害者:障害者グループホーム
  • 65歳以上の高齢者:老人施設

健常者であれば、一般賃貸にて住めば十分です。そこで、生活保護を受け入れてくれる賃貸マンション・アパートを探して引越しましょう。

ただ中には、定期的な通院・治療が必要であったり、精神疾患(うつ病、統合失調症、発達障害、パニック障害など)を抱えていたりする障害者もいます。この場合、すぐの社会復帰を望めないため、障害者グループホームを利用します。

複数の障害者が共同生活を送る施設が障害者グループホームです。また介護スタッフが常にいるため介助を依頼でき、それでいて無料低額宿泊所よりも低い金額にて過ごせます。

一方で高齢者の場合、老人施設を利用する人が多いです。障害者グループホームに対して、老人施設はどうしても利用料が高額になりがちです。そのため生活保護受給者で住める老人施設の数は少ないものの、根気よく探すことで老人ホームを利用できます。

生活保護で簡易宿泊所は適さない

非常に低額にて宿泊できる施設が簡易宿泊所です。障害者やホームレスなどの低所得者に限らず、誰でも簡易宿泊所(ドヤ)を利用できます。そのため旅行客や外国人を含めて、多くの人が簡易宿泊所を活用しています。

ただ簡易宿泊所というのは、日雇い労働者のように、働いている人が利用するべき場所になります。事実、簡易宿泊所で寝泊まりする場合、住宅扶助の上限金額を超えることで生活保護の対象外になるのは普通です。

そのため、住所のない生活保護受給者は簡易宿泊所ではなく、無料低額宿泊所を利用します。この場合、住宅扶助の上限金額内で住めます。ただ無料低額宿泊所は一時的な利用が原則であるため、早めに次の入居先を見つけましょう。

簡易宿泊所と無料低額宿泊所には、大きな違いがあります。こうした違いを認識して、低所得者は正しく住む場所を確保しましょう。

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