知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者で十分に働くことができない場合、多くのケースで低所得者になります。低所得者で貯金がほとんどない場合、生活保護の受給を考えます。

こうした低所得者について、持ち家を保有するケースがあります。持ち家に住んでいる場合でも、多くのケースで家に住みながら生活保護を受けることができます。ただ場合によっては、生活保護を受けるために住宅の売却を求められる人もいます。

それでは障害者で持ち家を保有している場合、どのように考えて生活保護を受給すればいいのでしょうか。持ち家を保有する障害者が生活保護を受ける方法を解説していきます。

原則、不動産は売却が必要

生活保護を受給するためには、住民税の非課税世帯など本人が低収入であることに加えて、資産を保有していないことが大前提となります。資産としては、例えば以下があります。

  • 預貯金
  • 不動産:家、土地、田畑
  • 自動車
  • 貴金属
  • 高級ブランド品
  • 貯蓄性のある生命保険
  • 株・債券

持ち家は不動産に該当します。そのため原則として、生活保護を受給するためには不動産を売却しなければいけません。

居住中の持ち家は売却しなくてもいい

ただ居住中の持ち家については、生活保護を受給するときに売却しなくても問題ありません。生活保護で不動産の取り扱いについて、以下のようになっています。

  1. 不動産は売却が原則
  2. 被保護世帯の居住用の家屋・土地は保有を容認し、生活保護を適用
  3. ただし不動産価値が著しく大きい場合、売却などを検討

生活保護の申請をするとき、ケースワーカーによる調査が行われます。このとき、住んでいる家であれば、売却しなくても問題ないケースがよくあります。

障害者が生活保護を申請するとき、賃貸物件に住む場合は生活保護費の中から家賃が出されます。そのため持ち家の売却をするよりも、持ち家を維持してくれたほうが無駄な生活保護費を出さずに済みます。また、障害者は継続して持ち家に住めます。

これらの事実を考えると、いま住んでいる家がある場合、持ち家を維持してもらいつつ生活保護を受給する方が障害者にとっても役所にとっても優れます。

持ち家でも売却を求められるケース

なお、すべてのケースで持ち家の保持ができるかというと、そういうわけではありません。以下の場合、生活保護を受けるには持ち家を売却しなければいけません。

  • 住んでいない不動産
  • 住宅ローンが残っている
  • 資産価値が高い不動産

それぞれについて確認しましょう。

住んでいない不動産は売却が必要

不動産を売却しなくても生活保護を受給できるのは、対象となる不動産に実際に住んでいるケースです。そのため持ち家であっても、住んでいない不動産は事前に売却しなければいけません。

特に障害者の場合、たとえ不動産を保有していたとしても、障害者グループホームなどの施設で生活している人はたくさんいます。自宅では介護スタッフによる支援がないものの、障害者施設ではスタッフによる支援が常にあるため、障害者グループホームで過ごすのです。

障害者グループホームなどで過ごしている場合、保有するすべての不動産を売却しなければ生活保護を受給できません。持ち家を売らなくてもいいのは、あくまでも「いま住んでいる不動産」に限られます。

また別荘やその他の土地など、いま住んでいる家とは関係ない不動産についても、生活保護の受給では事前に売却しなければいけません。特に実家を相続したものの、そこに住んでいない場合、生活保護を受けるためには実家を売る必要があります。

住宅ローンが残っていると生活保護はNG

ただいま住んでいる不動産であっても、住宅ローンが残っている場合は生活保護を受給できません。住宅ローンを完済していない場合、生活保護の受給前に不動産を売る必要があります。

住宅ローンが残っている状況で生活保護が許可される場合、生活保護のお金を利用して個人資産を形成していることになります。当然、この状況は生活保護に適しません。

なお、以下のケースでは例外的に不動産の売却を求められない場合があります。

  • ローンの残高が300万円以下
  • 残り5年以内とローン返済期間が短い

あと少しでローンの支払いが終わる場合、生活保護によって賃貸に住むよりも、そのまま継続して持ち家に住んでもらったほうが生活保護費を低く抑えられます。また生活保護受給者にしても、同じ家に住み続けられます。

ローンが残っていると基本的に売却が必要であるものの、ローンの多くを既に支払っている場合、例外的に生活保護を受給しながら継続して持ち家に住めます。

資産価値が高い不動産は売却が必要になる

ただ住んでいる持ち家が通常よりも豪華な場合、売却が必要になるケースがよくあります。例えば東京の一等地に家がある場合、売却によって1億円以上になるのは普通です。そうなると、生活保護は不要です。

不動産を売却したお金を利用して障害者グループホームなどに住む場合、1億円もあれば何も不自由することなく一生住めます。そのため資産価値が高い不動産については、たとえ持ち家であっても売却しなければいけません。

また、住宅規模が明らかに見合っていない場合も指導されます。例えば1~2人で住んでいるものの、4LDKの広い持ち家に住んでいる場合、明らかに住宅規模が大きいです。

もちろん田舎の住宅であり、資産価値が低い場合は家の規模が大きくても特に問題ありません。ただ都市部の広い家に1~2人で住んでいる場合、生活保護の受給で住宅を売らなければいけないケースがあることを理解しましょう。

生活保護で持ち家の保有に制限がある

障害者で持ち家を保有するケースがあります。こうした知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者について、生活保護を受給したい人は基本的に不動産を売却しなければいけません。

ただいま住んでいる持ち家については、生活保護を受給する場合であっても例外的に売る必要はありません。保有する家に住みながら生活保護を受け取れます。

しかし、障害者グループホームに住んでいるなど対象の家に住んでいない場合、売却が必要です。また住宅ローンが残っていたり、不動産の資産価値が高かったりする場合も売却しないと生活保護の対象外になります。

住んでいる持ち家は生活保護受給で売却が不要であるものの、売らなければいけないケースもあります。こうした内容を理解したうえで、障害者で生活保護を受けたいときは持ち家の取り扱いを考えましょう。

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