失業者やホームレスなど、住居のない低所得者で利用される施設に無料低額宿泊所があります。ただ無料低額宿泊所は貧困ビジネスとして利用されるケースがあり、場合によっては劣悪な環境にて過ごすことになります。

無料低額宿泊所でトラブルや事件が発生しているのは事実です。そこで無料低額宿泊所を利用するとき、どのような問題点があり、どのようにしてトラブルを避けるべきなのか理解しなければいけません。

それでは無料低額宿泊所を利用するとき、何に気を付ければいいのでしょうか。トラブルや事件を避けるため、無料低額宿泊所の貧困ビジネスや問題点について解説していきます。

貧困ビジネスで利用される無料低額宿泊所

お金のない低所得者であっても問題なく利用できる施設が無料低額宿泊所です。通常、住所不明の状態では、あらゆる契約が不可です。そのため、入居のための賃貸契約も結ぶことができません。ただ無料低額宿泊所の場合、いま住所がない人であっても問題なく利用できます。

事実、ホームレスが無料低額宿泊所を利用するケースは多いです。ホームレスであっても、生活保護を利用することで無料低額宿泊所に住めます。

実際のところ、ホームレスの数は年々少なくなっています。これは無料低額宿泊所が多く作られ、さらには生活保護によって住めるからです。

ただ同時に、貧困ビジネスで利用されているのも無料低額宿泊所です。また、無料低額宿泊所の利用実態によって事件へと発展したケースも複数あります。無料低額宿泊所の運営には、問題点もあるのです。

基本個室だが、劣悪な簡易個室も存在する

無料低額宿泊所の利用で一番の問題点が劣悪な環境です。タコ部屋や簡易個室として、非常に狭い部屋に押し込められて生活することになるのです。

実際のところ、いまでは簡易個室は少ないです。2020年に法整備され、新たに無料低額宿泊所を開設するためには、「一人用の個室でなければいけない」と定められました。また、個室の広さは7.43m2(約4.5畳)以上という制限もあります。

ただ以前から運営されている無料低額宿泊所については、いまでも簡易個室(極小の部屋)が残っています。入る無料低額宿泊所を間違えると、そうした劣悪な環境にて過ごすことになるのです。

食事が簡素でまずいのは普通

また無料低額宿泊所が貧困ビジネスでトラブルになるのは、居住環境以外の面でも不備を生じやすいからです。生活保護で出されるお金について、住宅扶助によって家賃部分は無料になります。ただ、食事代や水道光熱費など、その他の部分はすべて自費です。

このとき貧困ビジネスをしている無料低額宿泊所では、不透明な請求によって「生活保護費で支給されるお金のうち、利用者に毎月残るお金が月1〜2万円ほど」となるのは普通です。

この場合、無料低額宿泊所で出される食事が優れているので食事代が大きくなり、生活保護費の残額が少なくなるのかというと、そういうわけではありません。むしろ、簡素でまずい食事のケースはよくあります。「レトルト食品のみ」「ご飯と揚げ物だけの同じ食事」を含め、おいしい食事を期待してはいけません。

また食事がまずいだけでなく、「1日2食の提供」「土日は食事提供なし」などの施設も普通です。この場合、残った少ないお金の中から1日3食を食べるために自費で食事代を捻出する必要があります。

管理費はどうしても高くなりがち

さらに、無料低額宿泊所では管理費が無駄に高くなってしまいます。通常、共益費と生活支援費用を合わせて管理費となります。生活支援費用には、無料低額宿泊所でのサービス料(人件費)が関わっています。

実際にどれくらいの管理費(共益費・生活支援費用)になるかというと、厚生労働省の資料では以下のようになっています。

内訳月の平均費用
共益費5,529円
生活支援費用14,551円

※無料低額宿泊事業を行う施設の状況に関する調査結果について

このように、管理費は月2万円ほどの費用です。これに加えて食事代や水道光熱費、その他の雑費が必要になります。無料低額宿泊所では高い管理費が発生するため、無料低額宿泊所の利用が安いかというと、必ずしもそうではありません。

実際のところ、賃貸マンション・アパートで一人暮らしするよりも、無料低額宿泊所のほうが、手残りが少ないことはよくあります。

違法な施設があり、事件になることもある

こうした貧困ビジネスについて、劣悪な環境で過ごすことになるとはいっても、必ずしも違法なわけではありません。ただ施設によっては違法行為をしており、トラブル・事件へと発展するケースもあります。

よくある違法行為としては、「身分証や印鑑、キャッシュカードをすべて取り上げて管理する」などがあります。この場合、違法行為を平気で行う施設なので当然ながら施設と利用者との間でトラブルが発生します。身分証を取り上げられている場合、少なくとも社会復帰を望めないからです。

また劣悪な環境の場合、入居者同士のトラブルも発生しやすいです。場合によっては、入居者同士のトラブルから事件へと発展します。

実際のところ、自立支援がなく、むしろ社会復帰を望めない無料低額宿泊所が存在するのは事実です。そのため、そうした施設を避けなければいけません。

他の施設へ自ら申し込むのは可能

無料低額宿泊所を利用する場合、通常は事前に施設と面談をします。このとき、「個室ではなく、極小の部屋となる」「食事がまずそう」などの場合、断って他の施設へ申し込むのは問題ありません。

無料低額宿泊所への入居では、役所が窓口になるケースが多いです。ただ役所経由での紹介では、貧困ビジネスをしている施設に入ってしまうリスクがあります。そのためダメな無料低額宿泊所を紹介されたら断り、他の施設を探してもいいです。自ら問い合わせをすることでも無料低額宿泊所へ入居できます。

また貧困ビジネスをしている違法な施設へ既に入居している場合、その施設から抜け出すことを考えましょう。たとえ身分証や印鑑などを没収されていても、身分証は再発行可能ですし、印鑑は再び印鑑登録を済ませれば十分です。

そのため、「まともに運営されている無料低額宿泊所を事前に探し、脱走後にそこで生活する」という方法が可能です。いまの無料低額宿泊所を急に脱走しても、生活保護の打ち切りになることはありません。そのため脱走は問題なく、むしろ劣悪な環境から素早く抜け出すほうが重要です。

素早く他の施設へ移るべき

なお無料低額宿泊所というのは、一時的に住むための場所です。そのため、できるだけ早く一般的な賃貸マンション・アパートを探して一人暮らしを開始しましょう。

一人暮らしを開始すれば、貧困ビジネスでのトラブルに巻き込まれることがなくなります。また社会復帰に向けた準備もできます。

・障害者グループホームを利用する

ただ中には、「病院への通院が必要」「うつ病、統合失調症、パニック障害などの精神疾患がある」などの理由により、すぐに自立が難しい人もいます。この場合、障害者グループホーム(共同生活援助)の利用が第一選択となります。

無料低額宿泊所とは異なり、障害者グループホームでは低所得者だとサービス料(人件費に相当)が無料です。また国や自治体から家賃補助があり、さらには「利用者への過大請求が禁止」されています。そのため本当の意味で最安値での生活になり、しかも介護スタッフによる援助があります。

無料低額宿泊所でずっと過ごす場合、実際のところ社会復帰は難しいです。そこで一般賃貸での一人暮らし、または障害者グループホームでの公的サービスを活用することで、できるだけ早く無料低額宿泊所を離れ、他の場所で生活できるようにしましょう。

ひどい内容の無料低額宿泊所は存在する

貧困ビジネスとして利用される代表例が無料低額宿泊所です。新たに無料低額宿泊所を開業する場合、規定を満たす必要があります。そのため現在では、多くのケースで劣悪な環境にて生活することはありません。

ただ以前から運営されている無料低額宿泊所では、簡易個室を含めて、劣悪な環境はいまでも残っています。このとき食事がまずく、ひどい内容にも関わらず、管理費は高額に設定されているケースがあります。また貧困ビジネスで儲けている施設だと、違法行為をしていたり、トラブルが多かったりします。

そこで問題のある無料低額宿泊所について、役所から紹介されても入居時に断るのは問題ありません。またほかの無料低額宿泊所へ移り、立て直しを図ってもいいです。さらにいうと、可能な限り早く賃貸マンション・アパートや障害者グループホームへ引越し、自立した生活を送れるようにするといいです。

問題点の多い無料低額宿泊所があるのは事実です。そこで、できるだけこうした施設を避け、貧困ビジネスでのトラブルや事件に巻き込まれないようにしましょう。