新たに障害者グループホーム(共同生活援助)を開設するとき、必ず物件探しをしなければいけません。通常、障害者グループホームを探すのは困難になりやすいです。
共同生活援助を開業したくても、そもそも役所が許可してくれないケースがあります。また建物が基準に合致している必要があります。さらに、障害者グループホームとしての利用を許可してくれる大家・保証会社を見つけなければいけません。
実際のところ、障害者グループホームの開業で物件探しは困難になりやすいです。そこで、どのように考えて物件探しをすればいいのか解説していきます。
もくじ
まず開業可能かどうかを役所で確認する
多くの場合、障害者グループホーム(共同生活援助)の経営では物件の建築をせず、賃貸物件を利用して運営します。このとき、まずは「どの都市で障害者グループホームを運営するのか」を決めなければいけません。
どの場所でもいいから開業すればいいわけではありません。場所によって開業の難易度は大きく異なり、例えば都市計画法によって市街化調整区域での開業は難易度が高いです。また都市によって、障害者グループホームに対する開業許可の下りやすさが大きく異なります。
例えば「千葉では障害者グループホームを開設しやすいものの、横浜では難易度が高い」などの違いがあります。
そこで市街化調整区域を避けつつ、どの場所で開業するのかを考える必要があります。いずれにしても、開業可能かどうかを確認する必要があります。そこで、まずは役所へ出向いて確認しなければいけません。
不便な場所だと利用者が集まらない
それでは、役所に確認して「この場所であれば開設できる!」とわかったとして、何でもいいから物件を探せばいいわけではありません。障害者グループホームの立地は非常に重要です。一般的には、以下の障害者グループホームが好まれやすいです。
- コンビニやスーパーから近い
- 駅から近い
- 医療機関へ通いやすい
利用者目線だけでなく、障害者グループホームで働くスタッフについても、駅から近かったり、医療機関へ通いやすかったりすると、通勤や仕事を行いやすくなります。また手作り料理を提供している場合、スーパーに近いと買い物が容易になります。
一方、田舎すぎて周囲に何もない障害者グループホームは利用者(障害者)から避けられやすくなり、スタッフについても働きにくくなります。例えば利用者とスタッフが一緒に買い物の練習をするにしても、周囲にスーパーやコンビニがないと車移動のみとなります。そのため、不便な場所は避けるのが一般的です。
部屋の間取りは取り決めがある
それでは、「問題なく障害者グループホームを開設できる」と行政へのヒアリングでわかり、実際に物件を見つけることができれば問題ないかというと、そうではありません。障害者グループホームを運営するためには、建物が基準を満たしている必要があります。
通常、障害者グループホームでは「一人の利用者に対して、一つの部屋」が割り当てられます。このとき、収納設備などを除いて一つの部屋は7.43m2(約4.5畳)以上と定められています。そのため、複数の部屋があっても、そのうち入居可能な部屋が少ないケースはよくあります。
なお狭い部屋については、スタッフの休憩室として利用するなど、その他の活用法があります。ただ、利用者の居住場所には部屋の大きさに決まりがあります。
・用途変更が不要な物件であると確認する
このとき、大きすぎる物件を利用すると、不動産登記が必要になり、非常に面倒になります。共同生活援助では、建物の用途が寄宿舎(または共同住宅)になります。このとき、200m2を超える物件は用途変更の手続きが必要になり、高額な費用が発生します。
また通常、大家も用途変更に承諾してくれません。そのため、大きすぎない物件を探しましょう。例えば以下は共同生活援助での賃貸借契約書ですが、6LDK(5人入居可能な物件)で延べ床面積は200m2を超えていません。
こうした賃貸物件を選ぶことにより、用途変更なしに共同生活援助を開設できます。
・重度の人ばかりだとスプリンクラーが必要
ちなみに、実際に障害者グループホームを開設した後、重度の人ばかりが利用するとスプリンクラーの設置が必要になります。具体的には、区分4以上の人が約8割超になると、スプリンクラーの設置が必要になります。
経営方針により、「区分3以上の人のみ受け入れ」などのようにする障害者グループホームは存在します。区分が高いほど、得られる報酬が大きくなるからです。ただ、重度の人のみが利用するとスプリンクラーの設置が必要になり、大家の許可を得られなかったり、リフォーム費用が必要だったりして大変になりやすいです。
空き家を探し、交渉する
ここまでの内容を理解したうえで、空き家を探しましょう。前述の通り、新築となると初期投資額が非常に多くなり、リスクばかり膨らみます。そのため特別な理由がない限り、空き家を活用して障害者グループホームをスタートさせます。
このとき、以下の空き物件を探しましょう。
- 一軒家
- 家族用アパート(3LDK、4LDKなど)
- ワンルーム
利用者(障害者)にとってワンルームは人気であるものの、物件を探す側としては一軒家や家族用アパートを探すほうが見つけやすいです。
なお空き家(賃貸物件)に関する情報はネット上にたくさんありますし、地域の不動産会社に聞いても問題ありません。いずれにしても、空き家を探す方法はたくさんあります。
保障会社の関係で物件探しは困難になりやすい
ただ空き家情報はたくさんあるものの、実際には障害者グループホームの物件探しは難航しやすいです。理由としては、大家や保証会社が承諾してくれないからです。
特に保証会社の問題は重大です。大家としては、できるだけ早く賃料収入を得たいですし、長期利用が前提となる障害者グループホームへの活用を認めてくれる人は一定数います。ただ、賃貸での保証会社の許可がなかなか降りません。
賃貸を借りるとき、法人名義で賃貸借契約書を結ぶのは普通です。会社経営者であれば、多くの人が役員社宅として法人名義で賃貸借契約書を交わしたことがあると思います。
ただ共同生活援助としての利用となると、保証会社からの許可がなかなか下りません。そのため、どうしても物件探しに苦労するというわけです。
なお障害者グループホームを立ち上げるとき、通常は大規模なリフォームが不要です。ただ、すべての施設で自動火災報知機や誘導灯の設置が必要になります。
退去時は原状回復が必要になるため、元に戻す必要があります。ただ、大家には事前に消防設備に対する最低限の設置が必要になることは伝えておきましょう。
障害者施設用の不動産会社を頼ってもいい
なお障害者グループホーム(共同生活援助)を運営するための不動産を見つけるにしても、前述の通り保証会社の関係で難航しやすいのが実情です。そのため必要であれば、障害者施設に対して「グループホーム用の不動産を探す専門会社」を頼っても問題ありません。
不動産会社の中には、土地活用として大家に福祉関係の施設を建てることを推進しているケースがあります。または、福祉施設の物件探しを専門にしている不動産会社もあります。
当然ながら、成功報酬としてこれらの会社にフィーの支払いが発生します。ただ、自社で営業マンを雇って物件探しを行わせるよりも、既にノウハウや人脈のある福祉専門の不動産会社を頼るほうが効率的というわけです。
人によって経営方針は異なります。また、最初は自ら物件探しに挑戦してもいいかもしれません。ただ、希望する地域でどうしても物件を見つけれない場合、専門会社に頼ることも検討しましょう。
共同生活援助で物件探しをする
通常、障害者グループホームでは棟数を増やしていくのが一般的です。そうしないと、売上に対する固定費(人件費など)が大きくなってしまうからです。
ただ、すべての共同生活援助について、障害者グループホームとして利用可能な賃貸物件を探すのに苦労します。まず行政に確認する必要がありますし、建物が基準を満たしている必要があります。また、大家や保証会社からの許可が下りなければいけません。
そのため新たに棟を新設するとき、物件募集をしたり、不動産会社に問い合わせたりします。または、福祉専門の不動産会社に頼ってもいいです。
障害者グループホームの立ち上げや棟数拡大で物件探しは必須です。そこで、ある程度の時間をかけて物件選びをしましょう。