生活困窮者で利用できる施設は複数あり、そうした中に救護施設や更生施設、無料低額宿泊所があります。

障害者を含め、生活保護にて生活している人で保護施設を活用するとき、それぞれの違いを認識する必要があります。これにより、どのような施設を活用すればいいのか把握できます。

それでは生活保護受給者について、どのように救護施設・更生施設・無料低額宿泊所を使い分ければいいのでしょうか。救護施設・更生施設・無料低額宿泊所の違いについて解説していきます。

生活保護で利用できる保護施設

知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者などで十分に働けず、生活困窮者に陥ってしまうことがあります。そうしたとき、生活保護では住居を見つけるのが困難であり、さらには障害者だと手助けなしには生きるのが困難です。

そうしたとき、保護施設を利用します。救護施設や更生施設は生活保護法の保護施設に該当します。無料低額宿泊所は保護施設ではないものの、主に生活保護の人が利用します。

いずれにしても、生活保護で利用できる宿泊施設が救護施設・更生施設・無料低額宿泊所です。そこで、それぞれの違いを認識しなければいけません。

救護施設は障害者などへ生活扶助を提供する

知的障害者や精神障害者、身体障害者を含めて、日常生活が困難な要保護者について、生活扶助を提供する施設が救護施設です。

ホームレス(障害者ではない)が救護施設を利用することはあるものの、救護施設を利用する人のほとんどは障害者(薬物依存を含む)です。実際のところ、救護施設を利用する人の8割は知的障害者・精神障害者・身体障害者です。

生活扶助を提供するため、救護施設では宿泊場所を提供するだけでなく、作業訓練やリハビリ、クラブ活動を含めてサービス提供が実施されます。

提供されるリハビリテーションは施設ごとに異なるものの、無料にて生活保護受給者は救護施設にて過ごせます。

「一人では生活が困難な生活保護の障害者について、生活できる場を提供する施設」が救護施設と考えましょう。なお救護施設を利用する人は年齢が高めの人が多く、60歳以上の利用者が7割以上です。

更生施設は若い人や犯罪者が利用

救護施設に対して、更生施設を利用する障害者も多いです。更生施設についても、知的障害者や精神障害者、身体障害者などの要保護者へ生活扶助を提供する施設です。そのため、施設の説明だけでは両者の違いがわかりにくいです。

救護施設と更生施設の最も大きな違いは目的です。救護施設は一人では生活困難な障害者を住まわせ、生活できるようにするための施設です。つまり、施設内で生活できれば十分です。

それに対して、更生施設は生活指導や就職訓練などを通して、社会で一人で生きていくためのトレーニングを実施する施設です。つまり、将来は独り立ちをすることが前提になっています。

いまは一人で生活できないものの、一人で生活できるように更生施設で特訓します。そのため救護施設とは異なり、更生施設では65歳未満の若い人がメインで利用します。

なお知的障害・精神障害によって犯罪をしてしまった場合、更生施設を利用することもあります。犯罪者に限定した施設ではないものの、更生施設を通して犯罪者は社会復帰に向けて訓練していきます。

無料低額宿泊所は住む場所の提供がメイン

また生活保護受給者が住む場所として、他にも無料低額宿泊所が有名です。救護施設や更生施設については、地方公共団体または社会福祉法人が許可を受けて運営します。そのため、自由にこれらの施設を運営できるわけではありません。

それに対して、無料低額宿泊所は運営主体に制限がありません。一定要件を満たせば届け出をすることで許可されるため、さまざまな会社が無料低額宿泊所を運営しています。

救護施設や更生施設と異なり、無料低額宿泊所は宿泊場所を提供することが一番の目的になります。食事提供している施設は多いものの、それ以外の作業訓練やリハビリ、介助などのサービスはありません。要は、本当の意味で寝る場所のみを提供する施設と考えましょう。

なお介護スタッフによる支援がないため、重度の障害者は無料低額宿泊所を利用しないのが基本です。生活保護受給者の中でも、介護なしで問題ない「障害無しまたは軽度の障害者」が無料低額宿泊所を利用します。

利用期間は施設ごとに異なる

なお利用期間という意味では、施設ごとに大きく異なります。救護施設の場合、利用期間が定められているわけではありません。施設によって利用期間の決まりはあるかもしれませんが、救護施設で10年以上を生活している人はいます。

このとき厚生労働省の資料によると、救護施設の10年以上の利用期間は34.8%です。平均では11年2か月の利用であり、長く施設へ入居しています。

一方で更正施設については、前述の通り一人で生活できるように支援することが目的です。そのため救護施設とは異なり、早めに退所する人が多いです。厚生労働省の資料では、2年以内に退所する人が約8割であり、平均入所期間は1年4か月です。

なお無料低額宿泊所については、都市によって居住可能な期間が異なります。3か月だけ住める自治体があれば、居住期間が1年間までの自治体もあります。いずれにしても、短期間だけ宿泊できる場所が無料低額宿泊所です。

利用者数・施設数の違いは何か

なお施設の目的が異なるため、日本全国にある施設数や利用者数は大きく違います。保護施設の中でも、救護施設は日本に180以上あり、全国で1万5000人以上の生活保護を受け入れています。

それに対して、更生施設は日本に19ほどのみです。また、これらの施設を利用している人は1000人ほどです。

一方で無料低額宿泊所は600以上の施設があり、救護施設と同じくらいの利用者がいます。無料低額宿泊所は期間限定の利用であるものの、生活困窮者の数は多く、利用している生活保護受給者はたくさんいます。

なお施設数をみてわかる通り、救護施設・更生施設・無料低額宿泊所をすべて含めても施設の全体数は少ないです。生活保護受給者は200万人以上いますし、そのうち障害を抱えている人もたくさんいます。このように考えると、生活保護の人数に対して施設の数は足りていないとわかります。

救護施設・更生施設・無料低額宿泊所は異なる

障害をもつ生活保護受給者が宿泊場所を確保するとき、低所得者向けの施設を活用するのが一般的です。このとき、生活保護で利用される施設が救護施設や更生施設などの保護施設です。

救護施設は障害者を含め、生活困難な人に住む場所を提供する施設です。そのため、救護施設で10年以上、生活している人は多いです。一方で更生施設は一人暮らしを促す施設であり、救護施設とは目的が大きく異なります。事実、2年未満で多くの利用者が更生施設を退所します。

それに対して、運営主体に制限なく運営できる施設が無料低額宿泊所です。利用期間は短く、生活扶助はないものの、住む場所を無料低額宿泊所にて確保できます。介護スタッフによる介助を期待できないため、障害なしまたは軽度の障害者が主に利用します。

生活保護で利用できる救護施設・更生施設・無料低額宿泊所について、目的や中身は大きく異なります。そこで、これらの違いを理解したうえで生活困窮者は低所得者向けの施設を利用しましょう。

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