知的障害者・精神障害者・難病患者や認知症患者が共同生活を送る施設にグループホームがあります。このとき、寝たきりの人はグループホームで対応できるのでしょうか。

グループホームで寝たきりになってしまった人は退去になってしまうケースがあります。その場合、特別養護老人ホームなど別の施設を探さなければいけません。

ただ、すべてのケースでグループホームから退去しなければいけないわけではありません。実際のところ、24時間体制の医療・介護ケアがない自宅であっても、寝たきりの人はたくさんいます。この場合、訪問看護などを組み合わせることで寝たきりでも過ごすことができ、グループホームでも同様の方法が可能です。

それでは、実際のところ寝たきりの人はグループホームでどのような対応になるのでしょうか。要介護5の人がグループホームを利用できるのかどうかを解説していきます。

寝たきりにより、受け入れ拒否や退去を申し出られるケースは多い

知的障害者・精神障害者・難病患者や認知症患者について、共同生活を送る施設がグループホームです。そのため何かしらの障害はあるものの、基本的には自分の意思で活動し、移動できる人がグループホームを利用しています。

知的障害者・精神障害者・難病患者や認知症患者であれば、グループホームを利用できます。ただ寝たきりになった人については、グループホームへの入所を依頼しても拒否される可能性があります。またそれまで入所していた人について、寝たきりになったら退去を申し出られることもあります。

当然、グループホームでは寝たきりにならないように支援してくれます。ただ実際に寝たきり老人になってしまうと、グループホームでの支援の継続は難しくなるのです。

もちろんグループホームによっては問題なく受け入れてくれるケースもあります。ただ、寝たきりだと断られるリスクがあることを理解しなければいけません。

寝たきり(要介護5)になる原因として病気が存在する

それでは、知的障害者・精神障害者や認知症患者であるにも関わらず、なぜ寝たきり(要介護5)になると、グループホームへの入所を断られたり、退去を申し出られたりする可能性が高くなるのでしょうか。

これは、寝たきりになる原因として病気が存在するからです。理由なしに寝たきりになる人は少なく、寝たきりになる背景に脳梗塞などの病気があるのです。

こうした病気を発症している場合、継続的な医療ケアが必要になります。例えばタン吸引をしたり、胃へ栄養を送るために胃ろうをしたりします。点滴が必要になることもあります。

看護師がいる場合、十分な医療ケアを提供できます。看護師が常駐しているグループホームであれば、難病や寝たきりであっても問題なく対応できます。

ただ多くのグループホームでは、看護師が常駐しておらず、こうした医療ケアに対応していないことがよくあります。そのため継続的な医療ケアを提供できない場合、グループホームでは対応できないケースがあるのです。

病気がない場合、そのまま入所が可能なこともある

なお寝たきりの人の中には、動けなくても病気がないケースもあります。例えば老衰によって足・腰が悪くなっていたり、骨折によって寝たきりになったりしてしまったケースが該当します。

この場合、自分の力によって体を動かすのは難しいです。ただ意識は問題なく、24時間体制での医療ケアは必要ありません。点滴や胃ろうは不要であり、介助は必要であっても自分の力で食べることができます。

こうした脳卒中や高血圧などの病気が背後に存在しない場合、グループホームによっては入所可能かもしれませんし、寝たきりになっても退去を依頼されません。この場合、以下のような部屋で過ごすことになります。

ベッドは寝たきり用の介護ベッドに変更する必要があるものの、入所が問題ないケースは存在します。ただ寝たきりの場合、ほかの障害者と交流を深めて共同生活を送るのは困難になります。

特別養護法人ホームなら寝たきりでも対処可能

それではグループホームで入所を断られたり、退去を依頼されたりした場合はどのような施設が最適なのでしょうか。

要介護度の高い人であっても問題なく対応できる施設に特別養護老人ホーム(特養)があります。医師は常駐していないケースが多いものの、看護師が必ず常駐している施設になります。

グループホームと同様に、特養では介護職員が24時間体制で入所者のお世話をすることになります。それに加えて、医療ケアを提供できるのが特別養護老人ホームなのです。そのため点滴や胃ろう、タン吸引などが必要な人であっても問題ありません。

特別養護老人ホームは要介護3以上の人が対象になります。そのため、特別養護老人ホームの入所者はほぼ全員が車いす生活です。

特別養護老人ホーム(特養)は知的障害者・精神障害者・難病患者や認知症患者に限らず、要介護度の大きいあらゆる人を受け入れています。そのため、寝たきり老人であっても問題なく入所できるのです。

グループホームと特養で異なる施設の中身

なぜグループホームでは医療ケアが必要な人の受け入れが難しく、特別養護老人ホーム(特養)では可能なのかというと、看護師などの医療従事者が配置されているかどうかだけでなく、施設の構造の違いも大きいです。

グループホームは障害者や認知症患者が共同生活を送る施設であり、利用者の自立を支援します。つまり、基本的には自分自身で日常生活を行えるようにするのです。また寝たきりではなく、自分の意思で移動できる人の利用が前提となっています。

そのためグループホームのお風呂を確認すると、以下のように普通の設備です。

入浴介助は存在するものの、すべての入居者について介護職員が介助する必要はありません。また自立を促すため、基本的には自分でお風呂に入ることになり、こうした普通の施設となっているのです。

一方で特別養護老人ホームでは、要介護度の大きい人のみが利用します。そのため、お風呂の設備は以下のようになっています。

このように、明らかに重度の介護が必要な人向けの施設となっています。医療ケアだけでなく、日常的な介護の度合いについても、グループホームと特養では大きな違いがあるのです。

なお看護師が常駐しており、難病や寝たきりにも対応できるグループホームの場合、特別養護老人ホームと同様の施設となります。

訪問看護とグループホームを組み合わせるのは可能

それでは、寝たきりの人が新規入所を断られるのはまだしも、すでに入所している人が寝たきりになった場合、本当にグループホームを退去しなければいけないのでしょうか。

運よく特別養護老人ホームに空きがあれば、退去して問題ありません。ただ現実問題として、特養に空きが見つからないこともよくあります。この場合、たとえ寝たきりになって医療ケアが必要になったとしても、実際のところ退去できません。

ただ世の中には、自宅(在宅)で寝たきりとなっている老人はたくさんいます。当然、自宅に高度な医療機器が存在するわけではなく、介護している人は素人(家族)です。しかし、こうした状態であっても問題なく寝たきりの方は過ごせています。

こうした人が利用しているのが訪問看護などのサービスです。グループホームであっても訪問看護を利用することができます。

グループホームで看護師を雇っている場合は問題ないですが、そうではないケースも多いです。その場合、訪問看護を利用することによってグループホームへ訪問してもらい、医療ケアを受けることができます。

訪問看護ステーションと提携しているかどうかについては、グループホームによって異なります。ただこうした訪問看護ステーションと委託契約を結んでいるグループホームの場合、たとえ寝たきりになったとしても問題ないケースがあります。また寝たきりの障害者や認知症患者であっても受け入れてもらえる可能性があります。

看取りまで可能かどうかは相談が必要

すべての人にとって、住み慣れた場所で過ごしたいと考えるのが普通です。これは、知的障害者・精神障害者・難病患者や認知症患者であっても同様です。特に知的障害者・精神障害者ではこだわりをもつ人も多く、住む場所を何度も変えるのは得策ではありません。

そのため「同じグループホームで本人が最期まで過ごせるようにしたい」と親族が考えているのであれば、グループホームの経営者と事前に看取りについて相談するほうがいいです。

実際のところ、いまは自分の意思で動くことができても、年を取ると寝たきりになるリスクがあります。認知症についても、重度の認知症になると寝たきりになります。このとき、看取りまで可能かどうかはグループホームによって判断が異なります。

看取りが不可な場合、いまのうちに看取り可能なグループホームを利用するほうがいいかもしれません。障害者でも認知症患者でも、将来は寝たきりになる可能性があります。また、すでに寝たきりの場合は看取り可能なグループホームのほうが適切です。

グループホームによって運営方針は異なるため、医療機関との提携有無を確認し、利用施設を考えるといいです。

グループホームでは寝たきりの人への対応が異なる

グループホームでは必ず介護職員が常駐しているものの、看護師は必須ではありません。看護師のいるグループホームは存在するものの、こうした医療者はグループホームで必須ではないのです。

そのため特別養護老人ホーム(特養)に比べると、どうしても施設の設備面でも勤務職員の面でも、要介護度の大きい人への対応が難しくなるのは必然です。その結果、寝たきりの人は入所を断られたり、退去を依頼されたりする可能性があります。

ただグループホームによっては医療機関や訪問看護ステーションと提携しているケースがあります。こうしたグループホームであれば、看取りにも対応可能な場合があります。

一般的には、グループホームでは医療ケアが必要な寝たきりの人は対応できません。ただ方法によっては対応可能です。どこまで対応できるのかはグループホームによって大きく異なるため、これについては事前に相談したり、早めに看取り可能なグループホームへ移ったりすることを考えましょう。

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