障害者が親と離れて暮らすとき、第一選択肢になるのが障害者グループホームです。このとき大学生や専門学生についても、知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者であればグループホームを利用できます。
国や自治体から補助をもらえるため、寮や民間のシェアハウスを利用するよりも家賃を含めた生活費を安く抑えることができます。また、普通のアルバイトをしても問題ありません。
ただ門限があったり、自由な恋愛や旅行が厳しかったり、障害者グループホームならではのデメリットもあります。学生がグループホームを利用するとき、メリットだけでなく、これらのデメリットを理解しなければいけません。
それでは、大学生や専門学生が障害者グループホームを利用するとき、何を考えればいいのでしょうか。学生がグループホームへ入所するときのポイントを解説していきます。
もくじ
18歳以上なら大学生でも障害者施設を利用できる
介護・福祉施設というと、学生を含め若い人は利用できないように思えてしまいます。ただ若者であっても障害者グループホームを問題なく利用できます。以下のうち、どれかに当てはまっている人が入居対象です。
- 知的障害者
- 精神障害者
- 身体障害者
- 難病患者
これらの人では障害者手帳を受け取ることになります。こうした手帳は障害者グループホームへ入居する条件となります。それに加えて、障害支援区分1~6に指定されていれば、グループホームを利用できます。
生まれたときから知的障害や精神障害をもつ人でなくても、後になって統合失調症などの精神疾患や難病を発症する人もいます。こうした人についても、障害者施設の利用対象となります。
そういう意味では、多くの人が利用対象者になります。いま障害者手帳がなく、区分指定されていない人であっても、申請すれば障害者グループホームへの入居は可能です。
寮やシェアハウスよりも家賃・生活費は安い
大学生や専門学生でどうしても心配になるのが金銭面です。このとき障害者グループホームであれば、寮や民間のシェアハウスを利用するよりも家賃・生活費は安くなります。
例えば、以下は千葉に存在する障害者グループホームの例です。
家賃は37,000円ですが、ここに国からの補助で1万円が出され、さらに市から実費負担分の家賃に対して半分の補助が出されます。つまり、このグループホームの実質負担の家賃は月13,500円と超格安です。
ここに水道光熱費や毎日の食費、その他の費用が加わっても月6万円を超えません。この場合、障害年金だけで生活費をまかなうことができます。なお、この費用にはインターネット代などもすべて含まれています。
一般的な学生は国や自治体からの家賃補助がありません。一方、障害者グループホームではさまざまな補助を受けながら生活できます。そのため、障害者手帳をもっていない他の大学生や専門学生に比べて、支出を圧倒的に抑えることができます。
実際の生活はシェアハウス形式またはワンルーム
このときの生活は多くのケースでシェアハウス形式です。障害者グループホームは複数の障害者で共同生活を送る施設です。そのため食事の時間は決められており、利用者全員で食事をとることになります。
シェアハウス形式の場合、浴室やトイレは共同利用です。お風呂は順番であり、トイレで待たなければいけないケースもありますが、これについては一般的なシェアハウスや寮に住むのと同じです。
このとき、以下のような普通の部屋に入居することになります。
なお場合によっては、「各部屋に浴室やトイレが備え付けられてあるワンルーム」の障害者グループホームもあります。この場合、例外的にお風呂やトイレをいつでも自由に利用できます。ワンルーム型のグループホームでは、一戸建てではなくアパートやマンションとなります。
なお、ほかの障害者が一緒に生活をするため、隣の部屋からうめき声が聞こえてくるのは普通です。これについては一般住宅と状況が異なるものの、これに我慢さえすれば、介護職員による支援もあって格安で住めるのでグループホームは障害のある学生にとって優れています。
作業所ではなく、アルバイトによって稼ぐのは可能
ただ障害者グループホームを利用する大学生や専門学生にとって、疑問になる点の一つが「働く場所」です。
学生であっても毎日フルタイムで授業があるわけではないため、昼に働くのは可能です。ただ障害者グループホームというと、どうしても働く場所として作業所を思い浮かべてしまいます。知的障害や精神障害の程度が重い場合、一般企業では働けず、雇用契約を結ぶのも厳しいため、就労継続支援として作業所で仕事をします。
ただ大学生や専門学生の場合、多くは「軽度の知的障害者」「以前は健常者だった精神障害者(うつ病や統合失調症など)」「意識のはっきりしている身体障害者・難病患者」のうち、どれかだと思います。
こうした人が作業所で軽作業ばかりするのは暇ですし、仕事は面白くありません。学生であれば、通常のアルバイトをしたいと考えるのは普通です。これについて、障害者グループホームに入居している人であってもアルバイトは可能です。
障害者グループホームの目的は「施設の利用者が規則正しい生活を送り、スキルを身に付け、自分で行えることを増やす」ことです。要は、社会復帰の場でもあります。当然、アルバイトを通して実際の社会を学ぶことができます。
障害者であっても営業が得意な人がいれば、プログラミングが得意な人もいます。人によって得意不得意は異なりますが、こうした長所を活かしてアルバイトをするのは何も問題ありません。もちろんグループホームによって判断は異なりますが、ダメな施設を除き、アルバイトを許可してくれます。
・門限があるため、夜遅くのアルバイトはできない
なお注意点として、すべての障害者グループホームで門限があります。門限は20:00~22:00に設定されていることが多く、この時間よりも前に帰らなければいけません。つまり、ほかの学生がしているように深夜のアルバイトはできません。
そもそも、規則正しい生活を送ることで社会復帰を促す場が障害者グループホームです。そのため夜にアルバイトをして、不規則な生活を送るのは許可されません。
就労支援施設を利用し、学生のときから就職先を探す
なお、どの障害者グループホームも就労支援施設と提携しています。そのためグループホームに住みつつ、障害者支援施設も活用することで、学生のときから就職先を探すこともできます。
もちろん、あせって就職する必要はありません。障害者や難病患者の場合、症状を安定させたり、社会復帰できるように心身の状態を整えたりするほうが先決です。
ただ働くことを想定し、就労支援施設を学生のときから利用するのは何も問題ありません。この場合、健常者と同じようにスーツを着て、さまざまな会社の面接に出向く必要はありません。そもそも、そうしたストレスの多い就職活動をしていたら症状悪化につながります。
それよりも知的障害や精神障害、身体障害、難病に対して理解のある企業への就職を狙いしましょう。例えば大企業では、一定数の障害者を雇用しなければいけない義務があるため、大企業であっても就職できます。
門限があり、自由な恋愛や旅行は難しい
格安で住むことができ、介護職員による支援も受けられるというメリットはあるものの、障害者グループホームにはデメリットもあります。例えば、前述の通り門限があります。
大学生や専門学生であれば、ほかの友人と一緒に夜遅くまで遊びたいと考えるのは普通です。ただ規則正しい生活を送る施設が障害者グループホームである以上、門限は守らなければいけません。
無断で門限を破ると、介護職員は「利用者に何か事件・事故が起こった」と考え、周囲を捜索することになります。見つからない場合は家族に連絡がいき、警察を巻き込む大捜索になります。また、全国ニュースになるケースも頻繁にあります。
参考までに、以下は障害者グループホームの入所者(20歳)が実際に行方不明となり、全国ニュースになった事例です。
こうした事態は必ず避けなければいけないため、門限という決まりがある以上、自由に遊ぶことはできません。
これは恋愛や旅行も同様です。障害者グループホームという性質上、異性を自室に招くことはできません。また家族や友人と一緒の旅行であれば問題ないですが、一人で旅行するとなると微妙です。一人の場合、旅行先で急に不安症状が強く表れ、倒れて熱中症などになるリスクもあるからです。
金銭面や支援面では非常に優れるグループホームであるものの、障害者支援の側面が強いため、自由度は必然的に劣ってしまうのです。
障害者グループホームの選択肢は少ない
なお大学生や専門学生にとって障害者グループホームが優れるとはいっても、最大のデメリットに「障害者グループホームの数」があります。
障害者グループホームは数が多いわけではありません。そのため通常、ほかの都道府県まで視野に入れてグループホームを探します。認知症グループホームとは異なり、障害者グループホームはほかの市区町村であっても問題なく入居可能だからです。
このとき通信制大学であれば特に問題ないものの、特定の場所に大学が存在する場合、キャンパスへ通わなければいけないケースがほとんどです。つまり障害者グループホームから大学キャンパスへ通う必要があり、どこでもいいのでグループホームを探せばいいわけではありません。
「東京に住んでいる人が神奈川のグループホームへ入居する」などのように、ほかの都道府県を見据えて探しても問題ない場合、空室のあるグループホームを見つけるのは簡単です。
ただ大学キャンパス周辺のエリアとなると、どうしても障害者グループホームが限られます。そのため満室であるケースなど、グループホームを見つけられないリスクがあるのは理解しなければいけません。
通信制大学やオンライン授業に積極的な大学であれば問題ないものの、そうでない場合、障害者グループホームの数は限られます。
学生が障害者施設を利用する
18歳以上であり、障害があれば誰でも利用できる障害者施設がグループホームです。学生にとって、寮や民間のシェアハウスを利用するよりも安い金額となるのでメリットが大きいのです。隣の部屋からうめき声が聞こえてくるのを我慢すれば特に問題はありません。
また普通のアルバイトをしてもいいし、就労支援施設を利用して仕事を見つけることもできます。あせる必要はないものの、仕事面で困ることはありません。
ただ生活上のルールが存在し、門限は必ず守る必要があります。夜遅くまで遊ぶのはできませんし、自由な恋愛も難しいです。
こうしたデメリットはあるものの、生活をするうえで障害者グループホームは最適です。知的障害や精神障害、身体障害、難病がある学生は障害者グループホームを積極的に利用しましょう。
家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。
障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。
ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。
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