判断能力が低下している知的障害者や精神障害者、認知症患者を支援するサービスに日常生活自立支援事業があります。

日常生活自立支援事業の中でも、特に重要な内容が金銭管理と書類預かりです。判断能力の低下によってお金の管理や重要書類の管理ができないため、第三者の力を借りることによって管理するというわけです。

ただ、日常生活自立支援事業には問題点もあります。そのためメリットだけでなく、デメリットも学ばなければいけません。

それでは実際に日常生活自立支援事業を利用するにあたり、どのような問題点があるのでしょうか。日常生活自立支援事業の内容に加えて、デメリットについても解説していきます。

日常生活自立支援事業で重要な金銭管理と書類預かり

日常生活自立支援事業で重要なサービス内容に金銭管理と書類預かりがあります。福祉サービスの紹介・契約も日常生活自立支援事業で行える重要な内容ではありますが、日常生活では金銭管理や書類預かりが役立つのです。

  • 日常的金銭管理:税金・公共料金・家賃の支払い、年金の受け取りなど
  • 書類預かり:通帳、印鑑、年金証書、保険証書など

判断能力が低下していると、自らの判断で税金や公共料金の支払いをすることができません。以下の支払い内容を理解し、判断能力のない障害者・認知症患者がお金を振り込むのは現実的ではないのです。

ほかには家賃の支払いもありますし、年齢が高い場合は年金の受け取りをしなければいけません。

またお金の管理を本人ができない場合、本人の代わりに銀行からお金をおろすことになります。そのためには通帳や印鑑などの重要書類を預かることになり、日常生活自立支援事業でこれらの重要書類を利用し、本人の代わりにお金をおろすことができるようになります。

お金の浪費や支払滞納、借金返済に効果的

こうしたサービスにより、本人のお金の浪費や支払滞納が減り、借金がある場合は借金返済が進むというメリットがあります。

例えば判断能力が乏しい場合、月の初めに現金を渡すにしても、金銭管理ができない場合はすぐに使ってしまい、数日でお金が尽きます。こうして、公共料金の支払いが滞ったり、必要以上の支払いが発生したりしてしまいます。借金がある場合、返済も進みません。

そこで日常生活自立支援事業を利用すれば、「週に一回、支援員がお金をおろして本人に渡す」などが可能です。これであれば、本人に浪費癖があっても半強制的に止めることができます。また、計画的にお金を使えるようになります。

親族が一緒に住んでいるのであれば必要ないサービスです。ただ親族が遠くに住んでいたり、障害者・認知症患者が施設に入所していたりする場合、日常生活自立支援事業は役立ちます。

できないサービスや預かれないものは何か

なお、日常生活自立支援事業は何でも依頼できるサービスではありません。例えば、以下はサービスの対象外です。

  • 身元引受人や保証人
  • 買い物・外出支援
  • 確定申告の書類作成・代行

つまり、あくまでも福祉サービスや金銭管理に関わる内容が提供可能なサービスです。また書類の預かりサービスについても、お金に関係する書類は預かれるものの、以下の物品は預かれません。

  • 現金
  • 宝石、書画、骨董品、貴金属
  • 自宅の鍵
  • 遺言書

こうした預かれないものについては、事前に認識しておきましょう。

利用回数が多いと負担が大きくなるデメリット

なお日常生活自立支援事業が便利とはいっても、メリットだけでなくデメリットもあります。その一つが費用です。

成年後見制度に比べると、日常生活自立支援事業の利用料金は圧倒的に安いです。ただ利用ごとにお金の支払いが発生するのはデメリットです。

知的障害や精神障害、認知症をもつ本人の状況によって利用料金は異なり、さらに費用は自治体ごとに異なります。そのため一概にはいえませんが、例えば以下は日常生活自立支援事業に関する大阪府阪南市での利用料金です。

※出典:阪南市社会福祉協議会

一般的には、一回の利用ごとに1000~1500円ほどの費用がかかると考えましょう。これが月に一回の利用であれば問題ないですが、月に4回利用するとなると、それなりに利用料金は高くなります。成年後見制度より圧倒的に必要費用が低いとはいっても、利用回数が多いと金銭的負担は大きくなります。

利用者は本人であり、家族は契約者になれない

なお日常生活自立支援事業を利用するとき、障害者本人に契約能力がある必要があります。「判断能力はないのに、契約内容を理解する能力はある」というのは明らかに矛盾していますが、一応はそのようになっています。

ただいずれにしても、本人の契約能力がなければいけないことからわかる通り、利用者は本人に限定されます。

実際のところ、介護福祉サービスを利用したいと考えているのは、ほとんどのケースで本人ではなく家族です。家族の負担を軽減するため、日常生活自立支援事業を考えるのです。またこうしたサービスを利用すれば、親亡き後問題や親族が疎遠になったときにも対処できます。

ただ契約者は本人であるため、契約時に本人が拒否すれば利用できません。また、本人が望む通りの契約内容になると、結局のところ意味のない内容になってしまいます。本人の意思を尊重するというと、聞こえはいいものの、実際には役に立たなくなるケースがよくあるのです。

参考までに、家族ではなく本人との契約になるため、実際に利用できるようになるまで時間がかかります。

通常、最初の相談から契約締結まで2~6ヵ月ほどかかります。本人の状況を把握する必要があり、さらには契約内容を審査する契約締結審査会の開催時期によっては、利用までさらに時間がかかる可能性もあります。利用までに時間がかかるのも日常生活自立支援事業のデメリットです。

過去には職員による不正が存在する

こうしたデメリットの中でも、防ぐのが難しく、それでいて大きな問題になるのが職員自体の不正です。基本的には起こらないものの、過去には日常生活自立支援事業の職員による不正が発生しています。例えば以下になります。

お金の不正利用ではなく、利用者の契約・解約に関する不正処理がニュースとなりました。例えば預金通帳や印鑑を預かるとき、預かり書を作成・保管していませんでした。また、事業の支援範囲を超える高額な引き出し依頼に対応していました。

利用者の預金を乱用したというニュースではないため、利用者に直接的な被害は生じていません。ただ高額な引き出しにも対応しており、浪費癖のある知的障害や精神障害、認知症患者からの依頼であっても平気で受け入れていたとわかります。これでは、家族にとって日常生活自立支援事業を利用する意味がありません。

この職員一人だけで対応していたため、10年以上にもわたって不正処理がわかりませんでした。こうした不正を完全に防止することはできないものの、「お金の引き出しに怪しい点はないか」「重要書類の預かり状況に問題はないか」を定期的に調べるのは重要です。

日常生活自立支援事業のメリット・デメリットを把握する

知的障害者や精神障害者、認知症患者が家族の中にいる場合、日常生活自立支援事業は効果的です。書類預かりをしてもらい、お金に関わる手続きを代行してもらうことができるのです。

特に、本人に浪費癖があったり公共料金の滞納・借金があったりする場合はより効果的です。例えば一気にお金を渡すのではなく、複数回に分けてお金を渡すことが可能です。また、公共料金や家賃の支払い代行もしてくれます。

ただ無料のサービスではないため、利用回数が多いと費用が高くなってしまいます。また家族は契約者になれず、本人が利用者となります。ほかには、過去に日常生活自立支援事業に関わる不正も発生しています。

日常生活自立支援事業を利用するとき、メリットだけでなくデメリットも理解しましょう。こうした問題点を把握したうえで、メリットが上回るのであれば日常生活自立支援事業を効果的に利用しましょう。

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