知的障害や精神障害、認知症などによって判断能力が十分でないケースは多いです。そうしたとき、外部の人によって金銭管理や契約の手続きを手助けしてもらえると非常に助かります。こうした支援制度に日常生活自立支援事業があります。
似た支援制度に成年後見制度があるものの、日常生活自立支援事業は成年後見制度よりも手軽であり、費用は安いです。つまり、成年後見人を利用するほどではないものの、判断能力の低下によって手助けが必要な人に最適なサービスとなっています。
日常生活自立支援事業を有効活用することによってお金の管理や重要な書類を管理できるようになり、福祉サービスの手続きもスムーズです。
それでは、日常生活自立支援事業はどのような内容なのでしょうか。また、成年後見人の利用と比較してどのような違いがあるのでしょうか。日常生活自立支援事業の支援内容や費用、成年後見制度との違いについて解説していきます。
もくじ
契約能力はあるものの、金銭管理などができない人が対象
まず、日常生活自立支援事業とはどのような内容になるのでしょうか。この事業は知的障害や精神障害、認知症などによって、金銭管理を含め判断能力が低下している人が利用するサービスになります。
判断能力が低下している場合、新たな介護サービスが必要と思っても自ら申し込みすることができません。また判断能力が劣っているために重要書類の管理ができなかったり、金銭管理が適切ではなかったりしてしまいます。そこで、本人に代わって手続きを代行してくれるサービスに日常生活自立支援事業があります。
日常生活自立支援事業を利用するためには、本人が契約内容を理解する必要があります。「判断能力は低下しているものの、契約能力はある」となると矛盾しています。ただ、ひとまず軽度であれば知的障害者や精神障害者、認知症の人であっても利用できると考えましょう。
重度の知的障害者や精神障害者など、ほぼ意思疎通ができない場合は利用対象外であるものの、症状が軽度であり、ある程度の意思疎通ができれば利用可能なのです。
例えばうつ病や統合失調症などの精神障害者であれば、病気が原因でなかなか外出できないケースは多いです。契約内容を理解する能力はあるものの、自分で行うのが難しいのです。そうしたとき、日常生活自立支援事業が役立ちます。これは、知的障害者も同様です。
書類やお金の管理が最も重要な内容
それでは、日常生活自立支援事業はどのようなサービス内容になるのでしょうか。以下が日常生活自立支援事業で主な内容になります。
- 福祉サービスの支援:申し込みや契約の代行、生活保護の申請支援など
- 日常的金銭管理:税金・公共料金・家賃の支払い、年金の受け取りなど
- 書類預かり:通帳、印鑑、年金証書、保険証書など
既に障害者グループホームや就労支援施設などを利用している人なら問題ないですが、利用していない人の場合、判断能力が低下している中で新たにこのような施設を見つけるのは困難です。
また生活保護の申請などを自分で行うのも難しいです。そこで日常生活自立支援事業を利用することにより、これらの申請の代行をしてもらえます。
また日常生活自立支援事業で重要な内容に日常的金銭管理があり、公共料金の支払いや年金の受け取りなどの手伝いをしてくれます。例えば福祉サービスや電気・水道・ガスの支払いが滞ると悪い事態しか発生しないため、これらの支払代行をしてくれるのも日常生活自立支援事業のひとつです。
ほかにも、判断能力が低下すると重要な書類の管理を行うことができません。そこで預金通帳や印鑑、年金証書、保険証書などの預かりサービスを実施しています。
買い物代行や外出支援はある?日常生活自立支援事業の支援内容
それでは、日常生活自立支援事業の中に買い物代行や外出支援はあるのでしょうか。これについては、日常生活自立支援事業はあくまでも介護サービスの契約や金銭管理などが主な内容であり、日々の物理的な生活支援はサービスの中に含まれていません。
日常生活自立支援事業は毎日、継続的に利用するサービスではありません。日々の生活を支援してもらいたいのであれば、障害者支援施設や障害者グループホームを利用しなければいけません。こうした施設であれば、日常的な生活支援を続けてくれます。
また買い物や外出支援だけでなく、お金の使い方の指導もしてくれるのがグループホームなどの施設です。
こうした施設が本人の代わりに契約をしたり、銀行からお金を引き出したりすることはできません。そうした手続きは日常生活自立支援事業を利用することによって代行が可能になります。一方、実際に引き出したお金は施設の管理のもと、買い物や外出支援のときに本人が利用できるというわけです。
利用料金・費用はいくら?無料ではなく有料のサービス
それでは、日常生活自立支援事業の利用料金はいくらなのでしょうか。契約自体は無料です。ただ実際にサービスを利用するときは費用が発生します。
具体的な料金については、自治体によって異なるので一概にはいえません。ただ費用は低めであり、例えば以下は大阪府阪南市での利用料金です。
※出典:阪南市社会福祉協議会
金銭管理サービスや書類預かりサービスなど、用途によって費用は異なります。また、障害者の年収によっても費用が変化します。多くの障害者・認知症患者は生活保護、または住民税非課税者となりますが、いずれにしても利用料金は安いです。
成年後見人との違いや併用
なお判断能力が低下した障害者や認知症患者の代行をするとなると、成年後見人と何が違うのか気になります。
成年後見制度の場合、知的障害者や精神障害者、認知症患者の契約能力がなくても成年後見人を選定できます。成年後見人が障害者の代わりに金銭管理を行い、契約の代行が可能になるのです。そのため、障害者本人に契約能力があるかどうかは関係ありません。
その代わり、成年後見人を利用すると多くのケースで高額な費用が発生します。親族が後見人に指定されるケースは少なく、8割以上は弁護士や司法書士などの専門家が選定されます。裁判所によって成年後見人が選ばれ、家族はほぼ選ばれないのです。
専門家が成年後見人に指定される場合、毎月の支払いが2~5万円と高額です。これが成年後見制度の最大のデメリットであり、利用者が非常に少ない理由です。
それに対して、日常生活自立支援事業は非常に安い金額でサービスを利用できます。手軽さの点で日常生活自立支援事業と成年後見制度には大きな違いがあります。
制度 | 日常生活自立支援事業 | 成年後見制度 |
相談窓口 | 社会福祉協議会 | 弁護士・司法書士など |
申込場所 | 社会福祉協議会 | 家庭裁判所 |
管轄 | 厚生労働省(社会福祉法) | 法務省(民法) |
費用 | 安い | 高い |
解約 | 可能 | 不可 |
なお、成年後見人を選定する前段階として日常生活自立支援事業を利用してもいいです。高額な費用が発生する成年後見人ではなく、最初は日常生活自立支援事業を活用するのです。なお日常生活自立支援事業では、できないことも多いので、必要になればそのときに成年後見制度へ移行すればいいです。
または、日常生活自立支援事業と成年後見人を併用することもできます。例えば運よく親族が成年後見人に選ばれたものの、後見人が遠くに住んでおり、近くでの管理ができないケースがあります。そうしたとき、日常生活自立支援事業を利用するのです。
成年後見制度では、障害者本人が死亡するまで続きます。一方で成年後見人とは異なり、日常生活自立支援事業は申し出によって途中解約できます。この点についても、日常生活自立支援事業は気軽です。
社会福祉協議会へ連絡し、利用する
それでは、実際に日常生活自立支援事業を利用するにはどうすればいいのでしょうか。日常生活自立支援事業の相談窓口は社会福祉協議会です。
なお、社会福祉協議会は日本全国に存在します。そのため、あなたがどこに住んでいるのかによって相談するべき社会福祉協議会の事務所は異なります。そこで、「社会福祉協議会 地域名」で検索しましょう。例えば以下は、横浜市神奈川区の社会福祉協議会です。
このようにあなたの地域の社会福祉協議会を調べ、そこへ出向くことで相談しましょう。
前述の通り、どのようなサービス内容になるのかについて、障害者本人がある程度まで理解できる必要があります。判断能力のない人の支援なのにも関わらず、本人がサービス内容を理解する必要があります。ただひとまず、サービス利用のために出向くのです。
実際に社会福祉協議会へ相談した後、担当者が自宅や施設(グループホームなど)など、障害者が住んでいる場所へ出向きます。その後に支援計画が作られ、問題ない場合は利用契約が締結されます。
参考までに、日常生活自立支援事業で最も利用されている支援内容に「郵便物の確認」「金銭管理や滞納・借金返済」があります。特にこうした内容の支援が必要な場合、日常生活自立支援事業は有効です。
日常生活自立支援事業を利用して代行してもらう
判断能力が低下している知的障害者や精神障害者、認知症患者について、介護サービスの契約や金銭管理など、生活で必要な支援をしてもらえるサービスに日常生活自立支援事業があります。社会福祉協議会が実施しているサービスになり、低額で利用可能です。
成年後見制度は高額な費用支払いが発生するケースが多く、契約能力のない人であっても利用できるものの、敷居が高いです。そこで、日常生活自立支援事業を利用するのです。
買い物代行や外出支援はありませんし、少額ではあるものの費用がかかります。利用できるサービスは限られるものの、本人に代わってお金の引き出しや重要書類の管理をしてもらえるため、利便性の高いサービスとなっています。
本人が日常生活自立支援事業を申請することはほぼなく、多くは周囲の人からの申請になります。そこで障害者で日々のサポートが必要と感じている場合、周囲の人が障害者のために日常生活自立支援事業の利用を検討しましょう。
家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。
障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。
ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。
そこで、当サイトでは完全無料で障害者グループホームを紹介するサービスを日本全国にて実施しています。「いますぐ入居したい」「いまの障害者グループホームから他の施設へ移りたい」「強制退去となり、新たな施設を探している」など、軽度から重度の障害者を含めてあらゆる方に対応しています。