精神障害者や身体障害者で重要な支援内容に自立支援医療制度があります。身体障害者も対象ですが、メインはどうしても精神疾患を抱えている人になります。

統合失調症やうつ病、双極性障害、不安障害(パニック障害)、薬物依存症、てんかん、PTSDなど、すべての精神疾患で利用できる制度です。自立支援医療制度(精神通院)により、病院や薬局などでの窓口負担が1割になります。

なお申請には医師の診断書が必要であり、書類を集める必要があります。また有効期限があるため、期限が来たら更新しなければいけません。

それでは、どのように自立支援医療制度(精神通院)を利用すればいいのでしょうか。精神障害者では医療費がかかるため、病院や薬局などでの支払い費用を抑える制度について解説していきます。

自立支援医療制度には2種類ある

障害者のための制度が自立支援医療制度です。このとき、自立支援医療制度には以下の2種類があります。

  • 精神通院医療:精神疾患の治療
  • 更生医療・育成医療:身体障害の治療

何らかの精神疾患(てんかんを含む)について、通院などによる継続した治療が必要になる場合、すべての精神疾患が自立支援医療制度の対象になります。

なお身体障害の治療について、18歳以上は更生医療となり、18歳未満は育成医療となります。年齢が違うだけであり、身体障害の治療という意味では同じです。人工関節置換術や水晶体摘出術、ペースメーカー埋込術、人工透析などが身体障害での自立支援医療制度の対象になります。

対象となる精神疾患は幅広い

身体障害者で自立支援医療制度を利用する人はいるものの、全体では精神通院を利用する人が非常に多いです。このとき、前述の通りすべての精神疾患が対象になります。例えば以下の病気は自立支援医療制度(精神通院)の対象です。

  • 統合失調症
  • うつ病、躁うつ病(双極性障害)などの気分障害
  • 不安障害(パニック障害)
  • 薬物依存症・アルコール依存症
  • 強迫性人格障害などの精神病質
  • 発達障害:ADHD、ASD(アスペルガー症候群、自閉症)
  • てんかん
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)

一例ではありますが、いずれにしてもあらゆる精神疾患について自立支援医療制度を利用できます。知的障害者や身体障害者であっても、精神疾患を併発しているのは普通なので、こうした人の精神医療に関わる内容を助成してもらえます。

病院・クリニック、薬局、訪問看護ステーションの自己負担が1割

精神障害者が自立支援医療制度(精神通院)を利用する意義は大きく、治療費が大幅に安くなります。通常、医療保険によって病院・クリニックや薬局、訪問看護ステーションを利用する場合、3割負担です。

一方で自立支援医療制度を利用すれば、窓口負担が1割になります。病院・クリニックに限らず、薬局や訪問看護ステーションでも同様です。

ただ注意点として、あくまでも通院に関わる精神医療が対象になります。入院治療や精神疾患と関係ない治療は対象外であり、3割負担になります。例えば自立支援医療制度(精神通院)の対象者がインフルエンザを発症しても、精神疾患とは関係ないので1割負担ではありません。

また当然ながら、公的保険の適用外となる治療や医薬品についても自立支援医療制度の対象外となります。

生活保護や低年収だと負担額が無料または低い

なお低年収の場合、自立支援医療制度によってより負担額が低くなります。生活保護の場合、元々の医療費が無料であるため、精神障害者や知的障害者、身体障害者に関係なく自立支援医療制度を利用する意味はありません。

一方で生活保護でない健常者は3割負担ですが、自立支援医療制度を利用すれば1割負担になりますし、低年収の場合は負担額の上限があります。

所得区分所得の状況月の負担上限額「重度かつ継続」での上限額
生活保護生活保護受給者0円0円
低所得1住民税非課税(所得80万円以下)2500円
低所得2住民税非課税(所得80万円超)5000円
中間所得1住民税33,000円未満高額療養費制度の上限と同じ5000円
中間所得2住民税33,000~23万5,000円未満1万円
一般以上住民税23万5,000円以上対象外

つまり住民税非課税の人では、月の負担上限額は非常に低くなります。精神疾患をもつ人で十分に働けない場合、病院・クリニックや薬局で支払うお金の心配をする必要はありません。

ちなみに一定所得以上の人については、自立支援医療制度(精神通院)の対象外になります。つまり、医療保険による自己負担3割となります。自立支援医療制度(精神通院)が有効なのは、所得の低い人(中間所得以下)に限られます。

・「重度かつ継続」は何が該当するのか

なお、先ほどの表の「重度かつ継続」はどのようなケースが該当するのでしょうか。厚生労働省の資料によると、以下のうちいずれかに該当する人になります。

  • 1年間で高額療養費の支給を4回以上受けた人
  • 次の精神疾患の人
    • 器質性精神障害:高次脳機能障害、認知症など
    • アルコール依存症、薬物依存症
    • 統合失調症
    • 気分障害:うつ病、躁うつ病(双極性障害)など
    • てんかん
  • 「入院を伴わない計画的かつ集中的な精神医療の継続が必要」と医師(3年以上の精神医療の経験のある人)から判断された

こうした条件に当てはまる場合、住民税を支払っている人であっても月の負担上限額が設定されるようになります。

申請に必要な書類:診断書が必要

そこで精神疾患を持っている場合、役所へ申請することで自立支援医療制度(精神通院)を利用できるようにしましょう。このとき、以下の書類が必要になります。

  • 申請書:役所で入手する
  • 所得確認の書類:市町村民税課税証明書など
  • マイナ保険証
  • 医師の診断書

最も重要な書類は医師の診断書です。以下のような診断書に記載してもらうことになります。

医師からの診断書があることにより、精神疾患をもつと客観的に判断できるようになります。

・精神障害者保健福祉手帳も申請するといい

なお自立支援医療制度(精神通院)とは別の制度になりますが、まだ障害者手帳を保有していない場合、役所で障害者手帳の申請も行いましょう。精神障害者の場合、精神障害者保健福祉手帳を保有できます。

障害者手帳へ申請するときも医師の診断書が必要になります。そこで自立支援医療制度を利用するのであれば、同時に障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を保有するのです。障害者手帳はメリットばかりであり、デメリットがないため積極的に申請しましょう。

有効期限は1年なので更新が必要

なお自立支援医療制度には有効期限があります。役所で受理されたあと、1年が経過するまで精神疾患に関わる医療費は1割負担となります。

引き続き精神障害者として治療の継続が必要な場合、更新・延長しなければいけません。期限の3か月前から手続き可能であるため、更新作業をしましょう。

なお更新に必要な書類は先ほど記した内容とほとんど同じですが、医師の診断書は2年に一回の提出で問題ありません。

ちなみに期限が来てしまい、失効すると新たに申請しなおす必要があります。その間は1割負担や負担上限金額は存在せず、3割負担となります。そのため更新・延長の作業を先延ばしにせず、更新可能になった段階で早めに役所で申請手続きを行いましょう。

自立支援医療制度(精神通院)によって1割負担で医療を受ける

精神疾患を発症する人は多いです。精神疾患はうつ病や双極性障害、統合失調症、発達障害(ADHD、アスペルガー症候群、自閉症)、パニック障害、PTSD、てんかんと非常に幅広いですが、これらすべてが自立支援医療制度の対象になります。

そのため精神障害者なのであれば、役所で自立支援医療制度(精神通院)を申請しましょう。これにより、病院・クリニックや薬局、訪問看護ステーションでの負担が3割ではなく1割になります。

なお有効期限は1年であるため、忘れずに更新・延長の手続きをしましょう。期限切れになると新規での申請となるため、その間は3割負担になります。

精神障害者は当然として、知的障害者や身体障害者を含めて重要な制度が自立支援医療制度(精神通院)です。精神疾患(または身体障害)の治療が必要な場合、自立支援医療制度を利用しましょう。

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