障害者が障害福祉サービスを利用するとき、宿泊型のサービスとして短期入所(ショートステイ)と療養介護があります。
どちらも特定の場所に宿泊することは変わりないですが、短期入所では数日(または数十日)の滞在になります。一方で療養介護では、病院にて長めの滞在をすることになります。そのため、目的や役割は大きく異なります。
それでは短期入所と療養介護の違いには何があるのでしょうか。ショートステイと療養介護の中身について解説していきます。
もくじ
短期入所と療養介護の違い
障害福祉サービスを利用するとき、それぞれのサービスの中身を見極めて利用しなければいけません。このとき、ザックリと以下の違いがあると考えましょう。
- 短期入所:障害者施設で短い間の滞在
- 療養介護:病院での長期滞在
それぞれについて確認していきます。
ショートステイは特定の日のみ宿泊する
数日や数十日など、月30日以内で障害者施設に宿泊できる障害福祉サービスとして短期入所(ショートステイ)があります。
- 家族が休息を取りたい
- 旅行や冠婚葬祭で一時的に家族が家にいない
- 家族が出産する
- 子供の学校行事や部活動で遠征する
こうしたとき、障害者を施設へ一時的に預けることで家族はさまざまな場所へ出向けるようになります。
多くの場合、ショートステイは家族の休息(レスパイト)が目的です。家族が休息を取りたかったり、家族に何か用事があったりするときに短期入所を利用できます。なお家族の休息目的でも利用できるため、ショートステイの利用で特に理由は必要ありません。
病院への入院で療養介護を利用
それに対して、医療機関で長期入院している人が利用する障害福祉サービスに療養介護があります。医療に加えて常時の介護が必要な障害者の場合、療養介護の適用になります。
障害者で入院することはよくあります。ただ、その中でも難病で人工呼吸器が必要であったり、重症心身障害者であったりなど、特に重度の障害者が療養介護の対象です。
病院での入院と並行して、主に日中にて以下のサービスが療養介護で提供されます。
- 食事、入浴、排せつなどの介助
- 機能訓練(リハビリ)やレクリエーション
- 日常生活での相談
なお通常、病院で長期入院していてもどこかの時点で退院となるのが一般的です。病院は死ぬまで生活する場所ではないからです。そのため療養介護を利用していても、どこかの段階で退院&療養介護の打ち切りになるのは普通です。
医療型短期入所は病院での短期間ステイ
なお施設で障害者が過ごすという意味では、療養介護のように必ずしも入院する必要はありません。重度の障害者であれば、入院ではなく医療型短期入所を利用することによって病院で過ごすこともできます。
通常、ショートステイでは障害者施設にて短期滞在します。ただ多くの場合、医療的ケアが必要な障害者は障害者施設を利用できません。看護師と提携している障害者施設であれば何も問題ないものの、そうでない場合、常時の医療が必要な人について障害者施設で対応できません。
そこで、医療型短期入所として病院でショートステイを利用できます。医療型短期入所の場合、一般的なショートステイと同様に家族の休息(レスパイト)を目的として好きなときに利用できます。
医療機関での利用であるため、医療型短期入所に対応している施設は少ないです。ただ空きがあれば、医療型短期入所を依頼できます。
医療機関の利用は重症心身障害者が対象
なお通常、ショートステイは軽度の障害者であっても利用できます。短期入所というのは、障害者にとって利用しやすい制度になっています。
ただショートステイの中でも、医療型短期入所は誰でも利用できるわけではありません。例えば、以下の重度障害者で医療型短期入所を利用できます。
- 人工呼吸器による呼吸管理をしている
- 重症心身障害者(重症心身障害児、医療的ケア児)
- 進行性筋萎縮症
- 遷延性意識障害(植物状態)
医療機関を利用することになるため、療養介護と同様に、医療型短期入所の対象者は「常に医療が必要になる重度障害者」となります。病院で提供される障害福祉サービスというのは、基本的に最重度の障害者のみが対象と考えましょう。
短期入所と療養介護は大きく異なる
自宅とは異なる場所で利用する障害福祉サービスが短期入所(ショートステイ)と療養介護です。短期入所は障害者施設で短期間の宿泊をします。一方で病院にて長期入院する障害者であれば、療養介護を利用できます。
ショートステイは軽度の人でも利用できます。それに対して、療養介護は常に医療が必要な最重度の障害者が利用対象です。病院に入院中だからとって無条件に療養介護を利用できるわけではありません。
またショートステイには、医療機関で過ごす医療型短期入所もあります。医療型短期入所の場合、療養介護と同様に最重度の障害者のみ利用可能です。
短期入所と療養介護には、こうした違いがあります。障害福祉サービスによって役割や利用場面は大きく異なるため、それぞれの特徴を理解したうえで活用しましょう。