人によっては、障害者グループホームから退去したいと考えるケースがあります。一人暮らし・実家暮らしをしたかったり、ほかの施設への変更を希望したりするのです。
すべての障害者グループホームについて、入居前に契約書を取り交わすことになります。そのため契約書に従って解約する場合、何も問題なく退去・引越しできます。ただ手順があるため、これを学ばなければいけません。
また退去するとき、原状回復の義務があります。そのため退去費用として原状回復費用の支払いが必要となります。
それでは、障害者グループホームを退去するときはどのようにすればいいのでしょうか。利用者の退去方法を解説していきます。
もくじ
一人暮らしや実家暮らし、施設の変更を希望する人は多い
通常、グループホームに入居した場合は退去勧告をもらわない限り、ずっとその施設で住み続けることになります。期限付きの人はいるものの、そうでない場合は基本的に退去がありません。
ただ人によっては「これから一人暮らしを開始したい」「事情があって実家に戻る」「いまの施設が微妙なので、ほかのグループホームへ変更したい」と考えるケースがあります。
退去したい場合、基本的には問題なく退去できます。障害者グループホームというのは、一般的な賃貸住宅と同様に住む場所を自由に移動できます。
ただ障害者グループホームは介護・福祉施設であるため、一般的な賃貸住宅に比べて面倒なルールがいくつかあります。そこで、どのように退去すればいいのかルールを知っておく必要があります。
退去したい場合、事前の連絡が必須
すべての障害者グループホームについて、いつでも自由に退去できるわけではなく、事前の連絡が必須になります。
一般的な賃貸住宅であれば、1~2か月前に通知することで問題なく退去できます。これは、契約書に「退去するときは30日前(または60日前)に連絡する必要がある」と記されているからです。
これは障害者グループホームでも同様であり、通常は「30日前(または60日前)に連絡することで退去できる」と契約書に記されています。そこで、契約書に従って退去したいことを事前に伝えることで問題なく退去できます。
例えば以下のような契約書となっている場合、契約書に記されている通り、「退去したいことを伝えれば、1か月後(30日後)には退去できる」ようになります。
グループホームによって契約書の内容は異なります。ただいずれにしても、通常は1か月や2か月ほどで退去できると考えましょう。
・契約書に解約の通知期間が記されていない場合は3か月前の通知になる
ただ障害者グループホームの契約書によっては、契約書に解約の通知期間が記載されていないケースがあります。この場合、契約満了まで退去できないのでしょうか。
これについては、3か月前に通知することによって契約を解除できます。民法第617条第1項には以下のように記されています。
【民法第617条第1項】期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
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このように、いま住んでいる部屋の解約は「3か月前に申し出ることによって可能」と明確に法律で規定されています。障害者グループホームを含め、日本の不動産に関する取り決めはすべて法律に従う必要があり、たとえ期間の定めがなくても3か月で退去可能と理解しましょう。
障害者施設のスタッフへ伝えれば退去可能
それでは実際に退去したいとき、誰に伝えればいいのでしょうか。これについては、障害者施設のスタッフ(世話人)へ伝えればいいです。いつもお世話をしてもらっている介護職員へ「〇か月後に退去したい」と申し出ましょう。
これにより、非常に簡単に退去できます。契約書には「30日以上の期間をおいて文章で通知」と記されていても、口頭で伝えるだけで問題ありません。
なお悪質なグループホームによっては、退去を承諾してくれないケースがあるかもしれません。グループホームにとって、部屋に空きがあると、それだけ収益が減ってしまうからです。
ただこの場合について、たとえ契約書に解約期限の記載がなくても、前述の通り3か月前に申し出れば問題なく退去できる法律になっています。そこで「解約したいことを記した文書」を用意して、郵便局にて内容証明でグループホーム側へ送りましょう。
内容証明郵便は「いつ、誰が、誰宛てに、どのような内容の文書を出したのか」について、郵便局側が保存し、証明できるサービスです。これによって何日に解約を申し出たのか明確になり、遅くても3か月後には法的にもグループホームを退去できるようになります。
一人暮らしをしたい場合、先に退去の準備を行う
ここまで、障害者グループホームの契約を解除して退去する方法を解説してきました。ただ解約をする場合、次に住む場所を決めなければいけません。実家に戻る場合は問題ないですが、そうでない場合、住む場所がないと選択肢はホテルまたは野宿となってしまいます。
このとき一人暮らしをしたい場合、先に障害者グループホームの契約解除を行い、退去の準備を進めましょう。つまり退去する日を先に確定させておき、その後に一人暮らしを行うための賃貸住宅を探すのです。
通常、賃貸物件を探すのは引越しの一か月ほど前です。探すのがそれよりも前だと、すぐに引越しをしないことになるため、賃貸の不動産業者は相手にしてくれません。住みたい家を見つけて契約すれば、実際に住むのが先であっても一か月ほどであれば待ってくれます。ただ、それ以上は待ってくれないのです。
そのため、引越し日の一か月前になった段階で「住みたいエリア」の周辺に存在する賃貸不動産の仲介業者へ出向きましょう。
その後、「予算、部屋の広さ、駅や仕事先までの距離」などの希望を伝えます。その後、実際に物件を見学して気に入れば契約となります。
なお早めに引越し先となる物件を契約してもいいですが、前述の通り待ってくれても1か月ほどです。そのため早めに新たな賃貸物件を契約すると、いまのグループホームと新たな賃貸物件で二重家賃となります。そのため、引越し日の1か月前に物件選びを開始しましょう。
施設を変更したい場合、先に変更先のグループホームを探す
一方で一人暮らしではなく、施設を変更したい人もいます。この場合、先ほどとは違い、先に変更先のグループホームを探しましょう。
一般的な賃貸住宅とは異なり、グループホームは数が多いわけではありませんし、空き状況は異なります。そこで、移りたい障害者グループホームを探し、見学・面談を先に済ませておくのです。
賃貸住宅とは異なり、障害者グループホームであれば、2~3か月であれば待ってくれる可能性が高いです。また、一般的な賃貸住宅とは違って二重家賃は発生しないケースがほとんどなので、先に希望とするグループホームを見つけるのが先決です。
なお実際に探すとき、ほかの市区町村を含めてグループホームを探すといいです。障害者グループホームでは、ほかの都道府県であっても問題なく入居できるため、いまの施設に不満がある場合、ほかエリアも視野にいれると優れた障害者施設を見つけやすくなります。
敷金は通常ないため、返ってくるお金はない
なお通常、障害者グループホームへ入居するとき、敷金などの費用は支払いません。敷金・礼金については、どのような用途に利用されているのかあいまいな項目です。そのため多くの自治体について、「グループホームで敷金・礼金を利用者から徴収するのは適切ではない」と明示しています。
例えば以下は、岡山市が公表している内容です。
このように、共同生活援助(グループホーム)で敷金・礼金は適切ではないとされています。そのため通常、入居時に敷金は徴収されませんが、その場合は退去時に返ってくるお金も存在しません。
ただこうした行政からの指摘を無視して敷金・礼金を徴収しているグループホームが存在するのは事実です。この場合、敷金から原状回復費用が差し引かれてお金が戻ってきます。
原状回復は必要だが、費用は2~5万円ほど
なお障害者グループホームであっても、ほかの場所へ引越す場合は原状回復が必要になります。いま借りている居室について、元の状態に戻す必要があるのです。
多くのグループホームはシェアハウス形式であり、一つの部屋のみ借りることになります。この場合、浴室やトイレは共同なので原状回復の対象にはなりません。以下のような一室のみが対象であるため、原状回復費用は2~3万円ほどになるのが一般的です。
一方でグループホームによっては、それぞれの部屋に浴室やトイレが備わっているケースがあります。こうしたワンルーム形式の場合、よほど部屋が汚い場合を除き、原状回復費用は3~5万円ほどになります。
敷金を支払っていない場合、こうした原状回復費用の支払いが必要になります。一般的な賃貸住宅だけでなく、グループホームでも原状回復は必要になるため、退去・引越しをするときはこうした費用が必要になると認識する必要があります。
退去したいと伝えて引越しを行う
何か理由があり、障害者グループホームを退去したいと考えているのであれば、いま入居している施設のスタッフへ連絡すれば契約解除できます。契約書に従う必要はありますが、通常だと30日や60日が経過した後に解約できます。たとえ契約書に期間の記載がなくても、3か月後に解約可能です。
ただ引越しをするとき、実家へ移動する場合であれば特に問題ないですが、一人暮らしをしたり、ほかの施設へ移ることを考えたりしている場合、引越し先の確保をどうすればいいのか学びましょう。
なお実際に引越し日が決まり、新居も決まったら引越しとなりますが、このときは退去費用がかかります。通常は敷金を取られていないため、原状回復費用が発生することを理解しなければいけません。
障害者グループホームを退去・引越しするとき、通常の賃貸物件の場合とは少し異なる流れとなります。そこで世話人に退去したいと伝え、新たな引越し先を見つけ、引越しをしましょう。
家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。
障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。
ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。
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