障害者グループホーム(共同生活援助)を開設するとき、何も考えずに新規に建築したり、物件を契約したりしてはいけません。国からお金をもらって運営する以上、障害者ブループホームの運営では建築基準法を守る必要があるからです。

建築基準法で重要な内容は用途変更や部屋の広さです。このとき、賃貸であれば廊下幅などは気にしなくてもいいです。なお実際には、建築基準法以外にも物件探しで注意するべき点があります。

それでは、障害者グループホームの物件でどのように建築基準法を考えればいいのでしょうか。共同生活援助の設置基準について解説していきます。

法律を守って共同生活援助を運営する

障害者グループホーム(共同生活援助)の運営では、必ず法律を守らなければいけません。そうしたとき、建築基準法では以下が重要になります。

  • 用途変更:床面積が200m2以下かどうか
  • 一部屋の広さ:7.43m2以上

ちなみに、一つの障害者グループホームで利用定員は原則10人以下です。なお、既存の建物を共同生活援助として活用する場合は20人以下が定員になります。

ただ一般的には、障害者グループホームは3~6人が利用できる一戸建てやアパート(3LDK・4LDKなど)を活用するのが一般的です。そのため、利用定員は大きな問題ではありません。

用途は寄宿舎または共同住宅:200m2超で用途変更

障害者グループホームを運営するとき、特別な用途となります。具体的には、建物の用途は以下のようになります。

建物の形態用途
一戸建て寄宿舎
ファミリータイプ住居(3LDKなど)
ワンルーム共同住宅
サテライト型住居

多くの場合、障害者グループホームの運営では建物の新規建築ではなく、賃貸物件を借りて運営します。新たに土地や建物を取得する場合、初期費用が膨大になってリスクが大きすぎるからです。

このとき、床面積合計が200m2を超える場合は用途変更が必要になります。つまり建物の登記変更が必要になり、大家が基本的に承諾してくれません。そのため、床面積の合計が200m2以下の賃貸を見つける必要があります。

例えば以下は、実際に障害者グループホームの経営で利用している一軒家の賃貸借契約書です。

6LDK(5人定員)の一軒家ですが、床面積は200m2以下です。そのため、この物件の契約では用途変更が必要ではないため、登記変更する必要はありません。

一部屋の広さ・面積は7.43m2以上

なお、利用者(障害者)が入居する部屋には面積に決まりがあります。具体的には、一部屋の広さが以下の基準を超えている必要があります。

  • 一部屋:収納設備などを除き、7.43m2(約4.5畳)以上

一部屋の面積が非常に狭いと、そこに利用者を住まわせることができません。そのため、ある程度の面積のある部屋を確保する必要があります。

・余った狭い部屋はスタッフ用に利用する

なお、特に一軒家などの賃貸では「非常に狭い部屋」が存在するケースがよくあります。こうした部屋については、利用者を住まわせることはできないものの、スタッフ専用の部屋(例えば仮眠部屋など)として活用するといいです。

リビングに世話人などのスタッフが基本的にいるものの、常に利用者を支援しなければいけないわけではありません。また場合によっては、部屋の中で事務作業が必要になるケースもあります。そうしたとき、狭い部屋をスタッフ用として有効活用しましょう。

その他の建物の規制が存在する

それでは、建築基準法だけ確認すればいいのかというと、そういうわけではありません。障害者グループホームでは、他にも建物に関する規制が存在します。

まず、自治体独自のルールを確認しましょう。自治体によって障害者グループホームに対する開設の難易度は大きく異なります。そのため、役所とやり取りすることで「共同生活援助の開設が可能かどうか」「独自の基準は何があるのか」を確認する必要があります。

それに加えて、障害者グループホームでは消防法と都市計画法を守らなければいけません。

消防法で自動火災報知機や誘導灯を設置する

すべての共同生活援助について、自動火災報知機や誘導灯を設置する必要があります。たとえ賃貸物件であっても、新たに設置しましょう。

障害者グループホームは必ずしもバリアフリーである必要はなく、リフォーム費用は非常に低いです。ただ、消防設備に関するリフォームは必ず必要になります。

なお、建物によっては自動火災報知機やスプリンクラーの設置が必要になります。例えば、区分4以上の利用者が8割超となると、スプリンクラーの設置が必須です。

都市計画法で設置できる場所は限られる

また都市計画法により、好き勝手に建物を利用できなくなっています。障害者グループホーム(共同生活援助)の開設では、市街化調整区域を避けなければいけません。

都市計画法では、市街化調整区域の建物の建築が原則として禁止されています。また、既に建物がある場合であっても、障害者グループホームとしての利用は非常に難易度が高いです。そのため、市街化調整区域を避けて物件を探す必要があります。

実際のところ、どこが市街化調整区域なのか把握している人はいません。そこで、役所で市街化調整区域を確認し、そこを避けて障害者グループホームを開設しましょう。

立地など、その他の要件は重要

それでは、ここまで解説した法律面の基準をクリアしていれば問題ないかというと、そうではありません。賃貸でも新築でも、利便性の高い場所でなければ利用者(障害者)に選ばれません。

多くの場合、障害者グループホームの入居者は精神障害者や知的障害者です。彼らは健常者よりも圧倒的にこだわりが強く、少しでも気に入らない点があると入居先として選ばれないのです。このとき、一般的には以下の障害者グループホームが好まれやすいです。

  • コンビニやスーパーから近い
  • 駅から近い
  • 医療機関へ通いやすい

なお、これは共同生活援助で働くスタッフも同様です。障害者グループホームではスタッフの採用も重要であり、利便性が高くないと採用時にスタッフにも選ばれにくいです。そこで建物に関する設置基準だけでなく、利用者やスタッフ目線での利便性も考慮に入れて物件探しをしましょう。

法律により、共同生活援助は規制を受ける

国からの報酬で事業が成り立つ以上、障害者グループホームは規制を受けます。特に新たな棟を開設する場合、建築基準法を守らなければいけません。特に重要な内容としては、以下の2つがあります。

  • 床面積が200m2以下(超える場合、用途変更が必要)
  • 一部屋の広さが7.43m2以上

他には、消防法や都市計画法を守りましょう。さらに、利用者やスタッフの目線で利便性の良い立地である必要があります。そうしなければ、利用者からもスタッフからも選ばれません。

障害者グループホームの新規開設では、考えるべき点がいくつもあります。その一つが建築基準法などの法律であるため、こうした規制があることを理解して、新築または賃貸にて障害者グループホームを運営するといいです。

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