多くの身体障害者で利用される重度障害者向けのホームヘルプとして重度訪問介護があります。ただ、重度訪問介護は知的障害者・精神障害者であっても利用できます。
知的障害者・精神障害者の中でも、症状の重い人で重度訪問介護を利用可能です。特に他害・暴力や物損がある場合、重度訪問介護による見守りをすることで、危険な状態を事前に防止したり避けたりできるようになります。
それでは、知的障害者・精神障害者で重度訪問介護を利用するときに考えなければいけないことは何なのでしょうか。知的障害者・精神障害者での重度訪問介護について解説していきます。
もくじ
知的障害者・精神障害者で重度訪問介護を利用可能
重度訪問介護の制度が創設された当初、難病患者を含め重度の身体障害者のみが重度訪問介護を利用していました。ただ現在では、重度の知的障害者・精神障害者についても重度訪問介護を利用できるようになっています。
重度訪問介護の主な利用者としては以下があります。
- ALS
- 脳性麻痺
- 脊髄損傷
- 筋ジストロフィー
- 重度の知的障害・精神障害
身体障害者に比べると、知的障害者・精神障害者の利用者は少ないです。ただ、知的障害者・精神障害者であっても重度訪問介護を活用することで、自宅で過ごせるようになります。
重度訪問介護を利用するための要件・対象者
それでは、重度訪問介護を利用する要件・対象者としては何があるのでしょうか。同居家族がいても重度訪問介護を利用できます。そのため、単独生活でも家族がいても重度訪問介護の利用に影響はありません。
それに対して、障害支援区分は重要です。区分は1~6まであり、数字が大きいほど重度を表します。
このとき、重度訪問介護は区分4以上の人で利用できます。また区分4以上であればいいわけではなく、以下のいずれかに当てはまっている必要があります。
- 二肢以上に麻痺があり、歩行・移乗・排尿・排便のいずれも支援が必要
- 障害支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上
要は、特別な支援が必要な区分4以上の人で重度訪問介護を利用できます。そのため、知的障害者・精神障害者の中でも重度の人のみ重度訪問介護を依頼できるようになっています。
強度行動障害をもつ人がメインになりやすい
重度の知的障害者や精神障害者の場合、体の麻痺など身体機能に異常がない人はたくさんいます。それでは、もう一方の認定基準である「障害支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上」とは何を表しているのでしょうか。
行動関連項目等(12項目)について、以下は重度(2点)に該当します。
- コミュニケーション:独自方法でのみコミュニケーション可、またはできない
- 説明理解:理解しているかどうかも判断できない
- 大声・奇声:ほぼ毎日(週5日以上)
- 異食行動:ほぼ毎日(週5日以上)
- 多動・行動停止:ほぼ毎日(週5日以上)
- 不安定な行動:ほぼ毎日(週5日以上)
- 自傷行為:ほぼ毎日(週5日以上)
- 他害・暴力:ほぼ毎日(週5日以上)
- 不適切な行為:ほぼ毎日(週5日以上)
- 突発的な行動:ほぼ毎日(週5日以上)
- 過食・反すうなど:ほぼ毎日(週5日以上)
- てんかん:週に1回以上
こうした異常行動や自傷行為、他害・暴力がある知的障害者・精神障害者というのは、強度行動障害に該当します。そのため、強度行動障害がある場合は重度訪問介護を検討して問題ありません。
見守りがないと他害・暴力や物損につながる
他害・暴力や自傷行動のある障害者について、重度訪問介護を利用していないと家族が面倒を見ることになります。ただ暴力により、家族は常に危険な状態となります。
また、強度行動障害のある障害者が外出する場合、周囲の店舗などで暴れることがあるかもしれません。こうなると弁償となり、金銭的にも被害が大きくなります。例えば以下は、障害者が店舗内で暴れた後の様子です。
そこで重度訪問介護を利用すれば、常に知的障害者・精神障害者に対して見守りをしてくれるようになります。たとえ危険な行動を取ろうとしても、ホームヘルパーが近くで見守りをしているため、行動を止めることができます。
また見守りに限らず、重度訪問介護での長時間介護によって以下が可能になります。
- 身体介護:食事、入浴、排せつなど
- 家事援助:料理、洗濯、そうじ、買い物など
- 外出支援:病院への通院など
- 生活に関する相談やアドバイス
こうして、重度の知的障害者・精神障害者であっても自宅にて規則正しい生活を送れるようにサポートするのが重度訪問介護の役割です。
障害者グループホームという方法もある
ただ自宅で過ごす以上、家族の介護負担がゼロになるわけではありません。また、家族に対する危険がゼロになるわけでもありません。たとえホームヘルプによって長時間介護が可能であっても、家族が継続して障害者の介護をしなければいけないのは変わりません。
また親が死亡した場合、障害者は一人で生きていく必要があります。そのため、できるだけ早い段階で障害者グループホームを利用する親族も多いです。複数の障害者が集団生活を送る施設が障害者グループホームです。
障害者グループホームの場合、重度障害者であっても問題なく受け入れてくれます。強度行動障害がある場合は受け入れ施設を探すのが少し難しいものの、受け入れ施設を見つけることができれば、家族の介護負担は本当の意味でゼロになります。
入居に当たって新たな費用は不要ですし、障害者グループホームであれば、障害年金だけで格安にて継続して住むことが可能です。そのため自宅にこだわらない場合、知的障害者・精神障害者について障害者グループホームで面倒を見てもらっても問題ありません。
重度の知的障害者・精神障害者でホームヘルプを利用する
すべての障害者でホームヘルプを利用できます。多くの場合、知的障害者・精神障害者は軽度の人向けの居宅介護をホームヘルプとして活用します。
ただ最重度の知的障害者・精神障害者については、例外的に重度訪問介護を依頼できます。異常行動や自傷行為、他害・暴力などがある場合、家族は常に危険ですし介護負担が大きいです。そこで、重度訪問介護によって長時間の介護サービスを依頼するのです。
なお自宅にこだわらないのであれば、早めに障害者グループホームへの入居を考えても問題ありません。いつかは親が死ぬため、早めに親亡き後問題に備えながら介護負担についてもゼロにするのです。
こうした内容を理解して、自宅で障害者が過ごすとき、強度行動障害のある重度の知的障害者・精神障害者であれば重度訪問介護を考えても問題ありません。
家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。
障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。
ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。
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