心臓病を抱えており、心臓機能が不自由になっている人は多いです。こうした人では服薬をしていたり、ペースメーカーや人工弁を装着していたりします。
このような場合、障害年金の受給が可能です。つまり、手術によって医療機器を埋め込むことで自動的に障害年金の対象になるのです。
ただ、障害年金をずっと受け取れるわけではありません。手術後について、更新時に障害年金の受給要件を満たしている必要があります。そのため心臓病の人について安心してはならず、障害年金の基準を理解する必要があります。
それでは、心疾患を有する人はどのように考えて障害年金を活用すればいいのでしょうか。心臓病での障害年金の利用法を解説していきます。
もくじ
心臓疾患は障害年金の対象になる
弁疾患や心筋疾患、不整脈など、これらの疾患は障害年金への申請が可能です。また、こうした心臓病ではペースメーカーやICD、人工弁などを装着していることがよくあり、この場合は無条件で障害年金の対象となります。
なお、よくある勘違いとして「障害者手帳の等級との混同」です。障害年金と障害者手帳はまったく別の制度であり、等級の基準も異なります。そのため身体障害者手帳1級を保有していても、障害年金で1級になるとは限りません。
このとき、心臓病では以下の状態によって障害年金が決まります。
- ペースメーカー、ICD、人工弁:障害年金3級
- CRT、CRT-D:障害年金2級
もちろん、これらの医療機器を利用していない状態であっても障害年金の認定は可能です。また、症状が安定していない場合はより上位の等級になることもあります。
・65歳未満の若い人が対象
なお、障害年金を利用するためには初診日(心疾患で初めて医療機関を受診した日)が65歳未満である必要があります。つまり、初診日が65歳以上や70歳以上などの高齢者は障害年金の対象外です。
老齢年金を受給できない年齢の若い人について、障害者になってしまった場合の年金制度が障害年金です。障害年金には年齢制限があることを理解しましょう。
ペースメーカー、ICD、人工弁は障害年金3級
心臓病に対する医療機器について、ペースメーカーやICD、人工弁を利用している人は原則、障害年金3級の対象になります。つまり、これらを装着している事実があれば自動的に障害年金3級となります。
- ペースメーカー:脈拍が遅くなる疾患に使用
- ICD:重度の不整脈発生での突然死を防ぐ
- 人工弁:弁疾患に対する人工的な弁を使用
障害年金3級について、障害厚生年金のみが対象になります。つまり、初診日に会社員・公務員であり、厚生年金に加入していた人のみペースメーカーやICD、人工弁の装着によって障害年金を受け取れます。
一方、初診日に国民年金の加入者である場合、障害年金2級以上でなければいけません。そのため、この場合は障害年金を受け取れないケースがよくあります。
種類 | 国民年金 | 厚生年金 |
障害年金1級 | 〇 | 〇 |
障害年金2級 | 〇 | 〇 |
障害年金3級 | - | 〇 |
・他の症状を組み合わせて障害年金2級は普通
なお、ペースメーカーやICD、人工弁の単独では障害年金3級であるものの、より症状が悪かったり、他の疾患を抱えていたりする場合、障害年金2級に該当することもあります。
CRT、CRT-Dは障害年金2級
ただ装着する医療機器が違うと、障害年金2級になります。CRT(心臓再同期医療機器)やCRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着する場合、原則として障害年金2級です。
- CRT:重症心不全に対するペースメーカー
- CRT-D:CRTとICDの機能を併せ持つ
これらの医療機器を装着すると、自動的に障害年金2級となります。参考までに、重度心不全で心臓移植や人工心臓を活用している場合、障害年金1級となります。
等級 | 状態 |
1級 | 心臓移植 |
人工心臓 | |
2級 | CRT |
CRT-D | |
3級 | ペースメーカー |
ICD | |
人工弁 |
いずれにしても、手術の内容によってこのように認定される等級が異なります。
心臓疾患での障害年金の認定基準
それでは、こうした医療機器を装着していないと心疾患で障害年金を受給できないかというと、そういうわけではありません。認定基準に照らし合わせて、障害年金を受給できる状況であれば問題ないです。
このとき、心臓病では異常検査所見が見られるようになります。異常検査所見について、障害年金では以下の異常があるかどうかが重要になります。
区分 | 異常検査所見 |
A | 安静時の心電図で0.2mV以上のSTの低下または0.5mV以上の深い陰性T波がある |
B | 負荷心電図(6Mets未満相当)で明らかな心筋虚血所見がある |
C | 胸部X線上で心胸郭係数60%以上または明らかな肺静脈性うっ血所見・間質性肺水腫がある |
D | 心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常がある |
E | 心電図で重症な頻脈性または徐脈性不整脈所見がある |
F | 左室駆出率(EF)40%以下 |
G | BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml相当を超える |
H | 重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に50%以上の狭窄、または3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄 |
I | 心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ今日まで狭心症状を有する |
医師でなければ内容を理解できないと思いますが、ひとまずこうした異常検査所見があるかどうかが重要になります。
心疾患ごとの認定基準を確認する
なお障害年金の心疾患では、それぞれの項目ごとに認定基準が決められています。そこで、それぞれについて確認しましょう。
・弁疾患
等級 | 状態 |
1級 | 安静時も心不全症状があり、かつ活動範囲がベッド周辺に限られる |
2級 | 人工弁装着後に6か月以上経過し、それでも症状を表す臨床所見が5つ以上、かつ異常所見が1つ以上あり、かつ歩行や身の回りはできるが軽労働は不可で日中の50%以上は起きている |
異常検査所見A・B・C・D・E・Gのうち2つ以上の所見があり、かつ病状を表す臨床所見が5つ以上あり、かつ歩行や身の回りはできるが軽労働は不可で日中の50%以上は起きている | |
3級 | 人工弁を装着 |
異常検査所見A・B・C・D・E・Gのうち1つ以上の所見があり、かつ病状を表す臨床所見が2つ以上あり、かつ制限はあるが歩行や軽労働(軽い家事や事務)はできる |
・心筋疾患
等級 | 状態 |
1級 | 安静時も心不全症状があり、かつ活動範囲がベッド周辺に限られる |
2級 | 左室駆出率(EF)40%以下に加えて、病状を示す臨床所見が5つ以上あり、かつ歩行や身の回りはできるが軽労働は不可で日中の50%以上は起きている |
異常検査所見A・B・C・D・E・Gのうち2つ以上の所見があり、かつ病状を表す臨床所見が5つ以上あり、かつ歩行や身の回りはできるが軽労働は不可で日中の50%以上は起きている | |
3級 | EF値が50%以下を示し、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ制限はあるが歩行や軽労働(軽い家事や事務)はできる |
異常検査所見A・B・C・D・E・Gのうち1つ以上の所見があり、かつ病状を表す臨床所見が1つ以上あり、かつ制限はあるが歩行や軽労働(軽い家事や事務)はできる |
・虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
等級 | 状態 |
1級 | 安静時も常に心不全または狭心症状があり、かつ活動範囲がベッド周辺に限られる |
2級 | 異常検査所見が2つ以上、かつ軽労作で心不全や狭心症などの症状を表し、かつ歩行や身の回りはできるが軽労働は不可で日中の50%以上は起きている |
3級 | 異常検査所見が1つ以上、かつ心不全あるいは狭心症などの症状が1つ以上あり、かつ制限はあるが歩行や軽労働(軽い家事や事務)はできる |
・ 難治性不整脈
等級 | 状態 |
1級 | 安静時も常に心不全症状があり、かつ活動範囲がベッド周辺に限られる |
2級 | 心電図で重症な頻脈性または徐脈性不整脈所見があり、かつ歩行や身の回りはできるが軽労働は不可で日中の50%以上は起きている |
異常検査所見A・B・C・D・F・Gのうち2つ以上の所見があり、かつ病状を表す臨床所見が5つ以上あり、かつ歩行や身の回りはできるが軽労働は不可で日中の50%以上は起きている | |
3級 | ペースメーカー、ICDを装着 |
異常検査所見A・B・C・D・F・Gのうち1つ以上の所見があり、かつ病状を表す臨床所見が1つ以上あり、かつ制限はあるが歩行や軽労働(軽い家事や事務)はできる |
・大動脈疾患
等級 | 状態 |
3級 | 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤により人工血管を挿入、かつ制限はあるが歩行や軽労働(軽い家事や事務)はできる |
胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に加え、難治性の高血圧を合併 |
・先天性心疾患
等級 | 状態 |
1級 | 安静時も常に心不全症状があり、かつ活動範囲がベッド周辺に限られる |
2級 | 異常検査所見が2つ以上、かつ病状を表す臨床所見が5つ以上あり、かつ歩行や身の回りはできるが軽労働は不可で日中の50%以上は起きている |
アイゼンメンジャー症候群(手術不可能な逆流状況が発生)があり、かつ歩行や身の回りはできるが軽労働は不可で日中の50%以上は起きている | |
3級 | 異常検査所見C・D・Eのうち1つ以上の所見と病状を表す臨床所見が1つ以上あり、かつ制限はあるが歩行や軽労働(軽い家事や事務)はできる |
肺体血流比1.5以上の左右短絡、平均肺動脈収縮期圧50mmHg以上であり、かつ制限はあるが歩行や軽労働(軽い家事や事務)はできる |
異常検査所見と照らし合わせて、これらの状態に当てはまっていれば障害年金の対象になります。
障害認定日の特例
なお通常、障害年金を申請するためには初診日から1年6か月が経過している必要があります。初診日から1年6か月の時点を障害認定日といいます。障害認定日から障害年金に関する書類を提出して問題ありません。
ただ心臓病については、障害認定日に関する特例があります。具体的には、ペースメーカーやICD、人工弁、CRT、CRT-Dを装着した場合、たとえ初診日から1年6か月が経過していなくても、手術日が障害認定日となります。
そのため心疾患によって上記の医療機器を装着した場合、初診日から日数が経過していなかったとしても、手術後にできるだけ早く障害年金の申請をしましょう。
更新時は状態を考慮して等級が決定される
なおペースメーカーや人工弁の装着により、自動的に障害年金の受給対象になることを解説しましたが、これは初回の障害年金申請時のみが対象になります。これらの医療機器を装着している場合、無条件でずっと障害年金を受給できるわけではありません。
障害年金は有期認定が基本であり、期限付きの障害年金となります。そのため心疾患によって障害年金を受給する場合についても、更新をしなければいけません。永久認定は基本的に期待しないようにしましょう。
事実、障害年金の認定基準では「1~2年ほど経過観察したうえで症状が安定しているとき、 臨床症状・検査成績・一般状態区分表を考慮して障害等級を再認定する」とわれています。つまり、更新時に日常生活や病気の症状が再判定されます。
そのため手術によって症状が大幅に改善し、更新時に「障害年金2級 → 障害年金3級」「障害年金の基準に該当せず支給停止」などに変更となるのは普通です。
実際のところ、手術後に臨床所見や自覚症状が大幅に改善するのは普通です。障害年金はあくまでも、日常生活や労働に支障のある人のための制度です。問題なく日々を過ごせる人が受給できる仕組みではないため、こうした事実を理解しましょう。
心疾患で障害年金を受給する
心臓病があると、日常生活が困難になって就労も難しくなります。そうした場合、ペースメーカーやICD、人工弁などを利用することになります。初診日が65歳以上では無理ですが、年齢が若い人であれば障害年金を利用できます。
ペースメーカー・ICD・人工弁であれば障害年金3級となり、CRT、CRT-Dであれば障害年金2級になります。またこれらの医療機器を利用していなくても、認定基準に当てはまっている場合は障害年金の対象です。
なお医療機器を装着したとしても、更新時に臨床所見や自覚症状が再判定されます。このとき、症状が軽い場合は等級が低くなったり、支給停止になったりします。
心疾患で障害年金を受給するとき、こうした内容を事前に理解しましょう。ペースメーカーやICD、人工弁、CRT、CRT-Dを装着した場合など、初診日から1年6か月が経過していなくても申請できる人は多く、対象者は素早く障害年金へ申請しましょう。
家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。
障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。
ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。
そこで、当サイトでは完全無料で障害者グループホームを紹介するサービスを日本全国にて実施しています。「いますぐ入居したい」「いまの障害者グループホームから他の施設へ移りたい」「強制退去となり、新たな施設を探している」など、軽度から重度の障害者を含めてあらゆる方に対応しています。