障害年金を受給している人の中には、症状が明らかに悪化している人がいます。こうしたとき、額改定請求を依頼することによって障害年金の等級を上げることができます。

新規や更新時と同様に、医師の診断書を添付することによって額改定請求を行います。このとき障害年金1級や2級の認定基準に当てはまる場合、受給額が上昇します。また障害年金1級や2級にしておけば、遺族年金の要件を満たせるのもメリットです。

ただ額改定請求により、永久認定から有期認定(有効期限ありの認定)に変更されるケースがあります。また人によって、額改定請求できるタイミングが異なります。

それでは、障害者はどのように考えて額改定請求をすればいいのでしょうか。障害年金で重要な額改定請求について解説していきます。

額改定請求で診断書を提出し、等級を重くする

身体障害者や知的障害者、精神障害者、難病患者であれば障害年金を受給できます。このとき障害の種類によって認定基準は異なりますが、明らかに症状が重くなっており、重度の等級に該当するのであれば額改定請求が有効です。例えば、以下のような状況です。

  • 難病の症状が進行し、寝たきりになった:障害年金1級を目指す
  • 精神疾患が悪化し、働けなくなった:障害年金2級を目指す
  • 全盲となって何も見えなくなった:障害年金1級を目指す

例えば、このようになります。そこで、申請書と共に医師の診断書を提出することになります。例えば以下は視覚障害者に関する医師の診断書です。

なお当然ながら、簡単に等級が上昇するわけではないため、障害年金を専門とする社労士に作業を依頼しないと額改定請求は難しいです。そこで、専門の社労士に依頼しつつ等級の上昇を目指すといいです。

障害年金1級・2級で加給年金や遺族年金の要件を満たす

障害年金の等級が上がることで、受給できる基本額が上昇するのは誰でも理解できます。ただ、障害年金の等級が上がるのは、他にもメリットがあります。

特に障害年金3級から2級(または1級)へ上がるのは大きな意味があります。障害年金2級では加給年金(子の加算と配偶者加算)があるため、子供や配偶者がいる場合はより受給額が上昇しやすいです。

種類1級・2級3級
子の加算
配偶者加算

※配偶者加算は障害厚生年金の人のみ対象

さらには障害年金1級・2級の障害者が死亡する場合、残された家族(配偶者・子供)は遺族年金を受け取れます。障害年金3級でも遺族年金を受け取れるケースはあるものの、障害年金1~2級であれば、すべての死因で遺族年金の対象になるので確実です。

特に進行速度の速い難病患者の場合、額改定請求によって障害年金の等級を上げておくのは、遺族年金によって残された家族を守ることにもつながります。

障害厚生年金3級は65歳以上で額改定請求ができない

なお、症状が悪化すればすべての人で額改定請求が可能なわけではありません。障害年金3級を受給している場合、65歳以上になると額改定請求を行えなくなります。

65歳以上で額改定請求ができない人というのは、これまで1級または2級に該当したことのない人です。一方でいま障害厚生年金3級であっても、過去に1級や2級だった期間がある場合、額改定請求が可能になります。

ちなみに、症状回復によって障害年金3級にも該当しておらず、さらには3年以上が経過した場合、65歳以上で失権します(65歳未満の場合、失権ではなく支給停止となります)。

永久認定から有期認定への変更リスクはデメリット

それでは、すべての人で額改定請求が優れているのかというと、必ずしもそうではありません。額改定請求のデメリットとして、永久認定から有期認定(有効期限あり)へ変更となるリスクがあります。

外部障害の身体障害者であれば、症状の回復がないので額改定請求をするのは特に問題ありません。また身体障害者であれば、検査結果によって明確な数値を得ることができます。

一方でそれ以外の障害者で永久認定を受けている場合、額改定請求は慎重になる必要があります。例えば精神障害者や難病患者で永久認定になるケースは稀です。精神障害者や難病患者の場合、回復の見込みがなくても、症状の変化があるからです。

ただ場合によっては、発達障害を含めて、精神障害者でたまに永久認定となることがあります。精神障害者で障害年金2級(永久認定)なのであれば、たとえ症状が悪化しても、額改定請求によって障害年金1級は目指さないほうがいいです。下手に額改定請求をして永久認定から有期認定へと変更になると、デメリットのほうが大きいからです。

すべての人で額改定請求が適切なわけではありません。永久認定となっている障害者の場合、本当に額改定請求が適切かどうか見極めましょう。

新規受給できるようになって1年後に額改定請求できる

それでは、どのタイミングで額改定請求を行えるようになるのでしょうか。これについて、障害年金の請求方法によって変化します。

・認定日請求または遡及請求の場合

対象の傷病について、初めて医療機関を受診した日を初診日といいます。また、初診日から1年6か月が経過した日が障害認定日です。障害認定日から、障害年金の申請が可能です。

障害認定日を利用して障害年金へ申請する方法(認定日請求または遡及請求)では、障害認定日から1年後に額改定請求が可能です。言い換えると、初診日から2年6か月後であれば額改定請求できるようになります。

・事後重症請求の場合

一方、障害認定日にそこまで重度ではなく、後になって重症化する人もいます。この場合は事後重症請求をします。

事後重症請求によって障害年金を受け取る場合、障害認定日ではなく、障害年金の受給権が発生した日を基準にします。事後重症請求では、受給権が発生して1年後から額改定請求が可能になります。

更新後の額改定請求のタイミングはいつから?

中には、障害年金の更新後に額改定請求をしたい人もいます。障害年金では、多くの人で有期認定です。そのため1~5年ごとに更新することになりますが、更新のタイミングで「等級に変化がない」「等級が上がった」「等級が落ちた」のケースがあります。

このとき、以下のように考えます。

・等級に変化がない

額改定請求の時期の制限はなく、いつでも額改定請求が可能です。

・等級が上がった

更新月の初日(診査を受けた日)から、1年が経過した後に額改定請求が可能です。例えば6月が更新月の場合、翌年の6月1日より後に額改定請求できます。

・等級が下がった

更新月の3か月後の初日(診査を受けた日)から、1年が経過した後に額改定請求が可能です。例えば6月が更新月の場合、翌年の9月1日より後に額改定請求できます。

1年を待たなくてもいい特例

なお身体障害者について、障害の種類によっては1年の経過を待たなくても額改定請求できる特例が存在します。具体的には、以下のケースが該当します。

【視覚・聴覚・咽頭・肢体】

  • 視力障害で1級・2級に該当
  • 視野障害で1級・2級に該当
  • 聴力障害で1級・2級に該当
  • 喉頭を全て摘出
  • 肢体障害で1級・2級に該当

【心臓・腎臓の障害】

  • 心臓移植、または人工心臓を装着
  • 心臓再同期医療機器を装着
  • 人工透析を開始(3か月を超えて継続)

【その他】

  • 人工肛門と人工膀胱(ストーマの処置を行わない)が6か月を超えて継続
  • 人工肛門と尿路変更を実施して6か月を超えて継続
  • 人工肛門と排尿機能障害(留置カテーテルや自己導尿を常に行う状態)が6か月を超えて継続
  • 脳死状態または遷延性植物状態(3か月を超えて継続)
  • 人工呼吸器を装着(1か月を超えて常時装着)

身体障害者については障害年金の基準が明確です。また上記の状態については、基本的に回復を見込めないため、1年を待たずに額改定請求が可能となります。

額改定請求によって等級を上げる

症状が重くなれば、それに伴って障害年金の等級を上げることができます。もちろん簡単に等級が上がるわけではないものの、明確に症状が悪くなった場合は額改定請求を検討しましょう。

特に障害年金3級から1級や2級に上がる場合、大幅に受給額が上昇するだけでなく、加算や遺族年金でも有利になります。ただ精神障害者で永久認定をもらっている人など、すべての人で額改定請求が適切ではないので注意しましょう。

なお、いつから額改定請求が可能なのかを知るのも重要です。人によって額改定請求が可能なタイミングが異なります。

これらの内容を理解して、症状悪化に伴って等級を上げましょう。医師の診断書を入手し、さらには社労士に依頼することで額改定請求をするといいです。

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