障害者であれば障害年金の申請をすることができます。ただ障害者であっても、すべての人で障害年金を受け取れるわけではありません。たとえ障害者手帳を保有していたとしても、障害年金を受給できていない人はたくさんいます。

そうしたとき、軽度知的障害の人は障害年金を受け取ることができるのでしょうか。療育手帳を保有していても、ある程度のことを自分で行える場合、知的障害のみだと障害年金の受給は難しいです。

ただ軽度知的障害者の場合、知的障害(精神遅滞)によってうつ病など、その他の精神疾患を発症することがあります。この場合、知的障害と精神疾患の併発が考慮されて障害年金の受給が可能です。そのため、軽度知的障害者で障害年金を受け取っている人はたくさんいます。

それでは、軽度知的障害の場合はどのように考えて障害年金の申請をすればいいのでしょうか。軽度の知的障害(精神遅延)で悩んでいる人について、障害年金の活用法を解説していきます。

軽度知的障害者は障害年金の基準に達しない

軽度知的障害の場合、療育手帳B2や療育手帳Cになります(自治体によって呼び方は異なる)。こうした人の場合、大学に進学・卒業しているのは普通ですし、一般企業でも普通に働いています。

こうした軽度知的障害者について、障害年金の対象とはなりません。一人で生活できる場合、たとえ障害者手帳を保有していても、障害年金の受給は難しくなるのです。

知的障害者の場合、障害年金を受け取るためには1級または2級に該当する必要があります。障害年金1級・2級の認定基準は以下のようになっています。

障害年金基準
1級
  • 食事や身の周りの行動で全面的な援助が必要
  • 会話による意思の疎通が不可能か著しく困難
2級
  • 食事や身の周りの行動で基本的な行為を行えるが援助は必要
  • 会話による意思の疎通が簡単な内容に限られる

つまり、援助なしに生きていけない人が障害年金の受給対象になります。

1級や2級のほかにも障害年金には3級があり、こちらの基準は「労働が著しい制限を受ける状態」です。つまり働ける状態であっても障害年金3級に申請できますが、障害年金3級となってお金を受け取るためには「初診日に厚生年金に加入している」ことが条件になります。

このとき知的障害は生まれつきであり、「生まれた日=初診日」です。当然、0歳の赤ちゃんが会社員として働き、厚生年金に加入していることはあり得ません。そのため知的障害者は障害年金3級の対象外であり、必ず1級または2級に該当する必要があります。

労働が困難で援助がないと生活できない場合は受給可能

それでは、軽度知的障害者はどうやっても障害年金の受給が無理なのでしょうか。前述の通り、知的障害単独で申請する場合、障害年金の基準に達しません。

ただ軽度であっても知的障害(精神遅延)を有する人の場合、他の人よりも理解能力が劣っていたり、ミスが多かったりと、社会での生きにくさを感じやすくなります。

こうしてうつ病や発達障害を含め、他の精神疾患を併発することにより、労働困難な状況に陥ることがあります。この場合、障害年金の受給が可能になります。

つまり軽度の知的障害者の場合、知的障害単独では障害年金の審査に受かりにくいものの、他の精神疾患を併発している場合、それらと組み合わせることによって障害年金の受給が可能になると理解しましょう。

診断書の中身を理解する:一人暮らしは特に受給困難

それでは、なぜ軽度の知的障害者は障害年金の受給が難しいのでしょうか。この理由について、障害年金用の診断書を確認すればわかります。

障害年金の申請では、必ず医師の診断書が必要になります。このとき、「アパートなどで一人暮らしをしている」と仮定し、以下の項目が可能かどうかを記されることになります。

  • 適切な食事:配膳などの準備を含め、適当量をバランスよく摂る
  • 身辺の清潔保持:洗面、洗髪、入浴などの身体の衛生保持や着替え
  • 金銭管理と買い物:金銭を独力で適切に管理し、一人で買い物が可能
  • 通院と服薬:通院や服薬を行い、病状を主治医に伝える
  • 他人との意思伝達・対人関係:他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える
  • 身辺の安全保持・危機対応:事故などの危険から身を守る、他人に援助を求める
  • 社会性:銀行での金銭の出し入れや公共施設などの利用

援助なしに一人暮らしできる軽度知的障害者の場合、ほとんどの項目について「できる」にチェックが入ることになります。この場合、障害年金の審査に通過しません。援助なしに一人暮らしできる障害者については、障害年金1級・2級の対象外なのです。

一方で他の精神疾患を併発し、十分に働くことができず、援助なしに生活が困難な場合があります。このときについては、診断書の日常生活判定の項目で「援助が必要」「援助ありでもできない」などにチェックが入り、結果として障害年金を受給できるようになります。

うつ病や発達障害など、その他の精神疾患を考慮する

そこで軽度知的障害者の場合、うつ病や発達障害(ADHD、アスペルガー症候群、自閉症)、統合失調症など、その他の精神疾患を考慮しましょう。複数の疾患をもつ場合、障害年金の等級は上がりやすくなります。

このとき、疾患ごとに等級を出して判定する併合認定があれば、すべての疾患を総合的に判断する総合認定もあります。知的障害と精神疾患の組み合わせについて、判断方法としては総合認定になります。

知的障害とその他の精神疾患を総合的に判断することで、障害年金の1級や2級に該当しているかどうかを判断するのです。

初診日を確定させ、事後重症請求を行う

なお知的障害者について、前述の通り生まれた日が初診日になります。ただ障害年金は20歳から申請可能であるものの、20歳に到達した時点(障害認定日の到達時点)で障害年金の条件を満たしていない軽度知的障害者は多いです。

この場合、その後に症状が悪化したことで障害年金の基準を満たすようになったのであれば事後重症請求をしましょう。

障害認定日(知的障害者は20歳に達したとき)では障害年金を請求できないものの、その後の症状悪化によって障害年金へ申請する方法を事後重症請求といいます。

このとき、精神疾患の種類によって「知的障害が関係している病気かどうか」が異なります。例えばうつ病や発達障害が判明した場合、「軽度知的障害が関係してうつ病や発達障害が悪化した」と考えます。最初の疾患(前発疾病)が知的障害の場合、後になって発症した疾患(後発疾病)との関係は以下のようになります。

前発疾病後発疾病取り扱い
知的障害発達障害同一の疾病
うつ病・双極性障害同一の疾病
統合失調症知的障害の病態として出現している場合:同一の疾病
上記以外の精神疾患別の疾病

知的障害は誕生日が初診日となるため、初診日の証明をする必要がなく、療育手帳のコピーを提出すれば十分です。そのため発達障害やうつ病を併発している軽度知的障害者について、同一の疾病と考えればよく、初診日は知的障害と同じになります。

一方で統合失調症については、知的障害を原因として統合失調症を発症するケースは稀であるため、原則は別の疾患として取り扱います。ただ知的障害の中には統合失調症と似た病態を示すことがあり、この場合は同一の疾病として取り扱います。

なお知的障害(精神遅延)とは別の疾患として精神疾患を発症した場合、その精神疾患について初診日の証明をする必要があります。その場合、その他の精神疾患について、初診日の医療機関に受診状況等証明書を書いてもらうことで初診日を証明しましょう。

軽度知的障害者で障害年金をもらう

働いている人を含め、障害者では障害年金をもらいながら生活している人は多いです。ただ知的障害者の場合、生まれた日が初診日になります。そのため障害年金を受け取るためには、等級が1級または2級でなければいけません。

誰かの援助なしに生活できる場合、障害年金の1級や2級には該当しません。特に一人暮らしをしている場合は難しいです。つまり、軽度だと知的障害単独では障害年金をもらえない可能性が高いです。

ただ軽度知的障害者であっても、社会で生きていく中でうつ病や発達障害、統合失調症などその他の精神疾患により、一人で生きていくのが困難な状況に追い込まれることがあります。こうした場合、知的障害とその他の精神障害を総合的に判断して障害年金の受け取りが可能です。

この場合は事後重症請求になることが多く、知的障害を理由にうつ病や発達障害を発症・悪化したことになります。いずれにしても、複数の精神疾患によって軽度知的障害者は障害年金を受け取れます。療育手帳の等級が軽かったとしても、障害年金の受給は可能なのです。

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