障害年金を受け取るためには、病歴・就労状況等申立書を提出しなければいけません。医師の診断書など、他にも必要となる提出書類はありますが、これらはあなたが記入する書類ではありません。一方で病歴・就労状況等申立書はあなた自身で用意する必要があります。

そこで、障害年金を申請するためには病歴・就労状況等申立書をどのように作成しなければいけないのか理解しておかなければいけません。

病歴・就労状況等申立書に記載するとき、当然ながら適切な書き方や注意点があります。正しい記載例をもとに理解しないと、障害年金を受け取るのが難しくなります。

それでは、どのように病歴・就労状況等申立書を作成すればいいのでしょうか。病歴・就労状況等申立書の書き方や注意点について、記載例をもとに解説していきます。

障害者本人が記載する病歴・就労状況等申立書

障害年金へ申請するとき、必ず提出しなければいけない書類が存在します。具体的には、以下の書類を提出する必要があります。

  • 受診状況等証明書
  • 医師の診断書
  • 病歴・就労状況等申立書

医師に記載してもらう書類が受診状況等証明書と診断書です。それに対して、あなたが記載する書類が病歴・就労状況等申立書です。

障害年金の受給で必須の書類になるため、こうした書類を完成させましょう。

医師の診断書だけでは障害の背景がわからない

それでは、なぜ書類として病歴・就労状況等申立書が必要になるのでしょうか。これは、医師の診断書だけでは障害をもつようになった背景がわからないからです。以下は医師の診断書の一部ですが、このように日常生活状況を記載する欄は存在します。

ただ記載できるスペースは少なく、「病状の変化はどのような経過をたどったのか」「家族または第三者による、どのような助けが必要だったのか」などがわかりません。そこで、病歴・就労状況等申立書を仕上げるのです。

病歴・就労状況等申立書はあなた自身が記すことになるので自己申告になります。初診日から現在までの詳細を記すことによって、なぜ障害をもつようになったのか記しましょう。

病歴・就労状況等申立書の書き方・注意点

病歴・就労状況等申立書は適当に記載していいわけではありません。初診日を記載する項目がありますし、医師の診断書との整合性を取れている必要があります。そのため、受診状況等証明書や医師の診断書を集めた後に病歴・就労状況等申立書の準備を開始すると効率的です。

・必ずパソコンを利用して書類を作成する

このとき手書きではなく、必ずパソコンを利用しましょう。病歴・就労状況等申立書は何度も内容を修正するのが基本です。そのたびに手書き文書を修正したり、最初から書き直したりすると多くの時間が必要になります。

また、障害年金を審査する側にしても手書きは読みにくいです。そこで容易に修正でき、さらに審査側にとっても読みやすいパソコン入力にしましょう。

・障害に関係ある内容を記し、事実のみを記載する

また、障害に関係ある内容だけを記します。例えばうつ病で障害年金を申請するとき、「いじめ・パワハラがあったときの様子」「働けなくてお金に困っている」などを記しても審査とは関係ないです。そうではなく、なぜうつ病を発症するようになったのかを含め、現状までの病状の経過を含めた、障害との関係が重要になります。

なお当然ながら、ウソを記すのはやめましょう。病歴・就労状況等申立書に記されている内容について、前述の通り医師の診断書との整合性を取れている必要があります。そのため何でもいいから記載するのではなく、受診状況等証明書と診断書を確認しながら内容を仕上げましょう。

傷病名・発病日・初診日は診断書の通りにする

まず、病歴・就労状況等申立書では傷病名・発病日・初診日を記載することになります。

診断書に記載されている内容と同じ傷病名を病歴・就労状況等申立書に記載しましょう。「糖尿病性腎症」「知的障害」「うつ病」「統合失調症」などの病名を記します。

また診断書を確認すれば、傷病名だけでなく発病日と初診日も記載されていることに気づきます。

そこで、診断書と同じ内容を病歴・就労状況等申立書の発病日・初診日に記します。なお、日付は和暦でも西暦でもいいです。

医療機関ごとに記載し、通院していない期間も記す

次に、医療機関ごとに病歴状況を記載しましょう。例えば、以下のような状況だとします。

  1. A病院(初診)
  2. B病院(2番目)
  3. 通院なし
  4. Cクリニック(3番目)

この場合、以下のように記載することになります。

初診日はA病院での「20〇〇年4月1日」です。そのため、A病院には「20〇〇年4月1日から」と記載します。

また次のB病院の最初の来院日は「20△△年6月20日」であるため、A病院には「20△△年6月19日まで」となります。B病院の一日前の日付を記すことで、A病院とB病院を連続して受診していることがわかります。

なおB病院のあとに医療機関を受診していない場合、通院なしの期間を記すことになります。B病院の最後の受診日が「20□□7月9日」の場合、通院なしの欄は次の日である「20□□7月10日」と記します。

またCクリニックに通院し始めた日が「20●●年9月30日」の場合、通院なしの最後の日は1日前の「20●●年9月29日」です。このように、病院ごと、通院していない期間ごとに医療機関名や日付を入力しましょう。

病歴状況では当時の詳細を記載する

次に、医療機関を受診していたときや通院を休んでいたときの状況を記載することになります。例えば、以下のような内容を記すことになります。

  • 発症日当時(初診日当時)の様子
  • どのような治療が開始されたのか
  • 症状の経過はどうだったか
  • 日常生活の変化や就労状況
  • 転院の理由

また通院をしていなかった時期については、以下のような内容を記します。

  • 医療機関を受診しなかった理由
  • 自覚症状や日常生活・就労状況の変化

医療機関を受診しなかった理由としては、「自己判断」「家族のサポートがなかった」などさまざまですが、こうした内容を記すことになります。例えば、以下は統合失調症での記入例です。

実際には「薬物治療がどのように変化していったのか」「幻覚や妄想、抑うつなどの症状はどう変化したのか」「日常生活・就労状況の変化はどうか」をより詳細に記すことになります。

また身体障害者の場合、病気・事故によって症状がどのように変化したのか記します。知的障害者の場合、生まれた日が初診日であるため、出生時から現在までを記すことになります。

なお当然ながら、人によって症状の程度が違えば、病気の種類も異なります。例えばうつ病の人が初診の医療機関について記すにしても、「倦怠感が続いたので受診した」かもしれないし、「家族からDVが続いた」ことが原因で受診したのかもしれません。いずれにしても、本人に起こった状況を記す必要があります。

このとき、内容が簡潔すぎると日常生活の困難さがわかりません。一方で長すぎる文章は審査員が読み飛ばします。そのため、記載内容を熟慮する必要があります。

参考までに、精神障害では「障害年金の認定医が一人分の診断書や申立書をチェックする時間は1分」といわれています。そのため、簡潔すぎるのは当然として、なぜ長文すぎる申立書が微妙かもわかります。また、なぜ手書きではなくパソコン入力が優れているのかも同時にわかります。

同じ医療機関であっても、5年以下で区切る

なお通常、受診した医療機関ごとに区切って記すことになるものの、5年以下で区切る必要があります。そのため、例えばA病院で8年間を受診していた場合、以下のように区切る必要があります。

  • A病院(5年間)
  • A病院(3年間)

また幼少期から現在までを記す場合、受診した病院ごとに加えて、以下の就学状況ごとに区切るといいです。

  • 出生~入園前
  • 幼稚園・保育園
  • 小学校低学年
  • 小学校高学年
  • 中学校
  • 高校
  • 大学・専門学校

つまり、3年ごとや4年ごとの区切りであっても問題ありません。要は、読み手(審査員)にとって理解しやすい内容にしましょう。

・枠が足りない場合、続紙を利用する

なお多くの医療機関を受診していたり、初診日から長い年月が経過していたりする場合、枠が足りなくなります。その場合、以下の用紙を利用しましょう。

日本年金機構のサイトから続紙をダウンロードできるため、必要に応じて付け加えましょう。

認定日請求と事後重症請求で異なる裏面の書き方

ここまで、病歴・就労状況等申立書の表面に関する書き方・記載例について解説してきました。それでは、裏面はどのように記載すればいいのでしょうか。

裏面について、以下のどれに該当するのかによって書き方が違います。

  • 障害認定日から1年未満に請求する
  • 障害認定日から1年以上、経過して請求する
  • 事後重症請求をする

認定日とは、初診日から1年6か月が経過した日になります。病気・ケガの種類によっては手術日(症状固定した日)になることもありますが、多くは初診日から1年6か月が経過した日が認定日となります。

・障害認定日から1年未満に請求する

まず、認定日から1年未満のときに請求する場面を学びましょう。

この場合、裏面の「1. 障害認定日(〇〇年〇月〇日)頃の状況」に記入します。「2. 現在(請求日頃)の状況」にある「就労状況」「日常生活状況」は記載不要です。

・障害認定日から1年以上、経過して請求する

それに対して、認定日から1年以上が経過した段階で障害年金へ請求する人もいます。

この場合、「1. 障害認定日(〇〇年〇月〇日)頃の状況」と「2. 現在(請求日頃)の状況」の両方を記載しましょう。

・事後重症請求をする

ただ、すべての人で「認定日に障害年金を請求できるほどの重症度」とは限りません。糖尿病のように、時間経過と共に症状悪化していくケースはよくあります。この場合、認定日よりも後になって症状悪化した結果、障害年金を請求することになり、これを事後重症請求といいます。

この場合、「1. 障害認定日(〇〇年〇月〇日)頃の状況」を無視して、「2. 現在(請求日頃)の状況」のみ記載しましょう。

どのタイミングで請求するのかによって病歴・就労状況等申立書の記載方法が異なります。そこで、3つの記載方法の中で、どのやり方で裏面を記入すればいいのか確認しましょう。

就労状況と日常生活状況を記載する

なお、裏面では就労状況と日常生活状況を記載することになります。「1. 障害認定日(〇〇年〇月〇日)頃の状況」と「2. 現在(請求日頃)の状況」は書き方が同じであるため、同じ手順で記載するといいです。

・就労状況

障害認定日(初診日から1年6か月が経過した日)の周辺について、どのような就労状況だったのかを記します。働いていた場合、「就労していた場合」に記入します。このとき、以下の内容を記入しましょう。

  • 職種
  • 通勤方法
  • 出勤日数
  • 身体の調子

職種には、具体的な職業を記載します。例えば証券会社の営業職、工事現場の土木作業員、カフェでの接客、運送業の経理などになります。例えば証券会社勤務であっても営業や経理・総務・人事、システム開発、マーケティングなどと、大きく仕事内容が異なります。

また、通勤方法は徒歩・自転車・車・電車・バスなどになります。なお他の人の助けがあった場合、「車(親に送迎をしてもらっていた)」などのように記すといいです。また、通勤時間は片道の時間となります。

出勤日数については、障害認定日の前月と前々月について、月に何日の出勤があったのか記載しましょう。

それに加えて、障害年金の申請に関わるケガ・病気(障害)によって、仕事中や仕事が終わったとき身体にどのような状態があったのか記すことになります。例えばうつ病や双極性障害であれば、「仕事が忙しいときにミスを連発してしまい、怒られると気分の落ち込みが激しくなる」などです。

一方で働いていない場合、「就労していなかった場合」に記載しましょう。

休職していた理由に丸を付けることになりますが、該当する理由が複数ある場合、複数の丸を加えて問題ありません。

・日常生活状況

また、日常生活状況についても記載することになります。自己申告にはなりますが、着替えやトイレ、食事などの項目について、以下のように記します。

ひとまず、これらの項目を埋めることによって病歴・就労状況等申立書はほぼ完成となります。

保有する障害者手帳や請求者の情報を記す

最後に、保有する障害者手帳の情報を記入しましょう。障害者手帳なしであっても、障害年金の申し込みは可能です。ただ障害者の場合、多くの人で障害者手帳を既に保有しているため、障害者手帳をもつ場合はその情報を記すのです。

身体障害者手帳は「身」、精神障害者保健福祉手帳は「精」、療育手帳は「療」に丸をします。なお、療育手帳は自治体によって愛の手帳と呼ばれることもあります。この場合、「他」に記しましょう。

さらに、障害者手帳の取得年月日と傷病名を記します。人によっては複数種類の障害者手帳を保有することもあり、この場合は一つではなく、二つの障害者手帳の情報を記しましょう。

また、「書類の提出日」「請求者(現住所、氏名、電話番号)」を記入する必要があります。障害者本人以外が代筆した場合、代筆者(氏名、続柄)の情報も必要です。

特別な理由がない限り、社労士へ依頼する

ここまでの内容を仕上げることになります。当然、最初から完ぺきな内容を作り上げることはできません。また、医師の診断書など必要情報がなければ記入できない内容も多いです。

障害年金へ申請するための資料を用意するとき、面倒な書類の一つが病歴・就労状況等申立書です。そこで特別な理由がない限り、社労士などの専門家へ作成を依頼しましょう。

専門家を利用すれば、面倒な作業の多くを代行してくれます。また、医師の診断書や病歴・就労状況等申立書の内容が微妙だと、障害年金の審査落ちになったり、低い等級になったりします。

さらには、書類作成に時間がかかって申請タイミングが遅くなると、その分だけ受け取れるお金が少なくなるケースがひんぱんにあります。当然、不備があると書類の作り直しになるため、その分だけ書類の申請が遅くなります。

そのため、「障害年金の2か月分」などの費用が社労士への成果報酬で必要とはいっても、社労士などの専門家を利用するほうが結果的に高い等級になり、もらえる障害年金が多くなるのは普通です。また、書類を素早く完成させることで申請時期が早くなります。そのため、基本的には障害年金専門の社労士に頼るといいです。

病歴・就労状況等申立書の書き方を記入例から学ぶ

何を書けばいいのかわかりにくいのが病歴・就労状況等申立書です。障害者側が用意しなければいけない書類であるため、多くの人にとって病歴・就労状況等申立書の作成は面倒です。

そこで、記入例を提示しながら実際の書き方を解説してきました。人によってうつ病や発達障害、てんかん、肢体不自由、知的障害など障害の内容が異なります。また障害の程度が違えば、障害を生じた原因・経過も異なります。

これらについては、あなた独自の内容に仕上げなければいけません。そこで、ここまで解説した注意点を元にして書類を仕上げましょう。

なお特別な理由がない限り、社労士を活用することになります。専門家の力を借りながら、病歴・就労状況等申立書を仕上げるといいです。

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