発達障害としてはADHDやASD(アスペルガー症候群、自閉症)、学習障害(LD)などがあります。こうした人の中には、障害者手帳の取得について症状が軽いグレーゾーンの人がいます。

発達障害の傾向はあるものの、明確な診断名とはならないため、こうした人たちは障害者手帳を保有できません。ただ絶対に障害者手帳を取得できないわけではなく、状況と方法によってはグレーゾーンの人であっても精神障害者保健福祉手帳を取得できます。

障害者手帳を利用できる場合、失業手当の受給内容が手厚くなり、障害者向けの公的サービスも利用できます。そのため、メリットが非常に大きいです。

それでは、グレーゾーンの発達障害の人はどのように障害者手帳を入手すればいいのでしょうか。グレーゾーンの人が障害者手帳によって障害者向けサービスを利用する手順を解説していきます。

診断名のないグレーゾーンは障害者手帳の対象外

障害者であると認められるためには、障害者手帳を保有する必要があります。知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者は障害者手帳の保有が可能です。

  • 身体障害者手帳:体の機能に障害のある人
  • 療育手帳:知的障害のある人
  • 精神障害者保健福祉手帳:精神障害のある人

この中でも、発達障害では精神障害者保健福祉手帳を保有することになります。

ただADHDやアスペルガー症候群、自閉症、学習障害について明確な診断名が付かないグレーゾーンの場合、そもそも診断名が存在しないので障害者手帳を保有することはできません。

なお知的障害者は生まれつきであり、発達障害とは意味が異なります。知的障害と発達障害の両方をもつことはよくあるものの、グレーゾーンの場合は知的障害というよりも発達障害に分類されるのです。

何となく傾向があるだけでは、障害者ではない理由

実際のところ、ADHDや学習障害であってもビジネスで成功している人はたくさんいますし、アスペルガー症候群であっても人と接する機会が少ない仕事に就いて問題なく活躍している会社員などはたくさんいます。大学教授で優れた成果をたくさん生み出している発達障害の人も多いです。

こうなると、たとえ発達障害の傾向はあっても中身は健常者と同じと考えることができます。これが、グレーゾーンの人で障害者手帳を保有できない理由です。何となく傾向があるだけの状態というのは、障害者とはいえないのです。

本当の障害者というのは、一人で生きていくのが困難な状況を指します。

  • 社会的な手続きが難しい
  • 他人とのコミュニケーションに欠陥がある
  • 興味が限定的
  • 感覚刺激に対して過敏

例えば、これらの症状が強い場合は発達障害となります。健常者であっても、興味が特定分野に偏るのは普通ですが、より極端になるのが自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害であり、多少の傾向がある状態では精神障害者と認められないのです。

大人で会社を辞める場面など、ようやく診断名が付くことがある

なおグレーゾーンの人では、子供のときは「周囲の人に対して、何となく生きづらい」と思って過ごすことになるものの、大人になって発達障害に悩まされることがよくあります。

大人では社会に出て働くことになりますが、たとえグレーゾーンであっても「周囲の人とのコミュニケーションが難しい」などの状況はよくあります。こうなると、いまの会社に居づらくなって辞め、大人になってようやくADHDやアスペルガー症候群などの診断名が付くこともあります。

障害者というのは、日常生活で明らかに困難な状況に陥っている人を指します。グレーゾーンによってそれまで診断名がなかったとしても、「会社で働き続けるのが難しい」となると、明らかに日常生活が困難とわかります。

またストレスの状況も発達障害の症状で重要であり、症状が強く出ることで社会活動が困難になっているのかもしれません。こうした明らかに生活が困難な状況に陥っているのであれば、グレーゾーンであっても診断名が付くのは普通です。

退職に伴い、急いで精神障害者保健福祉手帳の準備をする

「退職が必要な状況まで追い込まれている」「学業を続けられない」など、明らかに困難な状況に陥っている場合、障害者手帳を入手できるのは普通です。

この場合、発達障害では精神障害者保健福祉手帳を取得することになります。医師の診断から6か月以上が経過すると、精神障害者保健福祉手帳へ申請できるようになります。

なお発達障害によって、うつ病など他の精神疾患を併発するのも普通です。そのため発達障害に加えて、他の精神疾患によって障害者手帳を入手するのは問題ありません。

・失業保険の給付は障害者手帳で手厚くなる

軽度の障害者で精神障害者保健福祉手帳が効力を発揮するのは、大人では失業保険を申請する場面です。10年未満の勤続では、健常者だと失業手当を受け取れるのは90日間です。

一方で障害者手帳を保有している場合、300日の受給日数になります(45歳以上は360日の受給日数)。

雇用期間1年未満2~9年10~19年20年以上
一般受給者90日120日150日
障害者:45歳未満150日300日
障害者:45~64歳360日

障害者手帳があるかどうかの違いですが、失業保険の内容が大幅に改善されます。そのため精神障害者保健福祉手帳3級と最も軽い等級でもいいので、失業保険の申請時に障害者手帳があるのは重要です。

医師の主観が大きく、医師を変えると良い結果になることは多い

ただ発達障害を含め、精神疾患の診断については医師による主観に大きく依存します。精神科医によっては、「本人の性格であり診断名を記載したくない」と考える医師もいます。

しかし、グレーゾーンではあっても発達障害やストレスによって会社などで働くのが困難であり、明らかに日常生活で支障が出ているにも関わらず、診断名が付かず障害者手帳を保有できないのは明らかに損失です。

その場合、仕方ないので医師を変えましょう。あなたの症状に対して、きちんと向き合ってくれる医師を発見できるまで、さまざまなクリニックを受診するのです。ウソの内容ではダメですが、症状によって本当に困っているなら何も問題ありません。

その後、診断名を出してくれた医師に診断書作成を依頼することで障害者手帳を手に入れます。参考までに、以下は精神障害者保健福祉手帳へ申請するための診断書です。

このように「アパートなどで一人暮らしをしている」と仮定するとき、他人との意思疎通や身辺の清潔保持が可能かどうかなどの結果を医師によって記載されることになります。

発達障害の場合、食事は問題なく可能です。ただ他人との対人関係や清潔保持などが困難になっているケースがよくあります。そこで、こうした内容を診断書に反映してもらいましょう。

就労移行支援や障害者グループホームの利用を検討する

なお障害者の場合、障害者向けの公的サービスを利用できます。例えば、障害者が一般企業へ就職するのを支援するサービスに就労移行支援があります。

障害者手帳なしでも就労移行支援は利用できます。ただ障害者手帳があれば、障害者雇用の枠にて応募できます。一般枠で挑戦してもいいですが、障害者枠を利用することで「グレーゾーンの発達障害をもっている」ことを考慮してもらえます。

また働いていない場合、住む場所を確保しなければいけません。実家に住めるなら問題ないですが、そうでない人は多いです。また軽度であっても、発達障害をもつ場合は社会復帰に通常よりも長期の時間が必要になります。

この場合、超格安にて住める障害者グループホームを利用しても問題ありません。シェアハウス形式にて、障害者が共同生活を送る施設が障害者グループホームです。

社会復帰するまで、一時的に障害者グループホームを利用する人はたくさんいます。低所得者だと家賃は国や自治体から補助が出るため、実質的に食費や水道光熱費などの実費負担のみとなるのが障害者グループホームです。

障害者手帳を入手できる場合、障害者グループホームについても問題なく利用できます。そこで、障害者向けサービスを利用することで、将来の社会復帰に備えることもできます。

グレーゾーンでも場合によっては障害者手帳を入手できる

発達障害のグレーゾーンの場合、診断名は存在せず、ADHDやアスペルガー症候群、自閉症、学習障害(LD)などの兆候が見られるだけとなります。こうしたグレーゾーンの場合、障害者手帳を入手することはできません。

障害者に対する支援というのは、日常生活で明らかに困難な状況に陥っている人が対象となります。実際、軽度の発達障害であっても会社員として活躍している人はいますし、経営者で大成功している人もいます。発達障害の兆候はあっても、こうした人にとって障害者手帳は不要です。

ただ発達障害の傾向があることにより、実際に不利益を受けることはよくあります。例えば辞職に追い込まれたときなど、こうした場合はストレスによって発達障害の症状が強くなっているかもしれません。また実際のところ社会復帰が難しくなっているため、この場合は発達障害として障害者手帳を入手するのは可能です。

このとき、就労移行支援や障害者グループホームなど障害者向けの公的サービスの利用も検討しましょう。障害者向けのサービスをうまく活用すれば、グレーゾーンの人は社会復帰しやすくなります。

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家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。

障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。

ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。

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