精神障害者の場合、会社員・公務員として働いている人は傷病手当金を利用できます。これはADHDやASDなどの発達障害も同様です。
ただADHDやASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)で傷病手当金を得るには条件があります。精神障害者だからといって、会社を連続して休むことで無条件で傷病手当金の知将になるわけではありません。
それでは、発達障害の人はどのように傷病手当金を活用すればいいのでしょうか。ADHDやASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)での傷病手当金の利用法を解説していきます。
もくじ
発達障害が理由による傷病手当金は厳しい
業務外のケガや病気が原因で傷病手当金を得る場合、傷病は何でもいいです。ただ、発達障害が理由による傷病手当金は厳しいです。理由としては、AHDHやASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)などの発達障害は生まれつきだからです。
生まれつきである以上、「プライベートで新たに病気を発症し、十分に働けなくなった」となるのは無理があります。
もちろん、周囲の環境や治療によって発達障害の症状が和らいだり、反対に悪化したりすることはあるかもしれません。ただ、基本的には生まれつきの精神疾患であるため、発達障害のみを理由として傷病手当金を得るのは厳しいです。
その他の精神疾患で傷病手当金を得る
ただADHDや自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群の場合、健常者よりも生きづらいです。そのため、発達障害を起点として別の精神疾患を発症することがよくあります。この場合、新たな精神疾患を発症することによる休業であるため、傷病手当金の対象になります。
ADHDやASD(自閉症、アスペルガー症候群)で最も一般的なパターンとしては、「職場での不適応によって心身の状態を崩してしまい、うつ病や適応障害となった」というケースです。
うつ病や適応障害では、思うように体が動かず、働けなくなります。この場合、発達障害を起点としているものの、うつ病や適応障害という新たな精神疾患が原因で働けなくなっているため、傷病手当金の対象になります。
なお、傷病手当金の申請では必ず事前に医療機関を受診しなければいけません。つまり、病院・クリニックを受診することで「うつ状態にある」という判断をもらう必要があるのです。こうして、うつ病や適応障害に関する初診日を作ります。
うつ病や適応障害によって心が疲弊している場合、医療機関の受診であっても多大なエネルギーが必要です。ただ、医療機関を受診しないと傷病手当金を利用できないため、可能な限り早く受診するといいです。
給料の3分の2という非常に大きな補助金が傷病手当金です。1年6か月にわたって傷病手当金を得られるものの、うつ状態が重くなりすぎたために病院を受診できないと、傷病手当金を得られる条件を満たせません。
他の補助金との併給はできない
なお傷病手当金は非常に高額な補助金であるため、他の補助金との併用はできません。他の補助金へ申請することはできるものの、支給額は調節されます。
傷病手当金に加えて他の補助金を併給できるとなると、働いていたときよりも得られるお金が大きくなります。これでは不都合であるため、併給調整になるというわけです。ただ傷病手当金の期限は1年6か月であるため、それ以降であれば他の補助金を活用できます。
もし発達障害に伴うその他の精神疾患(うつ病や適応障害、統合失調症など)の症状が重い場合、すぐの復帰は難しいです。そうしたとき、以下の補助金を検討するのが一般的です。
- 障害年金:働くのが難しい
- 失業保険:働ける状態まで回復
それぞれについて確認しましょう。
精神症状が長引く場合、障害年金を考える
うつ病や適応障害、統合失調症などの症状が長引く場合、1年6か月での復帰は難しいです。そうしたとき、障害年金を利用します。適応障害やパニック障害で障害年金の受給はできないものの、うつ病や統合失調症であれば可能です。
審査はあるものの、障害年金では受給期間が決まっているわけではありません。また傷病手当金を受け取っている人であれば、障害厚生年金として他の障害者よりも大きな障害年金を得られるようになります。
なお、障害年金の時間は非常に長い時間が必要です。そのため症状が重い場合、傷病手当金を受け取っている段階で早めに障害年金へ申請するといいです。
復帰が可能な場合、失業保険を活用する
また中には、ある程度まで症状が回復し、働きたいと考える人もいます。この場合、障害年金ではなく失業保険を活用しましょう。
事前に申請しておけば、失業保険の受給開始期間を先伸ばしにできます。そのため、傷病手当金の1年6か月が終わった後に失業手当を受け取れます。
また、障害者手帳の保有者であれば、健常者よりも長く失業手当を得られるようになります。以下のようになります。
雇用期間 | 1年未満 | 2~9年 | 10~19年 | 20年以上 |
一般受給者 | - | 90日 | 120日 | 150日 |
障害者:45歳未満 | 150日 | 300日 | ||
障害者:45~64歳 | 360日 |
このように、ほぼ1年ほど失業手当を利用できるため、傷病手当金と合わせると2年半ほどの受給期間になります。この間に次の就職先を見つけ、働き始めるといいです。
発達障害で傷病手当金は重要
生まれつきである以上、AHDHや自閉症、アスペルガーのみで傷病手当金を得るのは難しいです。事実、発達障害で働いている人は非常にたくさんいます。
一方でうつ病や適応障害、統合失調症など他の精神疾患を併発することもあります。こうした病気の症状が重い場合、働くのは現実的に厳しいです。その場合、傷病手当金へ申請することで高額な給付金を受け取れるようになります。
なお1年6か月で足りない場合、「その後に働けるかどうか」を考慮して、障害年金または失業保険を活用しましょう。傷病手当金に加えて、こうした補助金の利用まで考えると、発達障害が原因で他の精神疾患を発症しても生活に困りにくくなります。
発達障害で傷病手当金を受け取るとき、事前に理解するべきことがあります。そこで、発達障害によって他の精神疾患を発症し、働けなくなった場合は早めに医療機関を受診して傷病手当金を活用しましょう。