兄弟姉妹の中に障害者をもつケースは珍しくありません。こうした知的障害者・精神障害者は通常、親が面倒をみることになります。

ただ親亡き後に、残された兄弟姉妹が障害者の面倒を見るとなると、正直なところ非常に面倒です。中には、「親の死後は障害のある兄弟を見捨てたい」と考える人もいるでしょう。

しかし、障害者を見捨てる必要はありません。障害者グループホームなどの施設は存在しますし、あなたがお金を出す必要もありません。もちろん、施設を何度も訪問しなくてもいいです。親の期待に応えなくても問題なく、これに罪悪感を覚える必要はありません。

最も重要なのは自分自身のことであり、障害をもつ兄弟の世話ではありません。そこで、親の死後での障害のある兄弟に対する考え方や対処法を解説していきます。

親亡き後に障害者の世話をしたくないのは普通

親であれば、子がたとえ重度の知的障害者や精神障害者であっても、自分の子供の世話をするのが普通です。そのため親が生きており、さらには元気な場合、そこまで大きな問題にはなりません。

一方、親の死後や親が高齢すぎて動けなくなってしまった場合、障害をもつ兄弟についてもある程度の年齢になっています。健常者の兄弟とはいえ、こうした知的障害者や精神障害者のお世話をするのは健常者にとって非常に大変です。

また、兄弟とはいえ当然ながら自分の子供ではありません。さらに兄弟の場合、仲が良くて近所に住んでいるケースを除き、健常者同士であっても「正月しか会わない」などは普通です。

そのように考えると、障害をもつ兄弟のためにあなたの労力やお金を使いたくないと考えるのは普通です。そのため、「障害のある兄弟を将来は見捨てたい」と思うこと自体に罪はありません。

見捨てる必要はなく、施設を利用すればいい

なお「見捨てる」というと、表現方法がきついです。ただ実際のところ、親亡き後に障害をもつ兄弟を見捨てる必要はありません。施設を利用すればいいからです。

障害者支援施設や障害者グループホームを利用すれば、専門の介護職員がすべての面倒を見てくれます。しかも、彼らにとってはそれが仕事です。そのため、ビジネスのために喜んで障害者の世話をしてくれます。

またこうした施設では、障害者が共同生活を送っています。そのため、施設は障害者用に作られています。

そもそも親であっても、子供に障害がある場合、自分たちですべての面倒を見るのは大変なのでこうした施設に長年預けているのは普通です。こうした事実を考えると、見捨てる必要はなく、ほかの人が利用しているのと同じように「障害者を施設に預ければいい」とわかります。

障害者本人にとっても、施設のほうが規則正しい生活を送ることができます。また、専門スタッフが24時間体制で管理してくれます。あなたが面倒をみるよりも状況が良いのは間違いないため、誰も損をしません。

扶養義務はなく、何度も会いに行く必要はない

そもそも、兄弟姉妹は互いについて扶養義務はありません。より厳密にいうと、民法上では「兄弟姉妹には扶養義務がある」と定められています。ただ民法では、「自己の家庭がギリギリの生活なら、自分を犠牲にしてまで扶養しなくてもいい」とも記されています。

実際のところ、ほとんどの人が自分の生活だけで精一杯です。そのため現実的には、障害をもつ兄弟姉妹に対しての扶養義務はほぼ存在しないと考えて問題ありません。自分の子供や親の世話とは異なり、兄弟の面倒について深く考える必要はありません。

そのため施設に障害をもつ兄弟を入れた後、保護者会へ出席したり、イベントへ出席したりしなくてもいいです。もちろん、何度も介護施設の職員と面談する必要もありません。施設によってはイベントが多いケースはあるものの、これらを無視してもいいのです。

参考までに、以下は障害者グループホームで近くの公園まで出かけたときの様子です。

ただ親亡き後、障害をもつ兄弟のためにさまざまな面倒な作業をしたり、わざわざ帰省したりする必要性はありません。そうしたことをしていれば、かえってあなた自身が不幸になります。また、何のために障害者支援施設や障害者グループホームを利用しているのかわかりません。

障害をもつ兄弟に会いに行くにしても、多くて年2~3回で十分です。人によってはまったく会わない人もたくさんいるため、やりたくないことは断ればいいです。

「親の死後に障害をもつ兄弟の面倒を見てほしい」という親の期待に応えなくても問題なく、これに罪悪感を覚える必要はありません。自分の幸せを犠牲にしてまで、障害をもつ兄弟の世話をし続けるのは明らかにおかしいからです。

あなたのお金の支払いは不要であり、すべて補助でまかなえる

なおこうした施設を利用するにしても、お金の支払いを心配する必要はありません。すべて補助によってまかなうことができるからです。

障害者の場合、以下の種類のお金を得ることができます。

  • 障害年金
  • 生活保護費
  • 就労による賃金
  • 障害者への公的手当

条件を満たしたうえで申請すれば、あらゆる知的障害者や精神障害者で障害年金を得ることができます。また知的障害者や精神障害者では、所得が非常に低いケースが多いです。この場合、障害年金に加えて生活保護を申請できます。

また施設を利用すれば、就労による賃金を得ることができます。例えば障害者グループホームでは、訓練の意味も含めてほとんどの障害者が働いています。重度の障害者であっても働くことで賃金を得られるのです。

こうした制度を利用すれば、大きなプラスにはならないものの、合計収支がマイナスになることもありません。あなたが施設に対してお金を支払う必要はないため、お金の面では安心です。

なお、障害者グループホームなどの施設にいま入っていないにしても、方法によっては簡単に入所できます。特に、障害が大きい人ほど入所は簡単です。もちろん「あなたの住んでいる家の近くでなければいけない」などの条件を加えると施設の数が限られるので難しいですが、そうでない場合は簡単に施設へ入所可能なのです。

親の死後であれば、「障害をもつ兄弟のために何度も施設へ足を運び、あなたが面会する」わけではありません。むしろ、まったく会わないのも普通です。そう考えると、障害をもつ兄弟が入所する施設を特定の地域に限定する意味はなく、ある程度離れた場所であっても問題ない場合、障害者施設への入所は簡単です。

家族信託により、財産管理を行う

なお障害をもつ兄弟の面倒をみないとはいっても、家族信託を事前に設定してもらい、障害をもつ兄弟に代わって財産管理を行うくらいであれば特に問題ないと思います。

障害が軽度であり、自分で金銭管理ができたり判断能力があったりする場合、特に問題ありません。ただ、特に重度の知的障害や精神障害の場合、本人の判断能力はありません。

この場合、「障害をもつ兄弟が相続した財産」は完全に凍結されてしまいます。本人でなければ銀行口座を使えないものの、本人の判断能力がないのでお金を引き出せなくなるのです。

そこで、事前に家族信託を設定しておきましょう。例えば健常者の長男が受託者となり、親の死後に障害をもつ妹のために財産管理できるようにしておくのです。

こうした財産管理であれば、特に大きな労力は必要ないですし、あなたが遠く離れた場所に住んでいたとしても問題ありません。

なお場合によっては、弁護士や司法書士などの専門家に成年後見人を依頼して、彼らに金銭管理をお願いするという方法もあります。ただこの場合、障害者が死亡するまで月2~5万円と非常に高額な費用が発生するため、これに納得できる場合のみ専門家へ依頼することが可能です。

インセンティブを設定してもらい、障害者の管理を行う

なお家族信託によって障害をもつ兄弟の金銭管理や契約の代行をするとはいっても、ある程度の労力がかかるのは仕方がありません。何度も施設を出向く必要はないですし、むしろまったく会わなくてもいいものの、お金の管理には労力が必要です。

そこで、ある程度のインセンティブを設けてもらうのは問題ありません。例えば家族信託では、複数世代にわたって受益者(財産の利益を得る人)を指定できます。

財産は現金や生命保険、不動産などさまざまですが、いずれにしてもあらゆる資産を家族信託で指定できます。

そこで親亡き後に、あなたが障害をもつ兄弟の金銭管理や契約の代行を行うものの、障害者が死亡した後、あなた(または、あなたの子供)が財産を引き継ぐように設定しておくのです。これであれば、無償での労働ではなくなります。

兄弟という理由だけで、無償労働をする必要はありません。そのため、こうしたインセンティブは重要です。家族信託は自由度の高い契約であるため、親の死後に備えていまのうちに準備をしておくといいです。

親亡き後に兄弟姉妹が世話をしないのは普通

兄弟は血がつながっているものの、大人になると互いに疎遠になるのは普通です。このとき兄弟に障害者がいる場合、「面倒を見たくないので将来は見捨てる」と考えるのは珍しくありません。

ただ実際には、見捨てる必要はありません。障害者グループホームなどの施設に入所さえすれば、後はまったく会わなくても問題ありません。お金は障害年金などの仕組みがありますし、障害者のお金を利用して彼らは生活できます。

施設入所も方法によっては簡単です。多くの人は方法を間違えているため、「施設は常に満席」と考えがちですが、障害者であればすぐに入所可能です。

親の死後に障害をもつ兄弟とほぼ会わないとはいっても、見捨てるわけではなく、障害者は施設に入って生活しているので何も問題ありません。場合によっては、家族信託によって遠隔で金銭管理のみを代行してもいいです。こうした事態に罪悪感をもつ必要はないため、自分の負担のないように障害者の親亡き後問題に対処しましょう。

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