学生のとき、返済が必要な奨学金を利用して進学していた人はたくさんいます。ただ、その後に精神障害や身体障害などにより、障害者となってしまって低収入になるケースがあります。

この場合、体や脳の障害によって就労困難に陥り、物理的にすべての奨学金を返済するのが難しいです。こうしたケースでは、本来は支払わなければいけない奨学金を免除してもらうことができます。全額や半額など、お金の返済が不要になるのです。

ただ当然ながら、奨学金の返済免除には適切な流れがあります。事前に返済猶予を申請しており、医師による診断が必要になります。

すべての障害者にとって、新たな障害に伴う奨学金の免除は重要です。ここでは、奨学金の返済免除について解説していきます。

奨学金の免除が可能になる条件

返済が必要となる奨学金を利用する人は多く、奨学金は実質的な借金です。ただ一般的な借金とは異なり、障害者になった場合は返済金額の減額(免除)が可能になります。そのため、該当する人は積極的に利用しなければいけません。

奨学金は「独立行政法人 日本学生支援機構」が取り扱っており、以下の場合に奨学金の返済免除が可能です。

  • 本人が死亡し、返済ができなくなった
  • 精神疾患や身体障害により、労働が困難になって返済できなくなった

これが、後天的に精神障害者や身体障害者になってしまった場合、奨学金の返済免除が可能となる理由です。

精神障害・身体障害の場合は申請するべき

精神障害者や身体障害者の場合、障害者になってしまった後は長年、低収入となります。そのため、こうした救済措置があるのです。

また障害者であれば、障害者手帳を保有することになります。以下が障害者手帳の種類です。

  • 身体障害者手帳:体の機能に障害のある人
  • 療育手帳:知的障害のある人
  • 精神障害者保健福祉手帳:精神障害のある人

身体障害者や難病患者の場合、身体障害者手帳を申請します。一方で統合失調症やうつ病、不安障害・パニック障害、発達障害の場合は精神障害者保健福祉手帳を申請します。

重要なのは、身体障害のような明らかな障害ではなく、統合失調症やうつ病、不安障害・パニック障害、発達障害のような、ありふれた精神障害であっても利用できる事実です。精神障害で低収入の人は多いため、障害者手帳を保有しているのであれば問題なく申請可能です。

障害者手帳は奨学金の返済免除で必要書類に入っていないものの、こうした手帳をもっているのであれば障害者であることには変わりないため、積極的に免除の申請をすればいいです。

少なくとも1~2年以上の返還猶予の期間が必要

ただ、障害者手帳を保有しているにしても、いきなり奨学金の返済免除は受け入れてくれません。申請をするためには、少なくとも1~2年以上の返済猶予(または減額返済)をしている必要があります。

奨学金の返済猶予の基準は以下になります。

  • 給与所得のある人:年収300万円以下
  • 給与所得以外(フリーランスなど):年収200万円以下

返済猶予(または減額返済)をしても、返済しなければいけない借金が据え置かれるだけであり、必要な返済総額は変わりません。ただ奨学金の返済免除を申請するため、まずは返済猶予の申請をしましょう。

どのような症状で申請可能なのか

それでは数年の返済猶予期間を経た後、どのような症状であれば返済免除を申請可能なのでしょうか。日本学生支援機構が公開している資料では以下のようになっています。

身体障害者であれば、具体的でわかりやすいです。一方で統合失調症やうつ病、不安障害・パニック障害、発達障害などの精神障害者の場合、「病気によって労働能力が制限されている」と非常にあいまいな表現です。

ただいずれにしても、精神障害によって就労困難な状況に陥っているのであれば申請可能です。そのため会社で働いておらず、自宅や障害者グループホーム、病院などで療養している状態であれば精神障害者は申請可能です。

必要書類や手順、免除の金額

それでは、奨学金の返済免除を申請するときにどのような書類が必要になるのでしょうか。以下の書類を用意する必要があります。

  • 日本学生支援機構が規定する書類(奨学金返還免除願
  • 収入証明書:所得証明書や収入・所得金額が明記された課税証明書
  • 医師による診断書

奨学金返還免除願については、日本学生支援機構へ問い合わせるといいです。それに加えて、収入証明書と医師による診断書を用意しましょう。これらの書類を提出したあと、審査となります。

審査の結果として減額金額が決定されますが、例えば以下のようになります。

  • 全額免除(100%免除)
  • 75%免除
  • 50%免除

どれだけの金額が免除になるのかは障害の程度や審査内容によって変わるので一概にはいえませんが、それでも数百万円ほどの奨学金が残っていても大幅減額できるので優れています。

前年が低所得者である必要がある

なお当然ながら、前年の所得が低くなければ審査に通るのは難しいです。返済猶予(または減額返済)をしているとはいっても、年収300万円ほどの人はたくさんいます。そのため、より低年収であるのが望ましいです。

身体障害者や精神障害者で就労困難な状況なのであれば、そもそも収入はほとんどありません。障害年金だけで生きている場合、住民税の非課税世帯に該当します。また作業所などで働いているにしても、給料は非常に低いです。

住民税の非課税世帯に該当するためには、障害者だと給与収入が年で約200万円以下である必要があります。具体的には前年が年収204万4000円以下なのであれば住民税の非課税世帯に該当し、奨学金免除の申請をしても問題ありません(独身の場合)。

そこで、低所得者であることを証明するために役所で収入証明書または課税証明書を取り寄せましょう。年収300万円ほどではなく、底辺レベルの低所得者(住民税の非課税世帯)であることを証明するのです。

なおフリーランスなどの個人事業主では、住民税の非課税世帯の基準が異なります。給与所得ではないからです。ただ、この場合も同様に住民税の非課税世帯にするため、経費を多くするなどして年間利益を非常に低くする必要があります。

障害者の場合、フリーランスは年間利益が135万円以下で住民税の非課税世帯です(独身の場合)。そのため、これよりも低い年間利益にしましょう。

なお障害年金は非課税所得であるため、所得に障害年金を含める必要はありません。そのため十分に働けていない障害者の場合、ほぼ全員が住民税の非課税世帯に該当します。

「就労困難」による医師の診断書が必要

また、奨学金の免除でもう一つ重要になる書類が医師の診断書です。身体障害者であれば、機能回復の可能性がほぼゼロなのは疑いの余地がありません。一方で精神障害者の場合、病気の寛解は普通なので機能回復の余地は大きいです。

そこで特に統合失調症やうつ病、不安障害・パニック障害、発達障害の場合、過去の治療歴をもとに「治療を継続しているが回復がいかに困難であるか」を記載してもらう必要があります。また同時に「就労困難」であることの記載も重要です。

参考までに、以下が医師による記載が必要となる診断書です。

どのような書式でもいいのではなく、日本学生支援機構が指定する書式を利用して提出しなければいけません。医師に記載してもらう内容は以下になります。

  • 精神または身体障害の程度
  • 発症または受傷の原因
  • 現在までの経過(年月順に)
  • 現在の症状
  • 機能回復の可能性
  • その他の所見

これらを記載してもらうことになります。これまでの経過も記載してもらう必要があるため、いつも通院している医師へお願いしましょう。

また提出するとき、医師による記名押印をした後、病院の封筒に封入・密封した状態で提出しなければいけません。開封厳禁であり、開封があると「中身が改ざんされたのでは?」という疑念が発生するため、やり直しとなります。

奨学金の返済免除は時間がかかる

障害金の返済免除を申請するのは可能ですが、ある程度の時間がかかるとわかります。特に統合失調症やうつ病、不安障害・パニック障害、発達障害などの精神障害者では、症状固定の期間を考慮する必要があるのでより時間がかかります。

さらには、奨学金免除の基準を満たすために積極的に仕事をせず、住民税の非課税世帯に該当するほどの低年収で過ごさなければいけません。

そのためいま働いており、ある程度の収入をもつ人が「奨学金免除のために仕事を辞め、条件を満たす」のは現実的ではありません。あくまでも、実際に身体障害者や精神障害者になってしまい、仕事復帰が現実的に困難な人が利用しなければいけません。

また何年もほぼ無収入の状態で過ごす必要があるため、この間は実家または障害者グループホームを利用するのが一般的です。この方法であれば、障害年金だけでも不安なく生きていくことができます。

奨学金の免除は誰でも可能な方法ではありません。ただ、実際に精神または身体に障害を負ってしまって就労困難なのであれば、むしろ積極的に利用するほうがいいです。

奨学金の返済免除によって生活を楽にする

思いもよらずに病気の発症や事故によって障害者になってしまうケースがあります。この場合、まず奨学金の返済猶予を依頼しましょう。十分に働けていない場合、年間の所得基準は問題なく満たしていると思います。そうして数年後、奨学金の返済免除申請をしましょう。

障害者手帳の有無は奨学金免除の判断基準で重要はでありません。重要なのは前年の所得と医師による診断書です。

所得証明を提出する必要があり、住民税の非課税世帯に該当するほどの低年収であれば問題ありません。また医師による診断書では、これまでの経過を含めて記載されることになります。

奨学金がいくら免除されるのかは審査によって変わります。ただ全額免除でなくても、75%減額や50%減額でも非常に大きいお金であるため、実際に障害者で働くのが困難なのであれば積極的にこの制度を活用しましょう。

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