障害年金で重要な内容に遡及請求があります。過去にさかのぼって障害年金を要求するのが遡及請求です。過去数年分も含めて請求できるため、最初に受け取る金額は超高額になりやすいです。

障害年金を受け取る要件を満たしているにも関わらず、請求していない人はたくさんいます。こうした人の場合、積極的に遡及請求しなければいけません。

なお、一般的な請求方法に比べると遡及請求は少し難易度が高く、さらには診断書を2枚提出しなければいけません。行うべきことが通常よりも多くなり、その分だけ審査も時間がかかります。ただ遡及請求している人は多いため、きちんと行えば問題ありません。

それでは、障害者はどのようにして遡及請求すればいいのでしょうか。障害年金でさかのぼって請求する方法について解説していきます。

遡り請求により、過去の分を含めて取り戻す

障害年金を請求するとき、最も一般的な方法に認定日請求があります。初診日(障害となった傷病で初めて医療機関を受診した日)から1年6か月が経過する日を障害認定日といいます。障害認定日に達したら障害年金の請求ができるようになります。

障害認定日から1年以内に障害年金を請求する方法が認定日請求です。

一方、障害認定日に障害年金の請求が可能な状態であったものの、障害年金の書類を提出していない人もたくさんいます。「障害年金の制度を知らなかった」「書類集めが進まなかった」など、人によって理由は異なりますが、障害認定日から1年以上が経過して申請をするのです。

この場合が遡及請求であり、障害認定日から現在までの分を含めて障害年金を請求します。

障害認定日より前の請求はできないものの、遡及請求をすることで、「本来であればもらえていた障害年金」として大きなお金が振り込まれるというわけです。遡及請求で振り込まれるお金が数百万円になるのは普通であり、人によっては、1000万円超のお金になるケースもあります。

時効により、過去5年分までさかのぼれる

ただ遡及請求するにしても、障害年金には時効があります。具体的には、時効は5年です。つまり、遡り請求が可能なのは過去5年分までとなります。

障害認定日から5年が経過していないのであれば、少し時間的猶予をもって申請できます。一方で障害認定日から既に5年が経過している場合、できるだけ素早く申請手続きをしなければいけません。申請が遅れるほど、もらえるお金が少なくなるからです。

・専門の社労士を利用するといい

なお遡及請求は通常よりも書類作成が面倒であり、たとえ時間的猶予があったとしても、素人がすべての書類を集めるのは非常に大変です。そのため特別な理由がない限り、障害年金の申請を専門としている社労士に依頼しましょう。

社労士を利用することで素早く書類を用意できるようになります。また、有利な等級に認定されることで、もらえる障害年金が増えやすくなります。

診断書の提出は2枚となる

なお、遡及請求をする場合に提出する診断書は2枚です。以下の診断書が必要になります。

  • 障害認定日から3か月以内の診断書
  • 現在の状態を表す診断書

遡及請求をするためには、「障害認定日のときに、障害年金の申請基準を満たす障害を負っている」という状態でなければいけません。そのため現在の診断書だけでなく、障害認定日の周辺の障害状況を表す診断書が必要になるのです。

・可能な限りすぐに申請するべき

障害年金には時効があり、さらには障害認定日周辺の診断書が必要となるため、できるだけ早めに申請しましょう。

診断書を作成するためには、カルテが残っている必要があります。ただカルテの法的な保存期間は5年間であり、5年を過ぎると廃棄されるリスクがあります。カルテが存在しない場合、障害認定日時点の診断書を作成してもらうことはできません。

障害認定日から5年が過ぎていなかったとしても、できるだけ早めに遡及請求の準備をするべきなのは、診断書が1枚ではなく、2枚必要になることも関係しています。

・遡及請求できる障害者の条件

ここまでの内容を踏まえ、障害年金で遡及請求できる障害者の条件は以下のようになっています。

  • 「障害認定日から3か月以内の診断書」と「現在の診断書」を2枚提出
  • 2枚の診断書が両方とも障害認定基準を満たしている
  • 初診日に国民年金または厚生年金に加入し、保険料の納付要件を満たしている

初診日の前々月までの期間について、3分の2以上の期間で保険料を納めている場合、保険料の納付要件を満たすことになります。また65歳以上であっても、初診日が65歳未満であれば遡及請求が可能です。

請求は難しい?傷病によって異なる難易度

それでは、遡及請求は難しいのでしょうか。当然ながら、診断書が1枚だけ必要な場合に比べると、必要書類は多く難しいのは間違いありません。それでは診断書を2枚入手すれば問題ないかというと、そういうわけではなく、審査によって遡及請求が認められる必要があります。

審査によって遡及請求が認められるかどうかの難易度については、障害の種類によって異なります。

・遡及請求が認められやすい傷病

足切断や脳梗塞、知的障害など、症状が回復することがなく、さらには初診日やいつ症状固定したのかわかりやすい傷病の場合、遡及認定が認められやすいです。なお知的障害は20歳前が初診日ですが、この場合は20歳に達した日が障害認定日であり、20歳までさかのぼって請求できます(5年の時効あり)。

またうつ病や統合失調症などの精神疾患であっても、障害認定日に通院しており、さらには就労困難なほど症状が重かった場合は遡及請求が認められやすいです。

・遡及請求が認められにくい傷病

一方、精神疾患(うつ病、統合失調症など)のような症状が変化する病気について、「障害認定日の周辺を含めて定期的に通院していない」という場合、診断書の作成ができません。また障害認定日から現在までの間に症状回復した期間があると、やはり遡及請求が難しくなるケースがあります。

また糖尿病などのように徐々に症状が進行する病気も遡及請求が難しいです。糖尿病は10年以上の時間をかけてゆっくりと症状が進むため、「初診日から1年6か月が経過しても、正しく治療していれば、低血糖症状や透析で悩むほどの障害に進行していない」と考えるのが一般的です(例外はあります)。

糖尿病の場合、初診日や障害認定日を証明しにくいのも遡及請求が難しくなりやすい理由です。このように、病気の種類や状況によっては遡及請求が認められにくいケースがあります。

事後重症請求の後、遡及請求しても問題ない

それでは糖尿病のように、徐々に症状が進行する場合はどのように障害年金へ申請すればいいのでしょうか。障害認定日では症状が重くなく、障害年金の基準を満たしていないものの、後になって症状悪化するケースはよくあります。

この場合、事後重症請求を活用します。事後重症請求をすれば、書類を提出したときから障害年金の受給が可能になります。

事後重症請求の場合、遡り請求はできません。そのため過去の分は受給できないものの、請求をしたときから障害年金の受け取りを可能にできます。

さかのぼって請求しないため、事後重症請求では「現在の状態を表す診断書1枚」を提出すれば十分です。遡及請求のように、障害認定日の状態は関係ないため、診断書を2枚提出する必要はありません。ただ遡及請求とは異なり、事後重症請求は65歳以上になると申請できません。

・後から遡及請求しても問題ない

また障害認定日に症状が重く、障害年金を請求できる状態の人であっても、敢えて事後重症請求を選択する人はたくさんいます。

前述の通り、遡及請求では障害認定日から3か月以内の診断書が必要になるものの、「カルテが既に廃棄されている」「閉院になっている」などの理由により、認定日付近の診断書を取得できない人がいます。この場合、遡及請求を諦めて敢えて事後重症請求を選択します。

または、事後重症請求をした後に「実は障害認定日から3か月以内の診断書を入手できる」ことがわかった場合、後から遡及請求しても問題ありません。つまり、事後重症請求から遡及請求に切り替えるのです。

この場合、障害認定日から事後重症請求をするまでの間について、受け取っていなかった障害年金が支給されます(5年の時効は存在する)。

さかのぼって障害年金を請求し、高額なお金を得る

障害認定日を過ぎたとしても、障害年金をすぐに請求していない人はたくさんいます。この場合、さかのぼって請求しましょう。1級や2級に限らず、たとえ3級であっても数百万円の金額になるケースは多いです。人によっては1000万円以上のお金になることもあります。

通常の方法に比べると、診断書が2枚必要になるので面倒です。また時効やカルテ破棄のリスクを考えると、社労士などの専門家を活用しながら可能な限り素早く申請しましょう。

うつ病や統合失調症、発達障害などの精神疾患であっても遡及請求は可能です。中には難しいケースはあるものの、障害認定日から3か月以内の診断書を取得できれば、問題なく障害年金での遡及請求を行うことができます。

なお障害認定日付近の診断書を得られないなどの理由があり、場合によっては遡及請求ではなく、事後重症請求をするほうがいい人もいます。これについては、あなたの状況を考えて障害年金の申請をするといいです。

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