障害福祉サービスの一つに自立生活援助があります。一般的な賃貸住宅で障害者が一人暮らしをするにあたり、相談支援サービスを提供するのが自立生活援助です。
ただ他のサービスとは異なり、自立生活援助は少し特殊です。直接手助けをするのではなく、解決策を一緒に考えたり、正しく生活できているか確認したりするのが自立生活援助です。期間は1年であり、この間で完全なる自立を促すのです。
なお自立生活援助を利用するとき、対象者が存在します。基本的には、障害者グループホームや病院で暮らしていた人が一人暮らしをするときに自立生活援助を利用します。
それでは、どのように自立生活援助を利用すればいいのでしょうか。自立生活援助の内容・目的や費用、対象者について解説していきます。
もくじ
相談支援によって一人暮らしをサポートする
障害者グループホームや病院から外へ出て障害者が一人暮らしを開始するとき、日常生活で負担に思うことは多いです。そこで、以下のような内容をサポートするのが自立生活援助です。
- そうじ・洗濯・食事に問題はないか
- ゴミの分別やごみ捨ては行えているか
- 家賃や公共料金などの支払滞納はないか
- 病院への通院は問題ないか
- 利用者から要請があれば、随時、訪問・電話などで緊急対応
例えば、ゴミ出しをするときは自治体ごとにルールがあり、ルールを守らなければゴミ回収されないことがよくあります。ただ知的障害者など、どのようにゴミ出しをすればいいのか教えてもらわなければ理解が難しいです。健常者ですら、新たな自治体のルールにはなかなか慣れません。
このように一般的な賃貸住宅で暮らすには何かと面倒なルールがあり、生活に困りますが、どのようにして生活上での困難を解決すればいいのか一緒に考えてくれるサービスが自立生活援助なのです。
こうした内容のサポートにより、障害者の一人暮らしを支援するのが自立生活援助の目的です。一人暮らしの最初は何かと困難が多いため、週1~2回の定期的な訪問によって支援員がサポートするのです。
なお、サポート内容はあくまでも相談支援です。例えば毎回のそうじを依頼しても受けてくれません。そうではなく、「どうすれば部屋をきれいに保てるのか」を支援員と一緒に考えるのが自立生活援助です。
病院や買い物への同行援護は可能
自立生活援助によるサポート内容は訪問による相談だけでなく、同行援護も可能です。知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者が新たな場所に住み始めるとき、少し遠くにある施設へ出向くのは大変です。
そこで同行援護を利用することで、例えば以下の場所への外出支援が可能です。
- 病院
- スーパー(買い物)
- 役所
- 金融機関
障害者であれば、病院へ定期的に通院しなければいけない人がほとんどです。この場合、同行援護によって一緒に外出し、ルートや公共交通機関の使い方を学ぶことができます。
またスーパーへ出向き、買い物をすることもよくあります。同行援護では病院への通院と買い物で最も利用されます。なお、役所や金融機関で同行援護を利用しても問題ありません。
ただ前述の通り、自分行えるようになることが自立生活援助の目的です。そのため何度も同行援護を利用するのではなく、自分で行き方を覚え、自ら出向けるようになる必要があります。
緊急時対応があり、夜間も可能
他に自立生活援助の特徴としては、緊急時の対応も可能なことが挙げられます。つまり、週1~2回の定期的な訪問に加えて、緊急時に訪問や電話などで対応可能なのです。
実際のところ、生活をしていて最も困りやすいのは緊急時です。例えば「トイレが詰まってどうすればいいのかわからない」「近隣住民とトラブルになっている」など、いますぐ問題を解決したい場面は多いです。
そうしたとき、自立生活援助には緊急時の対応サービスが含まれています。このときの対応方法は訪問や電話などになります。
また自立生活援助では夜間対応も可能であり、夜間の緊急対応に関する内容も含まれています。夜間対応の利用頻度は少ないものの、実際に問題が起きたときは必要になるため、昼だけでなく夜の対応も可能なのが自立生活援助の特徴です。
区分の規定はないが障害者が対象者
それでは、どのような人が利用の対象者になるのでしょうか。障害福祉サービスの一つが自立生活援助であるため、当然ながら障害者である必要があります。
利用に当たり、障害支援区分の規定はありません。区分は1~6まであり、重度であるほど数字が大きくなります。区分によって利用できるサービス内容が異なるものの、自立生活援助については区分に関係なく利用できるのです。
なお、具体的な対象者は主に以下になります。
- 障害者グループホームや病院から一人暮らしへ移行した障害者
- 既に一人暮らしをしているが、支援が必要な障害者
- 家族と住んでいるが、家族が要介護者など事情のある障害者
他にも対象者はいますが、基本的にはこうした人たちになります。要は、一般的な賃貸住宅で独り暮らしをしている障害者であれば、区分に関係なく誰でも利用できると考えましょう。
特に障害者グループホームに入居している軽度の知的障害者や寛解が近い精神障害者、一人暮らしを考えている身体障害者については、どこかの段階で完全なる単独生活をすることになります。このとき、自立生活援助が役立ちます。
障害福祉サービス受給者証を受け取って利用開始が可能
それでは、どのように自立生活援助を利用すればいいのでしょうか。自立生活援助は障害福祉サービスの一つであるため、役所で申請する必要があります。これによってサービス利用の決定を受け、障害福祉サービス受給者証を交付してもらいましょう。
障害福祉サービス受給者証を受け取ることにより、自立生活援助を利用できる準備が整います。あとは、自立生活援助を提供してくれる事業所を探して契約するだけです。
探す方法としては、役所に聞いてもいいし、「自立生活援助事業所 地名」で検索してもいいです。例えば、「自立生活援助事業所 東京」「自立生活援助事業所 大阪」となります。NPO法人が自立生活援助事業所の指定を受けているケースもあり、複数の法人が自立生活援助のサービスを提供しています。
費用・利用料金は1割負担なので格安
なお、障害福祉サービスは1割負担となるため格安にて利用できます。自立生活援助であれば、月の負担額は1000~1500円ほどです。そのため、利用料金を心配する必要はありません。なお同行援護を利用する場合、利用料金が500円ほど高くなります。
なお障害福祉サービスを利用する人では、ほかのサービスも利用していることがよくあります。このとき、世帯収入によって以下のように月の負担上限額が決められています。
状態 | 負担上限額 |
生活保護 | 0円 |
住民税の非課税世帯 | 0円 |
世帯年収600万円以下 | 9,300円 |
世帯年収600万円超 | 37,200円 |
通常、障害者は低年収なので負担ゼロまたは月9300円までの負担となります。これ以上の障害福祉サービスの費用負担はないため、いずれにしても利用料金をそこまで心配する必要はありません。
注意点として、実費は全額負担です。例えば同行援護を利用する場合、公共交通機関の費用は支援員の分を含めてすべて利用者負担です。あくまでも、障害福祉サービスに関わる費用が格安というわけです。
利用は1年であり、更新は1回まで(最長2年)
なお自立生活援助には利用期限があります。障害者の自立を促す制度であるため、無駄に長く利用することはできません。自立生活援助については、利用期限は1年となっています。
なお人によっては、1年間の利用では不十分なケースがあるかもしれません。この場合、更新することによってさらに1年間、利用期間を伸ばすことができます。
ただ原則として、更新は一回までとなります。つまり、通常は最長2年の利用です。しかし1年の利用で終わるのが基本なので、自立生活援助を利用できるのは1年間と考えておくといいです。
必要なら居宅介護(ホームヘルプ)を利用する
ただ一人暮らしをするとき、人によっては日常的な介護が必要になるケースがあります。この場合、居宅介護(ホームヘルプ)を利用しましょう。
自立生活援助では、直接的な介護はしません。前述の通り、例えばそうじに問題があるとき、「どうしたら部屋を片づけられるようになるのか」について一緒に考えるサービスです。
このとき、介護サービスによって手助けをしてもらいたい人にとって優れるのがホームヘルプです。居宅介護であれば、スタッフが家まで出向いて料理をしたり、食事・入浴・排せつなどの介助をしたりなど、必要な支援を依頼できます。
自立生活援助で不十分な場合、居宅介護(ホームヘルプ)を利用することで補いましょう。前述の通り、月の利用額は上限が設定されているので大きな負担にはなりません。また自立生活援助が週1~2回なのに対して、ホームヘルプの場合は必要であれば毎日利用も可能です。
障害福祉サービスによって内容や目的が異なるため、それぞれのサービスを使い分けましょう。自立生活援助だけでは不十分なケースはよくあるため、複数のサービスを利用することで一人暮らしできるようになります。
自立生活援助を開始して相談支援サービスを受ける
知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者で完全なる一人暮らしをしたい人はたくさんいます。ただいきなり一人暮らしをする場合、最初は生活できるかどうか不安です。日常生活に関する自治体ごとのルールもあります。
そこで「食事や洗濯などの毎日の生活」「家賃や公共料金の支払い」「病院への通院」などを行えているか定期訪問によって確認し、必要であれば助言するのが自立生活援助です。また自立生活援助を利用するとき、同行援護を依頼することもできます。
利用料金は高くなく、1割負担で済みます。区分の規定はないため、障害者であれば役所で申請することで開始できます。
ただ直接的な介護は望めないため、必要であれば居宅介護(ホームヘルプ)などと併用しましょう。1年間という期間の中で独り立ちを促すのが自立生活援助です。自立生活援助の利用によって自分で行えることを増やし、一人暮らしできるようになりましょう。
家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。
障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。
ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。
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