精神疾患を患っている人は精神障害者であるため、障害者手帳をもらうことができます。こうした精神疾患には適応障害や不安障害(パニック障害)、PTSDなどがあります。

適応障害や不安障害(パニック障害)、PTSDの人でもらえないのは障害年金であり、障害者手帳は申請することで問題なく発行されます。医師に診断書を書いてもらうことにより、精神障害者保健福祉手帳を得られるのです。

障害者手帳を得ることによって「障害者雇用が可能になる」「失業保険の給付条件が圧倒的に良くなる」「所得税・住民税が減る」「障害者向けの公的サービスを利用できる」などメリットが多いです。

それでは、神経症の人はどのように考えて障害者手帳を申請すればいいのでしょうか。適応障害や不安障害(パニック障害)、PTSDでの障害者手帳の入手や利用法を解説していきます。

適応障害や不安障害、PTSDは精神疾患となる

精神疾患は種類が多いものの、その中でもストレスを原因とする神経症は多くの人が発症します。神経症としては以下が知られています。

  • 適応障害
  • 不安障害(パニック障害)
  • PTSD
  • 自律神経失調症

神経症によって日常生活が明らかに困難であり、仕事(または学業)が十分にできないのであれば障害者手帳の対象になります。

・もらえないのは障害年金

適応障害や不安障害(パニック障害)、PTSD、心身症、自律神経失調症を含め、神経症の受給対象でないのが障害年金です。神経症の人は「うつ病を併発している」などの状態を除き、障害年金の申請を諦めなければいけません。

一方で障害者手帳は神経症の人であっても問題なく申請できます。障害者手帳と障害年金はまったく異なる制度と考えましょう。

精神障害者保健福祉手帳の等級は2級または3級

神経症は精神疾患に分類されます。そのため適応障害や不安障害(パニック障害)、PTSD、自律神経失調症など、ストレスを原因として発症する神経症では精神障害者保健福祉手帳に申請することになります。

障害者手帳には等級があります。精神障害者保健福祉手帳には1~3級があり、精神障害者保健福祉手帳1級は一人で生活できない人となります。そのため神経症の人は通常、精神障害者保健福祉手帳の2級または3級となります。

精神障害者保健福祉手帳の2級と3級では、得られる公的サービスにほとんど違いはありません。3級よりも2級のほうが等級は重いですが、どちらの等級であっても大きな違いはないと考えましょう。

・手帳保有には初診日から6か月以上の経過が必要

なお精神障害者保健福祉手帳を保有するためには、医師による初診日から6か月以上が経過している必要があります。そのため障害者手帳を得ることを考えるとき、早めに医師から診断を受ける必要があります。

障害者手帳をもらうには医師の診断書が最重要

ただ無条件で障害者手帳が出されるわけではありません。多少の症状が出ているだけでは、障害者手帳の交付は難しいです。

しかし、日常生活に支障が出ているほど適応障害や不安障害(パニック障害)の症状が重い場合、障害者手帳の申請・交付が可能です。

なお、精神障害者保健福祉手帳の交付で最も重要なのは医師の診断書です。障害者手帳の交付には医師の診断書が必須であり、医師に対して「どれだけ日常生活が困難になっているのか」を伝え、それを診断書に反映してもらう必要があります。

例えば以下は精神障害者保健福祉手帳に関する診断書の一部です。

このように「アパートなどで一人暮らしをしている」と仮定して、金銭管理や社会的手続きなどが可能かどうかが記載されます。これらの項目の中で、困難になっている内容を医師へ正確に伝えましょう。

障害者手帳によって障害者雇用が可能になる

神経症を患っている人が障害者手帳を申請するのは大きな意味があります。精神障害者保健福祉手帳1級ほどではないにしても、2級や3級であっても障害者のみ利用できる特典を活用できるからです。

適応障害や不安障害(パニック障害)、PTSDなどの神経症の場合、症状が落ち着いているときの行動は健常者に近く、普通に働きたいと考える人がほとんどです。この場合、障害者手帳があれば障害者枠を利用できます。

もちろん、健常者と同じ一般枠で申し込んでも問題ありません。ただ精神疾患によって就労が難しくなっている場合、無理をせず障害者雇用を選択するほうが良い場面はたくさんあります。そうしたとき、精神障害者保健福祉手帳があれば障害者雇用が可能になります。

一般企業は社員数に応じて障害者を雇用しなければいけない義務があります。そのため大企業であるほど障害者を雇う必要があり、その結果として、障害者枠であれば大企業への就職が一般枠よりも容易になります。

・就労移行支援を利用できる

なお、障害者向けの公的サービスに障害福祉サービスがあります。障害福祉サービスの一つに就労移行支援があり、一般企業への就職を目指すのが就労移行支援です。

障害福祉サービスを利用するとき、障害者手帳は必須ではありません。ただ障害者雇用に障害者手帳が必要であるため、先に精神障害者保健福祉手帳を保有しておくのは大きな意味があります。

失業保険も障害者手帳によって優遇される

また新たに精神障害者保健福祉手帳を取得する場面では、精神疾患によっていまの仕事を続けることが難しくなっている人も多いです。この場合、実際に退職したら失業保険を申請することになります。ハローワークで失業保険の申請が可能です。

ただ何も考えずに申請すると、自己都合退職での失業手当の支給日数は90日になります(10年未満の就業年数の場合)。

一方で障害者手帳を取得した後に失業保険へ申請する場合、失業手当の支給日数は300日になります(45歳以上は360日の支給日数)。障害者は就職困難者に該当するため、障害者手帳があると失業保険の給付内容が大幅に手厚くなるのです。

失業保険を申請した後に障害者として再申請することはできません。障害者手帳を保有した状態で申請する必要があるため、2級でも3級でもいいので精神障害者保健福祉手帳を取得しておくと失業手当の給付内容が良くなります。

所得税・住民税の所得控除が多くなる

さらには、障害者手帳があれば所得税・住民税も低くなります。精神障害者保健福祉手帳2~3級を保有する場合、本人または配偶者・扶養者の所得税・住民税が以下の分だけ所得から控除されると考えましょう。

区分所得税住民税
障害者27万円26万円

重要なのは、本人だけでなく配偶者・扶養者についても適用されることです。

本人が働けなくても、配偶者・扶養者の税金が減るため、軽度の等級であっても障害者手帳を保有するのは大きな意味があります。障害者手帳というのは、税金を含めたお金に直結するのです。

障害者グループホームなどの公的サービスも利用可能

また障害者であれば、公的サービス(障害福祉サービス)を利用できます。先ほど解説した就労移行支援は障害福祉サービスの一つですが、他にもいくつも存在するのです。

例えば退職した場合、賃貸物件の費用は負担になります。実家暮らしが可能なら問題ないですが、そうでない場合は生きていくのが難しいです。そこで、障害者が共同生活によって暮らせる仕組みとして障害者グループホームがあります。

収入がほとんどない人の場合、障害者グループホームの利用で必要な支払いは食費や水道光熱費などの実費のみであるため、格安にて住める障害者のための公的サービスとなります。障害者グループホームの利用で障害者手帳は必須でないものの、ほとんどのケースで事前に障害者手帳の提示を求められるため、やはり障害者手帳の入手は重要です。

障害者手帳の入手でも障害者グループホームの利用でも、医師の診断書が必要になります。障害福祉サービスはほかにもありますが、いずれにしても障害者であればこうしたサービスの利用が可能であることを認識しましょう。

適応障害や不安障害(パニック障害)でも障害者手帳をもらえる

精神疾患をもつ人で申請できる障害者手帳が精神障害者保健福祉手帳です。適応障害や不安障害(パニック障害)、PTSD、自律神経失調症など、症状が重くて日常生活が困難なのであれば、役所で申請することで障害者手帳をもらえます。

ただ、あくまでも日常生活が困難となっていることが条件です。これを客観的に証明する必要があるため、医師の診断書をもらいましょう。医師の初診日から6か月以上が経過している場合、精神障害者保健福祉手帳へ申請できます。

多くの場合、もらえる等級は2級または3級です。どちらも大きな違いはなく、障害者手帳が発行された後にさまざまな特典を得られます。

神経症のもつ人にとって障害者手帳は重要です。もらえないのは障害年金であり、障害者手帳は問題なく発行できます。そこで、障害者のみ利用できるサービスを障害者手帳によって活用できるようになりましょう。

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