知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者が家族と同じ世帯に住んでいる場合、家族による介護が必要になりますし、どうしても出費が多くなってしまいます。
そうしたとき、家族が障害者と同居している世帯について、世帯分離をすることで「障害者だけ生活保護の対象にできないのか?」と考える人は多いです。これについて基本的には生活保護の対象外ですが、特定の条件を満たす場合は世帯分離によって生活保護の受給が可能です。
それでは障害者と同居している親族について、どのように世帯分離をすればいいのでしょうか。障害者で生活保護を受給する方法について解説していきます。
もくじ
同居でも世帯分離で生活保護を考える人は多い
知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者の場合、障害の程度が重いと十分に働くことができません。また、そうした障害者が家にいる場合は親(または兄弟)が面倒を見る必要があり、家族が十分に働けなかったり、障害者の介護が必要な分だけ支出が多くなったりします。
そこで同居している障害者について、障害者だけ世帯分離することで、障害者が生活保護を受給できないかと考える人はたくさんいます。これにより、障害者の分は生活保護費によって生活できるようになります。
・元々の世帯収入が低い場合、生活保護を受けられる
障害の有無に関係なく、元々の世帯年収が低く、生活保護を受ける要件を満たす場合、当然ながら生活保護の対象になります。
ただ多くの人が知りたいのは「それなりの収入のある世帯について、障害者が同居しているケース」です。これについて考えましょう。
実態が優先され、世帯に収入があると生活保護にならない
同じ家に住んでいたとしても、世帯が異なるのは普通です。例えば親夫婦と子供家族が同じ家に住んでいるものの、住民票が異なるのはよくあります。
このとき障害者だけ世帯分離したとしても、同じ家に同居している世帯の収入がそれなりにある場合、障害者は生活保護を受け取れません。
生活保護の判定では、書類上の世帯ではなく、実態の方が重視されます。そのため障害者と同じ家に住んでいる場合、「同居家族が障害者を養っている」ことが明確です。そのため、世帯収入がある場合は障害者だけ生活保護の受給はできません。
生活保護というのは、生活困窮者のための制度です。そのため、例えば「家のローンの支払いが苦しい」「子供の塾代を払わないといけない」とはいっても、家のローン支払いや塾代を出せるほどの収入はあるわけです。そのため生活困窮者でない場合、生活保護を利用できません。
障害者との同居で世帯分離による生活保護が可能なケース
先ほど解説した内容は原則になります。実際のところ、同居家族に障害者がいたとして、障害者のみ世帯分離してもほとんどのケースで生活保護を得られることはありません。
それに対して、特定のケースで世帯分離による生活保護が認められるケースがあります。これは、以下すべての条件を満たしている場合に限られます。
- 重度の知的障害者・精神障害者や重症心身障害者が世帯にいる
- 障害者が成人している
- 世帯分離しないと、世帯全体が要保護世帯になる
軽度の知的障害者や精神障害者の場合、一般企業で働くことも可能です。また身体障害者であっても、障害者雇用で働いている人はたくさんいます。しかし、ある程度まで症状の重い障害者は十分に働くことができません。
そのため障害年金を受給している人を含めて、企業就職が難しいほど重度の障害者が世帯にいることが第一条件です。
また障害者が子供の場合、親は必ず扶養しなければいけません。そのため知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者は成人している必要があります。
それに加えて、元々の収入が低めの世帯である必要があります。要は、世帯分離して障害者が生活保護を受給しないと、その世帯全体が要保護世帯になってしまうケースです。元々の収入が低いにも関わらず、同居している障害者によって家計が圧迫され、世帯全体が困窮している場合がこれに該当します。
ある程度の収入のある世帯については、前述の通り障害者だけ生活保護の受給はできません。ただ、元からギリギリの生活をしている世帯について、障害者がいることでさらなる金銭的負担がある場合、世帯分離によって障害者のみ生活保護を受けるのは可能です。
生活保護の利用では障害者グループホームに住むべき
それでは収入がある場合、障害者のみ世帯分離して生活保護を受給するにはどうすればいいのでしょうか。この場合、同じ家に住んでいる場合は前述の通り受給は不可能です。
そこで、世帯分離によって障害者グループホームなどの施設に障害者が引越し、家族と同居していない状態を作らなければいけません。
すべての障害者について、親はいつか死ぬため、必ずどこかの段階で家族と離れて一人で生きていく必要があります。そうしたセーフティーネットの一つが障害者グループホームであり、複数の障害者が集団生活する場所でもあります。
同居家族が一般企業で働いていたり、同居する親がある程度の年金をもらっていたりする場合、障害者のみ生活保護を受け取ることはできません。そこで、まずは障害者グループホームにて生活させることで世帯を分けるのです。
頼れる親族がいない障害者で生活保護になる
ただ生活保護の場合、必ず親や兄弟に対して「支援することは可能か?」という連絡が審査時にあります。このとき、支援できない理由があれば問題なく障害者は生活保護を得られます。
- 障害者が家族に暴力・虐待をする(または、家族が障害者に暴力・虐待をする)
- 借金や遺産など金銭的な問題で対立している
- 家族と障害者の間で完全に縁を切りたい
- 親族と障害者が長年、会っていない
- 家族の元々の収入が低く、そもそも支援できない
いずれにしても、知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者に対して、家族が支援できない状態の場合、たとえ障害者に親族がいたとしても生活保護の受給が可能です。
なお知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者が障害者グループホームに入居し、世帯分離によって生活保護を受給開始したとしても、「家族が障害者と会ってはいけない」というわけではありません。障害者が生活保護を受給開始した後であっても、家族と会っている障害者はいます。
重要なのは、何かしらの理由によって「障害者の支援ができない(または、支援をしたくない)」という場合に生活保護を受給できます。同居の状態では厳しいものの、障害者グループホームへ入居している場合であれば生活保護の申請が通りやすくなります。
世帯分離によって障害者が生活保護を受給する
知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者であり、ある程度症状が重い場合、一人で生きていくのは難しいです。その場合、親や兄弟など家族と一緒に住むのは普通です。
ただ障害者が同居している場合、世帯分離をすることで障害者のみ生活保護費を受給するのは困難です。住民票上で世帯がわかれていても、同じ家に住んでいる以上、実質的に同居の家族が障害者の面倒を見る必要があるからです。
しかし、障害者を世帯分離しないと世帯全体が要保護世帯へ陥る場合、例外的に世帯分離による生活保護の受給が認められます。障害者が成人しており、ある程度まで症状が重く一般企業で働けないのであれば、障害者のみ生活保護の受給を考えましょう。
またどうしても障害者のみ生活保護を受給したい場合、障害者グループホームの利用を含め別々に住む必要があります。このとき生活保護の受給審査では、家族は障害者を支援できない(または支援したくない)ことを伝えましょう。こうして、世帯分離によって障害者のみ生活保護費を受け取れるようになります。
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