HIVに感染することにより、エイズ(後天性免疫不全症候群)を発症する人がいます。免疫機能が働かなくなることにより、風邪症状であっても重篤な状態に陥ってしまうのです。
エイズ患者は障害者と同じであり、身体障害者手帳を保有できます。また、障害年金1級・2級・3級に認定されることで障害年金を得られます。働いている人であっても障害年金を得られるため、非課税のお金として手取りが大幅に増えます。
なお、HIV感染者が障害者手帳や障害年金を利用することについてデメリットは特にありません。一方でメリットは多いため、積極的に制度を利用するといいです。
エイズの症状がほとんどなく、健常者と同じ状態では障害者手帳や障害年金の対象とはなりません。ただ体内に存在する白血球の数が少ない場合、身体障害者手帳や障害年金の基準を満たすため、積極的に活用する必要があります。そこで、どのように障害者手帳や障害年金を活用すればいいのか解説していきます。
もくじ
治療で症状が抑えられている場合、障害者ではない
1980年代では、エイズは治療法がなく急速に症状が悪化する病気でした。しかし1990年代からは治療薬が発達し、現在ではHIVの検出限界以下(ウイルスがまったく検出されない状態)まで治療できるようになりました。
薬を服用することにより、症状がほとんどない状態まで抑えることができるのです。事実、HIV感染者の平均余命は一般人と変わりません。
HIVが体内に存在する事実は変わらず、継続的な治療は必要であるものの、体内の白血球数が正常でその他の異常がない場合、HIV患者ではあっても日々の生活は健常者と同じです。この場合、障害者ではありません。
つまり軽症のHIV感染者というのは、障害者手帳や障害年金をもらえないことがよくあります。たとえエイズではあっても、治療によって検査値が正常なのであれば、障害者ではありません。これは、他の疾病を持つ障害者でも共通なので納得するしかありません。
HIVの身体障害者手帳の等級はどういう基準なのか
ただもちろん、エイズによって日々の生活に支障がある場合、障害者手帳や障害年金を利用できます。それではエイズの場合、障害者手帳はどのような認定基準になっているのでしょうか。
エイズ患者は身体障害者手帳を得られますが、以下の障害等級となっています。
1級 | 日常生活活動がほぼ不可能 |
2級 | 日常生活活動が極度に制限 |
3級 | 日常生活活動が著しく制限 |
4級 | 社会での日常生活活動が著しく制限 |
ただ、これでは認定基準があいまいです。そこでHIV感染者について、以下の内容に当てはまっているかで身体障害者手帳の等級を決定します。
1級 | CD4陽性Tリンパ球数が200/μl以下で、以下12項目のうち6項目以上が該当 |
2級 | CD4陽性Tリンパ球数が200/μl以下で、以下12項目のうち3項目以上が該当 |
CD4陽性Tリンパ球数に関係なく、以下12項目のうち6項目以上が該当(1~4のうち一つを含む) | |
3級 | CD4陽性Tリンパ球数が500/μl以下で、以下12項目のうち3項目以上が該当 |
CD4陽性Tリンパ球数に関係なく、以下12項目のうち4項目以上が該当(1~4のうち一つを含む) | |
4級 | CD4陽性Tリンパ球数が500/μl以下で、以下12項目のうち1項目以上が該当 |
CD4陽性Tリンパ球数に関係なく、以下12項目のうち2項目以上が該当(1~4のうち一つを含む) |
【表 検査所見・日常生活の活動制限】
- 白血球数3000/μl未満(4週以上の間隔をおいた検査で連続して二回以上続く)
- ヘモグロビン量で男性12g/dl未満、女性11g/dl未満(4週以上の間隔をおいた検査で連続して二回以上続く)
- 血小板数で10万/μl未満(4週以上の間隔をおいた検査で連続して二回以上続く)
- ヒト免疫不全ウイルス-RNA量で5000コピー/ml以上(4週以上の間隔をおいた検査で連続して二回以上続く)
- 1日1時間以上の「ベッドでの横たわり状態」を必要とするほどの強い倦怠感・易疲労が月に7日以上ある
- 健常時と比較して10%以上の体重減少がある
- 月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)が2か月以上続く
- 1日3回以上の泥状または水様下痢が月に7日以上ある
- 1日2回以上の嘔吐または30分以上の嘔気が月に7日以上ある
- 口腔内カンジタ症(頻回に繰り返す)、赤痢アメーバ症、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス感染症(頻回に繰り返す)、糞線虫症・伝染性軟属腫などの日和見感染症の既往がある
- 生鮮食料品の摂取禁止など日常生活活動上の制限が必要
- 軽作業を超える作業の回避が必要
CD4陽性Tリンパ球数というのは、免疫機能の中心となる白血球の数と考えましょう。HIVによって白血球の数が少なくなっており、さらにはその他の検査所見や日常生活の制限によって障害者手帳の等級が決まります。
このような認定基準を学ぶと、白血球の数が正常であり、日常生活に支障のないHIV感染者では身体障害者手帳を入手できない理由がわかります。一方、エイズによって検査所見に異常があり、日常生活に制限がある場合、障害者手帳の入手が可能です。
エイズ患者は障害年金を受け取れる
またエイズによって白血球の数が少なく、日常生活に支障が表れている場合、障害年金を受け取れます。障害者手帳と障害年金はまったく別の制度であり、それぞれの等級に相関性はありません。
このときエイズについては、障害者手帳よりも障害年金のほうが基準は厳しいです。エイズ既往歴のある人について、以下の人が障害年金の認定条件を満たします。
【障害年金1級:1~3をすべて満たす】
1 . CD4値が200/μl以下
2. 以下の項目のうち3つ以上を満たす(4週以上の間隔をおいた検査で連続して二回以上続く)
- 白血球数3000/μl未満
- ヘモグロビン量で男性12g/dl未満、女性11g/dl未満
- 血小板数で10万/μl未満
- ヒト免疫不全ウイルス-RNA量で5000コピー/ml以上
3. 以下の項目のうち4つ以上を満たす
- 1日1時間以上の「ベッドでの横たわり状態」を必要とするほどの強い倦怠感・易疲労が月に7日以上ある
- 健常時と比較して10%以上の体重減少がある
- 月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)が2か月以上続く
- 1日3回以上の泥状または水様下痢が月に7日以上ある
- 1日2回以上の嘔吐または30分以上の嘔気が月に7日以上ある
- 動悸や息苦しくなる症状が毎日のように出現
- 抗HIV療法により、日常生活に支障を生じる副作用がある
- 口腔内カンジタ症(頻回に繰り返す)、赤痢アメーバ症、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス感染症(頻回に繰り返す)、糞線虫症・伝染性軟属腫などの日和見感染症の既往がある
- 生鮮食料品の摂取禁止など日常生活活動上の制限が必要
- 医学的理由により抗HIV療法ができない状態
【障害年金2級】
- CD4値が200/μl以下
【障害年金3級】
- CD4値が350/μl以下
障害年金2級と3級については、他にも認定基準があります。ただ基本的には、エイズ既往歴があってCD4陽性Tリンパ球数が少なくなっている場合、障害年金2級や3級を受け取れると考えましょう。なお障害年金1級になると、エイズ合併症のため介助なしには日常生活を送れないほどになります。
ちなみに、HIVでの障害年金は「初診日から1年6ヶ月が経過した後に申請できる」ようになっています。この場合、既にエイズ治療が始まっていると思います。そのため治療によって障害年金の等級に該当しないケースは多く、あくまでも治療困難な人が障害年金の対象になります。
もちろん、条件を満たしていれば障害者手帳だけでなく、障害年金を得ることができます。そのため医療機関で検査をして、検査結果と認定条件を比較してみるのは問題ありません。
障害者手帳・障害年金の受給は会社にバレない
なおHIV感染者の多くは普通に働いています。このとき、特に会社員では「障害者手帳や障害年金をもらうことについてデメリットはないのか?」「会社にバレることはないのか?」と考えます。
ただ障害者手帳や障害年金を受け取ることについて、メリットは多いものの、デメリットは特にありません。例えば障害者手帳を利用することで、以下の障害者用の特典を得られます。
- 税金(所得税・住民税・自動車税)や公共料金(水道代)の減額
- 電車、新幹線、バス、タクシー、飛行機の減額
- 高速道路・ETC料金が半額
- 映画館や水族館、美術館、テーマパークの割引
- 医療費の助成
- 障害者手帳で手当を受け取る
- ガソリン代やおむつ代の補助
- 福祉用具・補装具の補助
- 住宅改修・リフォーム費用の助成
- 失業手当が手厚くなる
障害者手帳を利用することで、大幅なメリットがあります。日々の支出は少なくなるため、障害者手帳を取得・利用するほうがいいです。また、会社に障害者手帳の有無を伝えない限り取得の事実はバレないため特に問題ありません。
・障害年金は非課税のお金
また障害年金で受け取るお金は非課税です。つまり、受け取ったお金について所得税・住民税の納税義務がありません。
その結果、年末調整や確定申告が不要になります。また課税されない以上、会社に「障害年金を受け取っている」という事実を伝える必要はありません。そのため、障害年金を受け取っている事実が会社にバレることはありません。
障害者控除を利用するかどうかは障害者次第
ただ障害者手帳については、利用することで前述の通り所得税・住民税を低くできます。障害者控除を利用すると、税金を抑えることができて優れるのです。
しかし、会社員が障害者控除を利用するためには、総務や経理に年末調整で報告しなければいけません。障害年金を受け取っている事実を伝える必要はないものの、障害者手帳を保有している事実を伝えることで、年末調整にて税金を低くしてもらうのです。
そうなると障害者手帳の保有が会社にバレてしまいますが、障害者控除を申請しない場合は会社にバレることはありません。
また障害者控除を利用するにしても、提出するのは身体障害者手帳のみコピーです。身体障害者手帳を確認しても、病名が記載されていない場合、何の障害かわかりません。
仮に総務・経理から「何の障害者ですか?」と聞かれたとしても、エイズ患者であることを伝える必要はありません。例えば、「腎臓が少し悪くなっているため、障害者手帳をもらっている」などと伝えればいいです。
身体障害者手帳は臓器不全であっても取得できるため、身体障害者で企業勤めの人はたくさんいます。HIV感染の事実を伝えなくても問題なく障害者控除を利用できるのです。なお、おすすめはHIVを隠して障害者控除を利用するやり方ですが、どうしても嫌な場合は障害者控除を諦めても問題ありません。
または、確定申告(還付申告)を利用することで「障害者控除を利用しつつ、会社にもバレない」ようにすることは可能です。少し作業は増えますが、こうした方法を利用してもいいです。
HIV・エイズ患者での障害者手帳と障害年金の認定基準を学ぶ
いまはエイズ治療がかなり進んでおり、HIV感染者であってもエイズの症状がなく、HIVを検出できないほどに抑えられるケースが多いです。こうした軽症の人は健常者と同じであるため、障害者手帳の対象外ですし、障害年金をもらえません。
ただ中には、エイズの既往歴があって白血球の数が少なくなっており、感染症を発症しやすく、体が疲れやすくなっている人がいます。この場合、認定基準を満たせば身体障害者手帳や障害年金の対象になります。
HIV感染者が障害者手帳や障害年金を受け取ることについて、メリットは多いもののデメリットはありません。会社にバレることもないです。ただ障害者控除については、利用するほうが減税になって得であるものの、障害者である事実は会社にバレるので取り扱い方を考えましょう。または、年末調整ではなく確定申告(還付申告)をしてもいいです。
HIV・エイズの患者は障害者となりますが、症状が悪化している人のみ障害者手帳と障害年金を利用できます。基準に当てはまっている場合、これら障害者用の仕組みを活用しましょう。
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