障害者が住める福祉施設に障害者グループホーム(共同生活援助)と入所施設(障害者支援施設)があります。施設入所支援を利用して入居する施設が入所施設です。障害者が共同生活を送るという意味では、障害者グループホームも入所施設も同じです。
ただ、障害者グループホームと施設入所支援による入所施設は別物です。入所施設のほうが、重度の障害者が利用することになります。
障害者グループホームは家(住む場所)を提供する施設であり、昼間の就労支援や作業所については外へ出る必要があります。一方の入所施設では、施設内に就労支援や作業所があります。つまり、一つの敷地内で完結するかどうかの違いがあります。
それでは、具体的に障害者グループホームと入所施設にはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの中身を解説していきます。
もくじ
共同生活援助(グループホーム)と入所施設(障害者支援施設)の違い
知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者は多くの場合、収入が低いです。そこで格安で生活することを考える必要があり、このとき生活施設として以下の2つが候補になります。
- 共同生活援助(グループホーム)
- 入所施設(障害者支援施設)
ただ、多くの人で障害者グループホームと入所施設の違いを理解していません。そこで、こうした施設を利用するにしてもそれぞれの違いを知る必要があります。
障害者グループホームは障害者の家を提供する場所
まず、障害者グループホームは「障害者が住む場所」を提供するのが一番の目的です。教科書的には「主として夜間において入浴や排せつ、食事の介護などを行う」となります。ただ実際には、夜間に関係なく支援をするのが障害者グループホームです。
軽度でも重度でも、障害者グループホームの利用者は昼間に働きます。このときの就労支援や作業所などは、グループホームの外に存在するため、そこまで通う必要があります。公共交通機関を利用して自ら出向く人がいれば、障害の程度が重い場合は車での迎えがあるケースもあります。
ただ精神障害者など、人によっては休息が必要であり、働くのが適切ではないケースもよくあります。この場合は平日の昼間を含めてグループホーム内で滞在することになりますが、こうした利用者のケアも含めて障害者グループホームが行います。
こうして知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者が生活できるように支援し、自立を促す施設が障害者グループホームです。
入所施設は就労支援など、仕事まで含めて支援可能
それでは、入所施設(障害者支援施設)はどのような施設になるのでしょうか。前述の通り障害者グループホームでは、就労支援や作業所へ昼に通わなければいけません。
一方、入所施設では就労支援や作業所などが施設内に存在します。つまり施設の外に出ることなく、障害者支援施設の中だけですべてが完結します。
当然、障害者グループホームと同様に利用者は施設内で寝泊まりすることができ、介護職員による介助を受けることができます。
つまり、一つの施設内ですべて完結するのが入所施設です。障害者グループホームではひんぱんに外出する機会があり、特に仕事をする人では毎日のように施設外へ出向くことになります。それに対して入所施設では、グループホームに比べて外出の機会が非常に少ないです。
入所施設は区分4以上の人が対象
なぜ入所施設では同じ敷地内で完結するようになっているかというと、重度の障害者が利用するからです。具体的には、入所施設(障害者支援施設)では障害支援区分4以上の人が利用対象です(50歳以上の人は区分3以上)。
こうした施設に入居するためには、すべての障害者で障害支援区分を取得しなければいけません。障害区分は1~6まで存在し、数字が大きいほど障害の程度が大きいです。
障害者グループホームの場合、区分認定さえ受けていれば、あらゆる区分の人で利用できます。障害者グループホームでは、区分1の軽度知的障害者が住んでいることがあれば、区分6の重度となる障害者が住んでいることもあります。
それに対して、施設入所支援による入所施設では区分4以上が対象になるため、必然的に入居者は中度または重度の障害者に限定されます。
入居可能な定員や立地は大きく異なる
これらの違いがあるため、一つの施設内に入居可能な定員は大きく異なります。障害者グループホームの場合、一軒家やアパート・マンションとなりますが、一つの施設につき3~6人ほどで共同生活を送るのが一般的です。
障害者グループホームの見た目は普通であり、例えば以下は一軒家タイプのグループホームです。
いずれにしても普通の家に住むことになるため、一つの施設の定員は少なめです。
一方、入所施設では同じ敷地内に就労支援や作業所まで備えることになります。そのため必然的に規模は大きくなり、定員は40~100人となります。
また障害者グループホームは普通の一戸建て住宅やアパート・マンションを利用するため、住宅地に存在します。周囲にはコンビニやスーパーもあるため、外出して必要となる品物を購入するのは自由です。
それに対して、入所施設では規模が大きくなるので住宅地に存在しないケースが一般的です。周囲に何もないことは多く、気軽に外出して買い物へ出向くのは難しいことがよくあります。入所施設は敷地内で日常生活が完結するからこそ、利用者が外出しなくても問題ない場所に位置しているのです。
格安で住めるのはグループホームも施設入所支援(入所施設)も同様
なお「入所施設への入居では区分の制限がある」こと以外、障害者グループホームも入所施設(障害者支援施設)も特に大きな違いはありません。区分認定された後、サービス利用の決定を受ければ、入居できるのは同じです。
また格安で住むことができるのはどちらも同様です。障害者の多くは低収入であり、一人で生活する場合、住民税の非課税世帯に該当します(または生活保護受給者)。この場合、障害福祉サービスは無料ですし、国や自治体からの家賃補助もあります。
そのため必要な費用は食費や水道光熱費、その他の雑費だけであり、月6万円ほどの総額費用で生活できるのが普通です。支出が少し多くても、無駄遣いしなければ月6~8万円に収まります。また、生活する場所は以下のような個室です。
障害年金だけで生活できるのが障害者グループホームや入所施設です。こうした施設に住むのであれば、少なくともお金の心配をする必要はありません。
なお、障害者グループホームと入所施設の違いを表にすると以下のようになります。
障害者グループホーム | 入所施設 | |
定員 | 3~6人が多い | 40~100人 |
立地 | 住宅地・市街地 | 住宅地から離れる |
区分 | 1~6 | 4以上 |
費用 | 格安 | 格安 |
医療行為 | ほぼ無理 | ほぼ無理 |
こうした違いを理解して介護・福祉施設を利用しましょう。
区分や将来の単独生活、空き状況で入居先を見極める
それでは知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者がこれらの施設へ入居するとき、障害者グループホーム(共同生活援助)と入所施設(障害者支援施設)のどちらを選べばいいのでしょうか。
障害者グループホームはすべての区分を受け入れているものの、入所施設は区分4以上でなければいけません。そのため障害支援区分が1~3の人では、必然的に障害者グループホームを選ぶことになります。
また障害の程度だけでなく、「将来の一人暮らしを目指すのかどうか」によっても異なります。単独生活を考える場合、通常は障害者グループホームを選択します。障害者グループホームでは利用者の外出が日常的ですし、基本的には利用者が一人で日常生活を行えるように支援します。
当然、完全なる一人暮らしではすべて自分一人で行わなければいけません。一人暮らしを考えないほどの重度であれば施設入所支援による入所施設で問題ないですが、そうでない場合は障害者グループホームとなります。
なお障害者グループホームも入所施設も空きがものすごく多いわけではありません。そのため現実的な話をすると、「障害者グループホームや入所施設に関係なく、空きのある施設へ入居する」のが一般的です。
そもそも、空きがなければ入居できません。そのため、最も重要なのが「希望する施設に空きがあるかどうか」になります。
障害者施設の違いを学んで入居先を決める
知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者にとって格安で入居できる障害者施設は優れています。こうした施設には障害者グループホームと入所施設があります。そこで、それぞれの違いを認識するのは重要です。
障害者グループホームは少人数が住み、住宅地に立地しています。すべての障害支援区分で障害者グループホームに入居できます。
それに対して施設入所支援による入所施設では大人数が住み、通常は郊外に立地しています。区分4以上の人が入居対象であり、敷地内に就労支援や作業所も含めて存在します。
どちらの施設が優れるというのはありません。そこで区分や空き状況を含めて、これらの施設を利用して格安にて生活しましょう。
家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。
障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。
ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。
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