障害者であれば障害者手帳への申請を考えます。このとき、障害者手帳を用いて受けられるサービスやメリット・デメリットとしては何があるのでしょうか。
障害者手帳を利用することにより、税金を低くできたり、障害者割引を利用できたりします。また、国や自治体の助成制度を利用できるため、日々の生活で生じる支払いを少なくできます。さらには、毎月の補助金を受け取ることができます。
また労働という意味では、障害者手帳を保有することで障害者雇用が可能です。それに加えて、失業保険の内容が非常に手厚くなります。
そのため、障害者手帳の保有はメリットばかりです。そこで、障害者手帳によって何ができるのかを解説していきます。
もくじ
障害者手帳で何ができる?デメリットはない
障害者手帳には種類があります。障害者には身体障害者や知的障害者、精神障害者がいるため、障害者手帳は以下の種類に分かれます。
- 身体障害者手帳:体の機能に障害のある人
- 療育手帳(愛の手帳):知的障害のある人
- 精神障害者保健福祉手帳:精神障害のある人
このうち、どの種類でもいいので障害者手帳があれば優れた公的サービスを受けられます。障害者手帳があるのとないのでは、日々の支出が大幅に異なるのです。
なお、それぞれの障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)には等級があります。等級(障害の程度の重さ)によって受けられるサービスやメリットは異なるものの、たとえ軽い等級であってもメリットは多いです。
なお障害者手帳を保有することによるデメリットはありません。障害者手帳を保有していることを他人に言わなければ、障害者とバレることはないからです(肢体不自由など、明らかに障害者と判断できる場合を除く)。このとき、障害者手帳で使えるサービスには以下があります。
- 減税や障害者割引:支出を少なくする
- 補助金・手当:国や自治体からの助成
- 障害者雇用・失業保険:社会復帰の制度
他にもありますが、これらをメインで解説していきます。
減税や障害者割引で支出を少なくする
まず、減税や障害者割引から確認しましょう。障害者手帳を利用することで、以下の減税や割引が可能になります。
- 税金(所得税・住民税・自動車税)や公共料金(水道代)の減額
- 電車、新幹線、バス、タクシー、飛行機の減額
- 高速道路・ETC料金が半額
- 映画館や水族館、美術館、テーマパークの割引
それぞれの内容を確認していきます。
所得税・住民税を抑え、自動車税や水道料金まで少なくする
障害者手帳を保有しているすべての人について、本人または配偶者・扶養者の所得税・住民税を抑えることができます。以下は障害者手帳による所得控除額です。
区分 | 所得税 | 住民税 |
障害者 | 27万円 | 26万円 |
特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
特に重度の障害者を特別障害者と呼び、所得控除が大きくなります。以下が特別障害者に該当する人です。
- 身体障害者1級または2級
- 重度の知的障害者(IQ35以下)
- 精神障害者保健福祉手帳1級
また自治体によって内容は異なりますが、自動車税・自動車取得税の減税も可能です。
さらには、障害者手帳を提示することで水道代の減額も可能です。電気料金とガス料金の減額はできません。ただ水道料金を抑えられるのは優れています。減税に加えて、公共料金(水道代)の減額も可能なのです。
本人・付添人を含めて公共交通機関の料金を抑える
障害者割引により、公共交通機関の支出を抑えられます。例えばJRが規定する障害者割引の第一種に該当する場合、本人と付添人が一緒に利用するとき、以下のときに電車代・新幹線代が半額になります。
乗車券 | 内容 |
普通券 | 大人用・小児用 |
回数券 | 大人用・小児用 |
定期券 | 大人用のみ |
ICカード | 大人用・小児用 |
単独乗車で利用できる場面はほぼないものの、付添人がいる場合なら乗車券が半額になるのです。
またバスについては、本人が単独で乗車しても半額になるのは普通ですし、付添人についても障害者割引が適用されます。タクシーでは全国一律で1割引です。そのため、障害者手帳(またはアプリ)を利用する場面は多いです。
なお飛行機にも障害者割引はありますが、早割のほうが安いため、飛行機については障害者割引を利用する機会は大幅に減ります。
高速道路・ETCの料金が半額になる
身体障害者については、本人が運転することで高速道路・ETC料金が半額になります。等級に関係ないため、軽度の身体障害者であっても利用できます。高速道路の割引については、以下のように明記されています。
一方で第三者が運転する場合、「中度または重度の身体障害者・知的障害者」が同乗している場合に高速道路代を半額にできます。利用する車は自家用車に限らず、レンタカーやタクシーでも問題ありません。
注意点として、障害者手帳を提示するだけでは割引になりません。役所またはオンラインで事前に登録する必要があります。また有効期限が存在するため、有効期限が切れる前に更新しなければ半額にはなりません。高速道路代は高額になりやすいため、必ず事前登録を済ませましょう。
映画館や水族館、美術館、テーマパークでの割引利用
映画館や水族館、美術館、博物館、テーマパーク(ディズニーランドやUSJなど)で障害者割引を利用できます。例えば以下は映画館の内容であり、本人と付添人1人が障害者割引となります。
また水族館や美術館、博物館、テーマパークについては、運営会社によって障害者割引の金額が異なります。自治体や国が運営している場合は無料のケースが多いですが、いずれにしても場所によって障害者割引の金額が違ってきます。
補助金・助成金や手当によって生活負担を軽くする
次に国や自治体による補助金・助成金・手当を確認しましょう。障害者手帳を利用することで、以下のサービスを使えます。
- 医療費の助成
- 障害者手帳で手当を受け取る
- ガソリン代やおむつ代の補助
- 福祉用具・補装具の補助
- 住宅改修・リフォーム費用の助成
これらの助成を受けることで、大幅に家計が助かります。
医療費の助成により、格安になる
障害者には医療費助成の制度があります。自治体によって内容は異なりますが、以下に該当する人は障害者医療費助成制度を利用でき、負担割合が1割になります。
- 身体障害者手帳1級・2級
- 重度の知的障害者(IQ35以下)
- 精神障害者保健福祉手帳1級
例えば、以下は東京都の内容です。
障害者医療費助成制度によって1割負担になるだけでなく、月の負担上限額が設定されています。また住民税の非課税世帯の場合、負担なしとなります。
なお重度の障害者でなくても、障害者は特定医療費(指定難病)助成制度や自立支援医療制度(精神通院)を利用できます。これらは障害者手帳とは異なる制度になるものの、医療費を大幅に軽減できるという意味では同じです。
障害者手帳で手当を受け取る
在宅で過ごしている20歳以上の重度障害者に限定されますが、特別障害者手当を得られます。特別障害者手当を得られるかどうかは障害者手帳の有無に関係ないものの、目安としては以下の人で手当を受け取れます。
- 身体障害者手帳1級
- 重度の知的障害者(IQ20以下の最重度)
- 精神障害者保健福祉手帳1級
医師の診断書を提出する必要があるものの、重度の障害者であればこうした手当を受け取りましょう。
・障害児福祉手当と特別児童扶養手当を受け取る
それでは、20歳未満の場合はどうすればいいのでしょうか。これについて、障害児福祉手当と特別児童扶養手当を利用できます。
障害者手帳なしであっても、医師の診断書によって障害児福祉手当と特別児童扶養手当を受け取ることができます。ただ重度の障害者手帳を保有している場合、障害児福祉手当と特別児童扶養手当を受け取るとき、医師の診断書を省略できるケースが多いです。
障害者手帳を保有するためには医師の診断書が必須であり、障害があることは明白です。そこで、手当を受け取るときに診断書を省略できるというわけです。
ガソリン代やおむつ代の補助をしてもらう
障害者手帳を利用することで、自治体から生活に必要な費用を補助してもらえることがよくあります。こうした内容にガソリン代やおむつ代があります。
・ガソリン代の補助
ガソリン券や現金支給など、自治体によってガソリン代の補助内容は異なります。ただ、重度の障害者がいる場合は自治体にて申請することでガソリン代の補助が可能です。
・おむつ代の補助
さらに、おむつ代の補助が可能です。自治体によって内容は異なるものの、おむつが必要な障害者がいる場合、おむつ代の助成が可能です。
専門業者におむつを家まで配達してもらうことになります。おむつ代は高額になりやすいため、障害によっておむつ代が重なる場合、こうした助成制度を積極的に活用しましょう。
身体障害者で福祉用具・補装具を1割負担にする
主に身体障害者で利用することになりますが、障害者手帳を用いることで福祉用具・補助具の購入費用が1割負担になります。障害者向けの福祉用具・補装具はオーダーメイドになることも多く、高額になりやすいですが、これらの費用が1割負担になるのは優れています。
例えば、以下の購入費用が1割負担になります。
- 視覚障害者:盲人安全つえ、義眼、メガネ
- 聴覚障害者:補聴器
- 肢体不自由:義肢、装具、歩行器、車いす、座位保持装置、歩行補助杖
- 肢体不自由&音声・言語機能障害:重度障害者用意思伝達装置
- 障害児:座位保持いす、排便補助具、頭部保持具、起立保持具
また特殊便器や点字ディスプレイ、特殊ベッド、ネブライザー(吸入器)、ストーマ用装具など、障害者が日常生活を送るうえで必要な物品についても1割負担にできます。
住宅改修・リフォーム費用を助成してもらう
身体障害者の場合、自宅で過ごすためにリフォームを考えるのは普通です。手すりをつけたり、段差をなくしたりするのです。
主に重度の身体障害者で利用できる制度ですが、自治体によっては知的障害者もリフォーム代を補助してもらえるケースがあります。補助内容も自治体によって変化し、例えば「上限50万円まで対象経費の半分を助成」などのようになります。
注意点として、事前に役所で相談する必要があります。役所への相談なしに先に住宅改修工事をすると補助を受けられません。そこで、まずは役所へ出向きましょう。
その後、リフォームに関する見積書や改修図面、申請書を提出して助成が決定した後、工事を行うことで自治体から費用を補助してもらえるようになります。
障害者雇用が可能であり、障害者枠を利用できる
障害者手帳は労働面でも有利です。作業所などで働く場合は当然として、一般企業で働くときも障害者手帳は有効です。障害者手帳がある場合、障害者枠に応募できます。障害者雇用というのは、障害者手帳をもつ人だけが利用できる制度なのです。
正社員の数に応じて、一定数の障害者を雇用する義務が企業にあります。そのため大企業であるほど多くの障害者を雇用する必要があり、障害者は大企業への就職が可能なのです。
そこで就労移行支援を利用して一般企業にチャレンジしてもいいですし、転職エージェントを用いて企業就職を目指してもいいです。
障害者手帳をもたない人は障害者枠を利用できないため、求人に申し込める人は限られ、就職しやすくなっています。
もちろん、就職後に継続して働けることが重要になるため、いま働けない場合は社会復帰を急ぐ必要はありません。ただ障害者手帳は作業所だけでなく、一般企業への就職を目指す場合についても有効です。
失業保険の内容が手厚くなる
ただ障害者であるため、一般企業で働くにしても続けられないケースがあります。この場合は退職することになりますが、障害者手帳があれば健常者に比べて失業保険の内容が大幅に手厚くなります。
障害者は就職困難者に該当します。2~9年の勤続後、自己都合による退職では、健常者は90日の失業手当となります。一方で障害者手帳があると、自己都合の退職であっても300日の失業手当となります(45歳以上は360日の失業手当)。
雇用期間 | 1年未満 | 2~9年 | 10~19年 | 20年以上 |
一般受給者 | - | 90日 | 120日 | 150日 |
障害者:45歳未満 | 150日 | 300日 | ||
障害者:45~64歳 | 360日 |
このように、障害者手帳があると非常に長い期間にわたり、失業手当の受給が可能になります。そのためいま障害者手帳をもっておらず、精神疾患などによって新たに障害者手帳を保有する場合、障害者手帳を新規発行した後に失業手当へ申し込むと有利になるケースは多いです。
デメリットなしの障害者手帳を活用する
ここまで、障害者手帳を保有することによるメリットを解説してきました。ただ実際には、「粗大ごみ手数料の無料化」「保育園の審査が容易になる」「公営住宅の審査に通りやすくなる」など、他にもメリットはたくさんあります。
障害者手帳の保有にデメリットは特になく、受けられるサービスや割引は非常に多いです。ここでは述べませんでしたが、障害福祉サービス(障害者に対する公的サービス)の利用で障害者手帳の提示が必要になる場面も多いです。
また障害者手帳によって減税や障害者割引、補助金・手当の支給、障害者雇用など、可能になることは多いです。障害等級によって使えるサービスは変化しますが、たとえ軽度の等級であっても障害者手帳を保有することによるメリットは大きいです。
障害者であれば、積極的に障害者手帳を活用しましょう。これによって減税や補助を受けることができ、日々の支出を大幅に減らすことができます。
家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。
障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。
ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。
そこで、当サイトでは完全無料で障害者グループホームを紹介するサービスを日本全国にて実施しています。「いますぐ入居したい」「いまの障害者グループホームから他の施設へ移りたい」「強制退去となり、新たな施設を探している」など、軽度から重度の障害者を含めてあらゆる方に対応しています。