障害者グループホームで問題になりやすい事件として、利用者の脱走があります。軽度の知的障害や精神障害であったり、難病患者であったりする場合、ある程度の判断能力があるので大きな問題にはなりにくいです。

ただ重度の知的障害者や精神障害者の場合、障害者施設から脱走してしまうことがあります。この場合、全国ニュースになるのも普通です。

しかし、障害者の脱走を防ぐのは現実的に不可能です。彼らを完全に施錠して施設内に閉じ込めるのは拘束と同じになってできません。そのため、私たちは「脱走は存在するもの」と受け入れるしかありません。

それでは実際のところ、障害者の脱走についてどのように考えればいいのでしょうか。障害者施設で問題となる利用者の脱走を解説していきます。

障害者施設での外出と脱走は区別が難しい

グループホームの入所者について、法令違反をしている施設を除き、すべての施設で利用者は自由に外出できます。昼間に玄関に鍵をかけないのは当然として、どこへ行くのかについても自由なのです。

もちろん、どこへ行くのか事前に介護職員が知っておく必要があります。そこで以下のようにホワイトボードを利用するなど、誰がどこへ行き、何時に戻るのかわかる状態にしておくのです。

食事の時間は決まっていますし、門限もあるため、遠出をすることはできません。ただ近場であれば、障害者施設の利用者は外出が自由です。

そのため外出なのか、それとも脱走なのかを見極めるのは困難です。単なる外出は毎日の出来事なので、「外に出る=脱走」とはなりません。

また本人の精神状態にも大きく依存します。外出時は気分が落ち着いていたとしても、出先で急な不安に襲われ、「グループホームに帰りたくない」と思うかもしれません。要は、外出と脱走の見極めは現実的に不可能です。

完全な施錠は無理であり、脱走は普通

実際のところ、障害者施設から知的障害者・精神障害者が脱走することはよくあります。こうした障害者は自宅で過ごしても、グループホームで過ごしても脱走します。

このとき介護施設によっては、脱走がほぼ無理な構造になっているケースがあります。例えば特別養護老人ホーム(特養)の場合、利用者はほぼ車いす生活であり、日常的に医療的ケアを必要としています。

こうした特殊な老人ホームの場合、構造的に脱走が非常に難しいように建物を設計できます。一方で障害者グループホームの場合、前述の通り利用者は自由に外出できます。重度の知的障害や精神障害があっても、車いすなしに自由に動けたり、日常的な医療ケアが必要なかったりするケースも多いです。

さらには、軽度の知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者も一緒に生活しています。こうした人たちを含め、施設内に鍵をかけて閉じ込めるのは拘束と同じであり、虐待と同じです。また外出が自由である以上、障害者が外へ出ていくことを止めることはできません。

以下は実際の障害者グループホームの玄関であり、毎日、ここから利用者が自由に出入りしています。

なお昼であれば、リビング(交流ルーム)や事務室に介護職員がいます。ただ夜では、必然的に人手が少なくなるので利用者すべての管理をするのは無理です。

このとき外部の侵入者を防ぐため、夜に玄関を施錠することはよくあります。グループホームには門限があるため、夜に利用者が外へ出ることはないので玄関の施錠自体は特に問題ありません。ただ施設利用者が脱走をするとき、玄関からではなく、1階または2階の窓から逃げることがよくあります。

このような現状を考えると、障害者グループホームで利用者の脱走を防ぐのがいかに不可能かわかります。

脱走があったときの一般的な手順

それでは、実際に行方不明者が発生した場合の対処はどのような流れになるのでしょうか。前述の通り外出と脱走は区別が難しいです。また夜に脱走する場合、介護職員の人出は足りないですし、職員が仮眠を取っているケースも多いです。

そのため脱走が起こったとしても、数時間ほどは誰も気づかないのが一般的です。ただ障害者グループホームでは、食事の時間や門限が決まっています。例えば以下のようになります。

  • 昼食:12:00
  • おやつ:15:00
  • 夕食:18:00
  • 門限:22:00

例えば、朝は利用者で一緒に朝食を取ることになるため、このときに全員がいることを職員が確認できます。

ただ、食事の時間や門限になっても利用者が戻ってこなかったり、朝食のときにいなかったりすると、当然ながら介護職員は慌てます。「何か事件・事故に巻き込まれたのでは」「脱走し、路上で倒れているのでは」と考えるのです。そこで、スタッフが近隣を捜索します。

それでも見つからない場合は親族へ報告しますし、場合によっては警察に依頼して捜索してもらうこともあります。

なお障害者グループホームによっては、利用者に「名前」「グループホームの名称と住所」が書かれたネームカードをもたせていることがあります。第三者が障害者を発見し、障害者が警察に保護されると、ネームカードが役立って障害者はグループホームに連れてこられます。

ただ、ネームカードの威力が発揮されるのは「第三者に発見され、警察に保護されたとき」です。それ以外の場合では効果がないため、行方不明者の捜索は困難を極めます。

行方不明がニュースになり、警察が動くケースは多い

障害者グループホームから行方不明者が発生することにより、ニュースになるケースもよくあります。この場合は警察が動き、情報を素早く集めるために障害者の名前や顔が公開され、脱走地域周辺をメインに日本全国規模での捜索となります。

例えば以下は、障害者グループホームから重度の知的障害者が脱走し、行方不明になったときのニュースです。

重度の知的障害者であるため会話はできないものの、自分の力で動くことができます。また防犯カメラより、2階の窓から真夜中での脱走であることがわかっています。

参考までに、脱走したのは真夜中の午前0:30ごろであると監視カメラからわかっており、脱走が判明して警察に通報があったのは午前8:35です。ここまで説明した通り、障害者の行方不明が判明するのが数時間後になるのを避けることはできません。

なお残念なことに、脱走した障害者はその後、海でおぼれて死亡した状態で発見されています。またこうした最悪の事態ではなくても、脱走後に熱中症で倒れて保護されるなど、何かしらの事件・事故に巻き込まれていることはよくあります。

脱走を防ぐのは現実的に不可能

介護現場に詳しくない人であれば、「なんで玄関に施錠をしたり、監視したりしないのだ?」と思うかもしれません。ただここまで述べた通り、障害者グループホームが利用者の脱走を完全に防ぐのは不可能です。

常に玄関を施錠すると虐待であり、処罰の対象になります。また監視するとはいっても、利用者は自由に外出できるため、監視も何もありません。夜は玄関を施錠するとはいっても、窓から脱出されるケースもあります。

精神科病院や特別養護老人ホームのように、物理的に利用者が脱出できない構造を施設に作れない以上、行方不明者を出さないのは何をどう対策をしても100%無理なのです。

なお自宅で過ごしていても障害者の脱走は何度も起こります。障害者のケアを親族が行うのは、非常に手間がかかります。軽度であれば問題ないものの、特に重度の知的障害者・精神障害者では家族の負担が大きいです。そのため障害者グループホームというのは、家族の負担軽減に大きく寄与しています。

また障害者施設で生活を送ることにより、障害者は昼間に働き、さらにはほかの人との共同生活を通して規則正しい生活を送れるようになります。これは、「障害者が関わる事件・事故の減少」に大きく寄与しています。

ただ障害者によって起こされるすべての事件・事故を介護職員が防ぐことはできません。そのため「脱走を防ぐことは不可能である」と健常者を含めて全員が認識し、ある程度は許容しなければいけません。

障害者施設の利用者の脱走・行方不明は仕方がない

防ぐのが100%の確率で不可能なのが障害者グループホームでの脱走です。精神科病院や特別養護老人ホームとは異なり、こうした障害者施設では昼間の施錠ができず、むしろ利用者は自由に外出できるようになっています。

当然、介護職員が利用者の外出を止めることはできません。また夜に玄関を施錠していたとしても、窓からの脱走は普通です。

そのため、障害者グループホームで「行方不明者の発生は起こるもの」とあきらめなければいけません。凶悪犯罪の発生を完全にゼロにするのが不可能なのと同じように、障害者の脱走を防ぐのも不可能なのです。

こうした事実を受け入れ、障害者と共生していく必要があります。「夜に施錠する」「ネームカードをもたせる」などの対策は可能ですが、脱走そのものをゼロにはできません。そこで、私たちはある程度の許容をして障害者を受け入れなければいけません。

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家賃のほとんどが自治体から助成され、食費や水道光熱費など、必要最低限の出費で住めるシェアハウス形式の施設が障害者グループホームです。介護スタッフが常駐しているため家族の負担はゼロになり、親亡き後問題も解決できる施設となります。

障害者グループホームは一般的に「空きが少ない」といわれています。ただ、それは「担当者が知っている範囲で空きがない」というだけであり、実際には多くの空きがあります。近隣の自治体まで含めれば、すぐに入居可能な障害者グループホームはいくつも存在します。

ただ障害者グループホームによって居住に関するルールは大きく異なり、利用者(障害者)にとって最適な施設を選ばなければいけません。

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