糖尿病によって継続的に治療を受けている人はたくさんいます。1型糖尿病や2型糖尿病と種類はあるものの、糖尿病によって日常生活に支障がある場合、障害年金に申し込むことができます。

もちろん、単に糖尿病を発症しているだけの状態では、薬を使用していれば健常者と同じです。そのため、糖尿病があるという事実だけでは障害年金を得られません。継続した治療をしているにも関わらず、症状が安定しない場合に障害年金を利用できます。

それでは、糖尿病で障害年金に申し込める基準としては何があるのでしょうか。また、糖尿病の症状が進行して合併症となった場合はどうなるのでしょうか。

糖尿病で障害年金を得るときの注意点を知っておけば、どのような人で利用できるのかわかります。そこで、1型糖尿病や2型糖尿病で障害年金を得る方法を解説していきます。

1型糖尿病や2型糖尿病で障害年金を申請可能

すい臓の機能がなくなっており、主に若い人で発症するのが1型糖尿病です。1型糖尿病はやせている人が多いです。一方で肥満体型が多く、生活習慣が悪いために発症するのが2型糖尿病です。糖尿病患者の大多数は2型糖尿病です。

こうした糖尿病について、障害年金を申請するのは可能です。ただ、糖尿病と診断されたら障害年金を得られるわけではなく、糖尿病に付随して発症する低血糖や合併症について、障害年金へ申請できます。

そのため、糖尿病を発症した後にかなりの年月が経過しないと障害年金へ申請できないと考えましょう。糖尿病というのは、適切に治療すれば、症状が進行するのは非常に遅いからです。

また1型糖尿病は完治が無理であるものの、2型糖尿病は生活習慣を変えれば寛解(症状なしの状態)が可能です。そのため、糖尿病で申請は可能であるものの、「糖尿病を発症している」という事実だけで障害年金を得ることはできないのです。

糖尿病で障害年金を得る基準と対象者

それでは、どのような人で障害年金を得られるのでしょうか。糖尿病患者で障害年金を得るとき、以下の状況が該当します。

  • 障害年金3級:血糖コントロール不良
  • 障害年金1級・2級:合併症を発症

それぞれについて確認していきましょう。

血糖コントールが不良な場合は障害年金3級

糖尿病と診察された初診日に本人が会社員または公務員の場合、障害年金3級を得ることができます。個人事業主では無理ですが、厚生年金に加入している場合は障害年金3級を受けられるのです。

糖尿病と診断された後、薬物治療となります。1型糖尿病では最初からインスリン治療になりますし、2型糖尿病についても症状が重くなれば飲み薬だけでなくインスリン治療が追加となります。

このとき、検査前に90日以上継続してインスリン治療をしているにも関わらず、以下のうちどれかに該当する場合は障害年金3級に該当します。

  • 内因性インスリン分泌が枯渇しており、 空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満
  • 意識障害により自己回復ができない重症低血糖が平均して月1回以上
  • 糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上

要は、低血糖などによって意識障害が起こるほどの状態の場合、障害年金3級に申し込めるというわけです。

単なる糖尿病では障害年金の対象外であり、インスリン治療が必須になります。またインスリン治療をしている人の中でも、血糖コントロールが悪い場合に利用できる制度が障害年金3級というわけです。

合併症の場合、部位ごとに障害認定を行う

ただ糖尿病の症状が進行すると、さまざまな合併症を生じるようになります。糖尿病に起因する合併症としては以下が有名です。

  • 糖尿病性網膜症:目の障害
  • 糖尿病性腎症:腎臓の障害
  • 末梢神経障害:四肢の障害

合併症については、症状が出ているそれぞれの部位について診断書を作成します。例えば糖尿病性網膜症の場合、目の障害であるため、障害年金の認定基準は「目の障害に関する認定基準」と同じになります。

つまり糖尿病で障害年金が認定されるのではなく、「目の障害」「腎臓の障害(人工透析など)」「四肢の障害(足の切断など)」にて障害年金が認定されると考えましょう。同じ糖尿病であっても、合併症の内容によって認定基準や得られる障害年金の等級は異なるのです。

なお糖尿病による網膜症や腎症、壊疽、神経障害、動脈閉鎖症は合併症として認められます。一方で脳出血や脳梗塞などは糖尿病と関係なく、糖尿病とは別の病名にて障害年金の申請を考えなければいけません。

初診日の確定が糖尿病で最も難しい

それでは、1型糖尿病・2型糖尿病で障害年金を受けるときに最も重要なポイントは何でしょうか。これは、初診日の確定です。医療機関に対して以下の書類に記載してもらうことにより、初診日が確定します。

糖尿病を発症して症状が現れるまで、20年以上の年月が必要になるのは普通です。障害年金の申請では、必ず初診日が必要になります。そのため、糖尿病で初めて受診した医療機関に問い合わせてカルテの入手をしなければいけません。

ただカルテ(診療録)の法的な保存期間は5年です。そのため、5年以上前のカルテを探しても存在しなかったり、そもそも対象の医療機関が閉院していたりするケースがあります。その場合、初診日の証明をすることができません。

初診日を証明できる書類がなくても対処法はありますが、その他の証明書類の提出が必要であり、証明が非常に困難になると考えましょう。参考までに、最初の糖尿病手帳や妊娠時の母子手帳(妊娠糖尿病)で初診日を判定できた事例はありますが、カルテが残っていない場合はこうした書類が必要になります。

・早めに証明書類を取得しておく

そのため、いま糖尿病によって低血糖の症状や合併症がなかったとしても、「初診日を証明できる糖尿病の資料を早めに取り寄せておく」のは有効です。

たとえ障害年金を申請しなかったとしても、初診日がわかる書類を事前に入手しておくと安心です。実際に障害年金を申請するようになった場合、何十年も前の受診であっても問題なく対処できるようになるからです。

治療内容や診断書は重要

なお1型糖尿病・2型糖尿病で障害年金を受け取るとき、初診日のほかに重要なのは治療内容や診断書になります。

  • インスリン治療をいつから、どの頻度で実施しているのか
  • 食事療法・運動療法の詳細や検査結果はどう変化したのか
  • インスリン注射による副作用はどの程度か

これらを詳細に記載する必要があります。

また、「あなたが日常生活をする上で困難な点」について、医師の診断書に記載されている必要があります。診断書の内容によって障害年金を受け取れるかどうかが大きく異なるため、診断書の内容が正しく記載されているか確認する必要があります。

糖尿病の症状悪化で障害年金へ申請する

1型糖尿病や2型糖尿病を発症している人は多いです。こうした人の大半は普通に働いていますが、糖尿病による症状悪化で障害年金に申し込むことができます。

会社員や公務員の場合、血糖コントロールの悪化によって障害年金3級が可能です。また合併症によってより症状が悪くなった場合、障害年金1級・2級の申請を行うことができます。

ただ糖尿病の場合、障害者として生活しなければいけなくなるほど症状が悪化している状況になるまでには、初診日から数十年の年月が経過しているのは普通です。そのため、初診日の証明が大変になりがちです。それに加えて、医師の診断書に詳細が反映されていることを確認しましょう。

糖尿病によって障害年金に申し込むことはできます。ただ、糖尿病によって低血糖状態が何度もあったり、合併症を併発していたり、それなりに症状が進行している人で利用できる制度が障害年金です。そこで、糖尿病の状態が悪い場合は障害年金に挑戦しましょう。

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