障害者グループホーム(共同生活援助)を開業するとき、最初は何をすればいいのかわかりません。開業の流れはあるものの、初め方を多くの人が知らないのです。
共同生活援助の経営では、利用者によるトラブルがひんぱんに発生します。そのため、一般的なビジネスの立ち上げとは異なる方法を考える必要があります。特に、いきなり開業を考えると多くのケースで失敗します。
それでは、障害者グループホームの作り方としては何があるのでしょうか。共同生活援助を立ち上げるときの始め方について解説していきます。
もくじ
最初に現場・世話人を経験することから始める
障害者グループホームの立ち上げを行うとき、「資金はいくら必要なのか?」「採用をどうしようか?」と多くの人が考えます。ただ、この場合はほぼ確実に共同生活援助の運営に失敗します。
既に障害者グループホームのサービス管理責任者または世話人として、ある程度の経験を有するなら特に問題ありません。ほかには、就労継続支援B型や生活介護など、他の障害福祉サービスに関わっている人についても問題ないです。
ただ、完全なる新規参入で知識なしに障害者グループホームを立ち上げると、ほぼ確実に失敗します。これは、障害者の性質を理解していないからです。
そこで新規参入の場合、どこかの障害者グループホームにて、お金を払ってもいいので無償にて世話人として働かせてもらいましょう。
共同生活援助でトラブルは日常茶飯事
なぜ、最初に現場を経験するべきかというと、健常者と障害者では性質がまったく異なるからです。通常では経験しないことであっても、障害者グループホームを運営する場合は毎日のように発生します。
- 利用者が暴れ、警察の厄介になる
- 窓を割って利用者が脱走し、警察を巻き込んで大捜索に発展する
- 海上保安庁から「あなたの入居者がいたずら電話を何度もするため、法的措置を取る」といわれる
- なぜか廊下にウンコが落ちている
これらは普通です。また、夜に眠れず奇声を上げる人がいたり、急に不穏に陥ってドアを蹴飛ばしたりするのは当たり前です。
そこで、まずは「障害者との接し方やトラブルへの対処法」を学ばなければいけません。こうした現場の内容を理解せず、障害者グループホームを新規参入で立ち上げるとトラブルに対処できないというわけです。
少なくとも、3か月以上は現場を経験するといいです。こうした経験を積めば、「見学・体験入居のときにどう対処すればいいのか」「役所との接し方」なども含めてわかるようになります。現場を理解しないと障害者グループホームの経営は無理なので、まずはこの経験をしなければいけません。
具体的な開業までの流れ
それでは、障害者への接し方をある程度まで理解したとして、次は実際に開業に向けて準備をしましょう。以下の作業が必要になります。
- 開業する都市を決める
- 融資を受ける
- 物件探しをする
- サービス管理責任者を雇う
それぞれについて確認していきましょう。
どの都市で障害者グループホームを立ち上げるのか決める
共同生活援助の立ち上げで最初に決めるべきは「どの都市で開業するのか」になります。都市によって障害者福祉に対する温度感は大きく異なり、開業の難易度は違います。
例えば横浜市や川崎市での開業を考える場合、圧倒的に難易度は高いです。行政が開業許可を出さないからです。要は、これらの都市は障害者福祉に対して積極的ではなく、障害者に冷たい都市となります。一方、千葉県は障害福祉の充実に積極的です。
また、「知的障害者向けなら開業可能だが、精神障害者メインのグループホームは許可が下りにくい」など、都市によって独自の判断基準があります。
何も考えずに開業する都市を決めると失敗します。そこで、開業予定の都市で「障害者グループホームの許可を取得できるかどうか」を事前に確認しましょう。
融資により、資金調達を行う
そうして、開業する都市を決めたら資金調達を行います。障害者グループホームの開業では、4~6人が入居できる一軒家やアパートを利用して開始することになります。そうしたとき、ザックリと以下の初期費用が必要になります。
- 賃貸契約:100万円(家賃の5倍)
- 消防設備:90~100万円
- 家具・家電製品:約200万円
- サービス管理責任者の採用費用:100~150万円
法人関係の費用を除いても、500万円ほどの費用が最初に消えます。また運転資金を含めると、少なく見積もって1000万円は必要です。そこで、以下の制度を活用しましょう。
- 地元の銀行・信用金庫
- 日本政策金融公庫
- 各自治体の融資制度
一般的には、開業する都市に存在する地域の銀行・信用金庫に融資してもらいます。それに加えて、日本政策金融公庫や各自治体の融資制度を活用することで資金調達しましょう。
物件探しを行い、賃貸で借りる
なお特別な理由がない限り、障害者グループホームでは賃貸物件を利用します。一軒家やアパート・マンションと施設によって形態は異なるものの、いずれにしても賃貸を活用するのです。例えば、以下は実際に障害者グループホームとして運営されている物件です。
新たに建築するとなると、初期費用が高額になってリスクが高いです。また、次の棟を作るにしても資金調達が困難になりやすいです。そこで、賃貸物件を活用するのです。
なお障害者グループホームは法律に従う必要があり、以下の物件が最適です。
- 延床面積が200m2以下
- 一部屋が7.43m2(約4.5畳)以上
- 市街化調整区域でない
また、すべての障害者グループホームで消防法を守る必要があり、自動火災報知機や誘導灯の設置が義務になっています。
一軒家であれば問題ないものの、ワンルームでの開設では「マンションすべての部屋に自動火災報知設備の設置が必要」となるケースがよくあり、大家の許可が下りなかったり、初期費用が高くなったりします。そのため、一軒家やファミリータイプのアパート(3LDKなど)よりも、一般的にワンルームでの開業のほうが難易度は高いです。
サービス管理責任者の採用を進める
障害者グループホームでは必ず採用が必要になります。このとき、立ち上げで必須となる資格者にサービス管理責任者(サビ管)があります。サービス管理責任者を採用できない場合、開業できません。
そこで、サービス管理責任者の採用を進めましょう。多くの場合、求人サイトを利用してサビ管の募集を行います。
また、必要に応じて世話人などの募集も行います。障害者グループホームの人員配置は以下が必要になります。
- 管理者
- サービス管理責任者
- 世話人
- 生活支援員
それぞれの役割は兼務できます。そのため、すべての職務について、それぞれ人を雇う必要はありません。特に一棟目では利益がほとんどないため、多くの役割を兼務することで少人数でのスタートになるのが一般的です。
相談支援事業所や病院へ営業に行く
それでは、障害者グループホームを立ち上げれば自動的に利用者(障害者)が来るかというと、当然ながらそのようなことは起こりません。利用者獲得のため、自ら動く必要があります。要は、開業後に何も対策をしないと「半年が経過しても利用者ゼロ」は普通です。
そこで、まずは相談支援事業所へ営業に行きましょう。事前にアポイントを取り、資料(パンフレット)を持参してあいさつに行くのです。
相談員が障害者に付いた後、相談員が「○○という障害者グループホームに空きがあるのですが、どうですか?」という案内をします。このとき、相談員があなたの施設を把握していなければ紹介できません。そこで、隣の都市を含めて相談支援事業所へあいさつに行くのです。
また、病院へのあいさつも必要です。病院には医療ソーシャルワーカー(MSW)が働いています。受け入れ先のない入院患者の退院を考えるとき、医療ソーシャルワーカーから障害者グループホームへ連絡が入ります。
そこで、病院の医療ソーシャルワーカーにあなたの施設を認識してもらう必要があります。認識してもらうことで、ようやく病院から利用者受け入れの連絡が入るようになります。
紹介サイトへ登録し、自動で利用者を集める
また、「障害者グループホームへの入居を考えている利用者を集客してくれる紹介サイト」へ登録するのも必須です。こうした紹介サイトは多くの場合、完全成果報酬にて利用者を紹介してくれるため、リスクはありません。
仮に体験入居の後、利用者が入居まで至らなかった場合、特別な費用はありません。また紹介料の発生はあるものの、利用者が支払う費用(家賃や水道光熱費など)は対象ではありません。そのため、利用者が家賃負担分を支払ってくれる分だけ、むしろ紹介してもらうほどキャッシュフローは改善します。
サービス管理責任者や世話人の採用で求人サイトを利用するのは普通です。これと同じように、利用者についても紹介サイトを活用することで、成果報酬&リスクなしにて障害者を受け入れるといいです。
共同生活援助の始め方を理解する
既に障害者福祉で経験がある場合、どのように共同生活援助を立ち上げればいいのか調査すればいいです。ただ新規参入の場合、3か月でもいいので必ず現場を経験しましょう。そうしないと、ほぼ確実に失敗します。
そうして現場を経験したら、ようやく施設を立ち上げる都市を選定します。都市によって障害者グループホームを開業する難易度は大きく異なります。また資金調達や物件探し、サービス管理責任者の採用も進めましょう。
ただ開業後、何もしないと利用者は集まりません。そこで営業する必要がありますし、紹介サイトへの登録も必須です。
障害者グループホームの作り方には、正しい手順があります。そこで始め方の流れを理解して、適切な方法にて共同生活援助を立ち上げましょう。