障害者で十分に仕事を行えないなど、生活困窮者になってしまう人はたくさんいます。こうした状況で生活保護を受けている人は多く、さらには生活保護受給者向けの保護施設を利用できます。

こうした保護施設には複数の種類があり、目的や中身が異なります。こうした保護施設には救護施設・更生施設・授産施設・宿所提供施設・医療保護施設があります。

なお障害者は働けないことに加えて、介護スタッフによる介助があることで生活できるようになる人は多いです。そのため、障害者で保護施設を利用する人は多いです。そこで、それぞれの保護施設の種類や違いについて解説していきます。

生活保護法の保護施設の種類

生活保護受給者に対して、住む場所を提供する施設が保護施設です。すべての人ではないものの、保護施設を利用する人は障害者が多いです。これら保護施設の種類は以下のようになっています。

  • 救護施設
  • 更生施設
  • 授産施設
  • 宿所提供施設
  • 医療保護施設

それぞれの施設について確認していきましょう。

救護施設は障害者が長く住める場所

保護施設の中でも、施設数や利用人数が最も多い施設が救護施設です。救護施設を利用する人は障害者がほとんどであり、生活保護を受けている人が利用します。

知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者を含め、障害者に対して生活扶助を提供する施設が救護施設になります。生活扶助が提供されるため、施設内では食事や入浴などのサービスが提供されるだけでなく、作業訓練やリハビリ、クラブ活動なども行われます。

救護施設を利用する人は一般的に高齢者が多いです。若い人であっても障害者であれば利用できますが、生活保護受給者である必要があるため、若い人よりも年齢の高い人がメインの利用になるというわけです。

なお救護施設に入居すると、長く施設内で生活する人が多いです。10年以上、救護施設で生活し続けるのは普通と考えましょう。

更生施設は社会復帰を前提に指導が行われる

更生施設についても、救護施設と同様に「知的障害者や精神障害者、身体障害者などの障害者に対して生活扶助を提供する施設」になります。救護施設との一番の違いは施設の利用目的であり、更生施設は利用者の社会復帰を前提としています。

救護施設の場合、入所後はずっとその施設で過ごせます。それに対して更生施設は利用者の将来を見据え、社会生活を送るための指導が目的になり、退所が前提となります。そのため、更生施設を利用する人は1~2年ほどの利用期間になります。

独り立ちが前提となるため、救護施設に比べて更生施設の利用者は年齢が若くなります。また、どこかの時点で退所することになるため、軽度の障害者が利用対象になりやすいです。

なお更生施設では、犯罪者や薬物依存者も含めて受け入れています。障害をもつ犯罪者について更生の機会を与え、社会復帰を目指していく施設が更生施設です。

授産施設では就労やスキル習得の技術を教える

生活保護で利用できる授産施設は「障害者に対して簡単な仕事を与え、就労技能を学ばせる施設」になります。つまり、授産施設では障害者に対して職業指導が行われ、労働の対価として工賃を得られることが前提となっています。

なお厚生労働省の資料によると、生活保護授産施設では、生活保護受給者の利用割合が73.7%です。その他の保護施設(救護施設や更生施設など)では生活保護受給者の利用が多いものの、授産施設では生活保護でない利用者が4分の1になっています。

また授産施設では、障害ありの利用者の割合が37.1%であり、障害なしの割合が62.9%です。つまり、障害なしの人が多く利用しており、必ずしも障害者である必要はありません。

なお授産施設について、更生施設との違いを気にする人は多いです。更生施設では社会復帰を目指すため、生活指導が中心になります。一方で授産施設の場合、職業指導がメインになります。また更生施設とは異なり、授産施設には長期で滞在している人もいます。

このとき授産施設では、入所型だけでなく通所型により、「授産施設へ通うことで生活保護受給者が就労スキルを身に付ける」ことも可能です。

宿所提供施設は生活保護受給者に宿を提供する

救護施設や更生施設、授産施設では利用者に対して、介護スタッフによる生活扶助が提供されます。そのため利用者は日中活動を行い、昼間に作業訓練やリハビリを行うのが一般的です。

それに対して、住む場所のない生活困窮者に対して住宅扶助を提供するサービスが宿泊提供施設です。つまり、生活保護受給者に宿(住む場所)を提供するサービスです。

その他の保護施設とは異なり、介護スタッフによる介助を期待することはできず、住む場所を与えられるだけになります。食事の提供はあるかもしれませんが、寝泊まりできる場所を短期で借りられると考えましょう。

なお、似ている施設に無料低額宿泊所があります。運営主体は異なるものの、宿所提供施設と無料低額宿泊所はサービス内容がほぼ同じと考えればいいです。

医療保護施設は医療を必要とする人で利用

生活保護法による保護施設のうち、医療保護施設は「医療を必要とする人」が利用します。医療が必要であるため、100%の確率で身体障害者や精神障害者などの障害者が対象です。

医療保護施設というのは、要は病院になります。病院にて通常の患者を受け入れるものの、医療保護施設としての機能も備わっている病院が存在します。

医療保護施設として対応している病院は少ないです。ただ生活保護で医療的ケアが必要な場合、医療保護施設を利用することで療養できます。障害者の中でも、常に医療が必要な最重度の生活保護受給者が医療保護施設の利用対象です。

利用者の年齢層は異なる

それでは、それぞれの施設でどのような違いがあるのか詳しく確認していきましょう。施設が違えば、利用者の年齢層も異なります。

このとき厚生労働省の資料によると、利用者の平均年齢は以下のようになっています。

保護施設平均年齢
救護施設64.7歳
更生施設53.7歳
授産施設55.4歳
宿所提供施設51.4歳

※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業

救護施設では、利用者の7割以上が60歳以上です。利用者の年齢が高いのが救護施設の特徴です。それに対して、更生施設や授産施設、宿所提供施設では救護施設よりも利用者の年齢が低くなっています。

また生活保護受給者が対象になるためか、保護施設の利用者で若い人は全体的に少ない傾向にあります。障害者施設では若い人が多く利用している一方、保護施設では年齢層が高くなりやすいです。

入所期間は施設によって異なる

それでは、それぞれの保護施設での入所期間はどのようになるのでしょうか。先ほどの厚生労働省の資料では以下のようになっています。

保護施設平均入所期間
救護施設11年2か月
更生施設1年4か月
授産施設7年5か月
宿所提供施設2年9か月

※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業

更生施設は独り立ちを前提としているため、2年以内に約8割の人が退所します。宿所提供施設については、1年以内に約8割の人が退所します。なお宿所提供施設は利用が原則3か月であり、あくまでも一時的な利用に留まります。

それに対して、救護施設や授産施設は利用期間に定めがないです。そのため10年以上など、長期で利用している生活保護受給者は多いです。

障害者の割合はどうか

また生活保護の場合、障害者の割合が多くなります。特に保護施設を利用する場合、障害者がメインになりやすいです。このとき、それぞれの保護施設で障害ありの利用者は以下の割合になっています。

保護施設障害あり
救護施設86.2%
更生施設46.1%
授産施設37.1%
宿所提供施設35.8%

※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業

救護施設の場合、利用者はほぼ障害者です。そのため知的障害者や精神障害者、身体障害者など、何かしらの障害を有している場合に救護施設が有効です。一方で更生施設については、障害者の割合は半分ほどです。そのため、必ずしも障害者である必要はありません。

それに対して、授産施設や宿所提供施設では障害者の割合が減り、健常者のほうが多く利用しているとわかります。

ただ、「障害者の割合は全人口のうち約7%」といわれています。7%に比べると授産施設や宿所提供施設で障害ありの利用者の割合は高く、やはり保護施設では多くの障害者が利用しているとわかります。

保護施設の種類と違いを学ぶ

生活困窮者の場合、住む場所の確保が難しいです。そうした生活保護受給者については、保護施設を活用できます。

障害者の利用がメインであり、長期で生活できる施設が救護施設です。それに対して、利用者の独り立ちを目的として生活指導をする施設が更生施設です。救護施設とは異なり、更生施設では1~2年ほどで退所となるのが一般的です。

また授産施設では利用者へ働く場を提供し、スキル習得が一番の目的になります。また宿所提供施設では、宿の提供が目的になります。それに対して、常に医療的ケアが必要な生活保護の障害者は医療保護施設の利用対象になります。

保護施設には種類があり、それぞれ利用者や対象者、目的が異なります。これらの違いを理解して、どの施設が最適なのか見極めましょう。

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