障害者向けのサービスで居宅介護や重度訪問介護を活用している人は多いです。こうした障害福祉サービスに加えて、医療的ケアが必要な人は在宅医療を依頼することになります。

在宅医療で重要なサービスに訪問看護があります。在宅看護として看護師が自宅に出向くことにより、障害者に対して医療的ケアを提供できるようになります。

このとき、居宅介護や重度訪問介護などのホームヘルプと訪問看護を問題なく併用できます。また、同じ時間にホームヘルプと訪問看護を同時併用することで、介護士と看護師の両方にサポートしてもらうこともできます。

障害福祉サービスと訪問看護はまったく別の制度です。そこで、どのように居宅介護・重度訪問介護と訪問看護を活用すればいいのか解説していきます。

障害福祉サービスと訪問看護は別の制度

65歳未満の障害者向けのサービスとして障害福祉サービスがあります。障害支援区分や障害福祉サービス受給者証を得ることにより、障害福祉サービスを利用できるようになります。以下は障害福祉サービス受給者証です。

障害福祉サービス受給者証があることで、ようやく居宅介護や重度訪問介護の事業所へサービス提供を依頼できるようになります。

それに対して、在宅医療を自宅で受けるときは障害福祉サービス受給者証が不要です。事実、在宅看護によって看護師を依頼するとき、障害福祉サービスを利用していない人はたくさんいます。つまり、障害福祉サービスと訪問看護はまったく別の制度になります。

医療保険を利用して訪問看護を利用する

それでは訪問看護はどういう制度かというと、訪問看護では医療保険または介護保険を利用します。特に65歳未満の障害者の場合、基本的に医療保険を利用して訪問看護を活用します。

居宅介護や重度訪問介護などの障害福祉サービスを利用していない人であっても、病院・クリニックを受診して、薬局にて医薬品を受け取ることができます。これと同じように、障害福祉サービスを利用しているかどうかに関係なく、必要であれば在宅医療・在宅看護を依頼できます。

また、障害福祉サービスを利用している人が医療機関を受診するのは普通です。同じように、居宅介護や重度訪問介護などの障害福祉サービスを利用している人について、医療保険を用いて訪問看護を利用できます。

別の制度であるため、ホームヘルプと訪問看護の両方を利用するのは何も問題ないと考えましょう。

同じ時間に同時併用しても問題ない

なおホームヘルプと訪問看護を利用するとき、同じ時間帯に介護士と看護師を依頼することで、同時併用しても問題ありません。

重度の障害者の場合、ほとんど体を動かせなかったり寝たきりだったりすることがあります。その場合、ホームヘルパーによってベッド上で洗髪や清拭、着替えなどをするとき、例えば呼吸や心臓の状態を確認しながら作業を行わなければいけないケースがあります。

介護士は医療行為をすることができません。そのため、障害者の呼吸・心臓の確認や生命維持装置に関わる操作は看護師が行わなければいけません。この場合、居宅介護(または重度訪問介護)と訪問看護を同時に依頼しなければいけません。

前述の通り、障害福祉サービスと医療保険はまったく別の仕組みです。そのため、両者を同じ時間帯に利用しても問題ありません。

同時併用できないと命の危険がある

そもそも、重度の障害者にとってホームヘルプと訪問看護を同時併用できない場合、命の危険につながります。例えばホームヘルパーが入浴介護をしているとき、生命維持に関わる呼吸器回路の取り外しを家族が行うとなると、トラブルが起こったときに危険です。

また重度訪問介護の場合、24時間体制での介護も可能です。実際に24時間の介護を依頼する場合、併用不可だと在宅看護を利用して看護師を家に呼べません。当然、こうした状況では適切な医療的ケアを受けることはできません。

そのためホームヘルプと訪問看護の同時利用はある意味、当然となります。

・自宅での居宅介護でも、障害者グループホームでも訪問看護を活用できる

参考までに、障害福祉サービスとして障害者グループホームがあります。24時間体制での介護サービスが提供されるため、親族の介護負担はゼロになり、障害者本人にとっても格安にて常時の介護を受けられるサービスとなります。

障害者グループホームは家に住むのと同じですが、訪問看護を併用できます。医療的ケアが必要な場合、訪問看護を利用しなければ日々の生活を送るのが難しくなるからです。

いずれにしても、障害福祉サービスと訪問看護は同時併用できます。同様に、ホームヘルプと訪問看護も併用可能というわけです。

介護保険は関係なく、あくまでも医療保険の利用

なお制度を正しく理解していない役所職員の中には、「居宅介護(または重度訪問介護)について、訪問看護との同じ時間帯の併用が原則できない」と考えている人がいるかもしれません。介護保険では、以下のようになっています。

介護保険(老企第36号)

・同一時間帯に複数種類の訪問サービスを利用した場合の取扱いについて

訪問介護と訪問看護、または訪問介護と訪問リハビリテーションを同一利用者が同一時間帯に利用する場合は、利用者の心身の状況や介護の内容に応じて、同一時間帯に利用することが介護のために必要があると認められる場合に限り、それぞれのサービスについてそれぞれの所定単位数が算定される。

つまり、介護保険では原則として一つの訪問サービスしか利用できません。ただ、これは65歳以上向けの介護保険を利用する場合についての内容です。65歳以上の場合、介護保険として訪問看護や訪問介護(ホームヘルプ)を利用します。

ただ65歳未満の障害者の場合、利用するのは訪問介護ではなく、障害福祉サービスでの居宅介護(または重度訪問介護)です。また、在宅医療・在宅看護を依頼するにしても介護保険ではなく、利用するのは医療保険です。こうした事実から、介護保険は全く関係ないとわかります。

65歳未満の障害者にとって、介護保険は基本的に関係ありません。もし役所職員が勘違いをしており、「居宅介護(または重度訪問介護)と訪問看護を同時併用できない」といわれた場合、弁護士や厚生労働省の障害福祉課など第三者を利用してもいいので必ず間違いを指摘しましょう。

ホームヘルプと訪問看護を併用する

重度の障害者である場合、医療的ケアが必要になります。こうした障害者で動くのが難しい場合、在宅医療・在宅看護を依頼するのは普通です。

また自宅で過ごしている障害者の場合、多くの人が居宅介護や重度訪問介護を活用します。こうしたとき、ホームヘルプと訪問看護は併用できます。また、同じ時間帯にて同時併用しても問題ありません。

同時併用できない場合、当然ながら障害者は命の危険になります。ホームヘルパーによって介助をしてもらいつつ、看護師によって生命維持装置の管理や臓器(呼吸・心臓など)の状態を確認してもらわなければいけない場面はどうしても発生します。

そこで、障害者にとってホームヘルプと訪問看護の併用はまったく問題ないことを理解しましょう。障害福祉サービスと訪問看護は異なる制度であるため、両者を有効に利用するといいです。

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