精神障害者では、十分に働けない人が多いです。そうした人で生活保護となっている場合、精神障害者が住む場所の選択肢として授産施設があります。または、精神障害者は通所にて授産施設を利用しても問題ありません。

なお授産施設にて住む場合、将来の社会復帰を目指します。ただ、実際には長く授産施設に住む人はたくさんいます。

それでは、どのような精神障害者が授産施設を利用するのでしょうか。また、授産施設を利用するときに何を考えればいいのでしょうか。精神疾患を有する人が授産施設を活用するときの利用法を解説していきます。

精神障害者で授産施設を利用する

生活保護受給者が利用する施設として保護施設があり、保護施設には複数の種類があります。授産施設は保護施設の一つであり、生活保護受給者であれば授産施設にて生活できます。

保護施設の中でも、授産施設では仕事を通して「就労や技能の修得に必要な機会を与える」ことを目的としています。つまり、施設内にて就労することが授産施設の主な目的になっています。

就労が主な目的であるため、重度の障害者は授産施設を利用できません。ただ、ある程度まで症状が落ち着いている場合、授産施設の利用が適切です。

・社会復帰を目指すが、長く住む人は多い

授産施設にて仕事を行う場合、多くのケースで工賃を得ることができます。また、障害者が就労の機会を得てスキルを磨くことにより、将来の社会復帰を目指します。

なお授産施設へ生活保護受給者が住むとき、入所期間に対する規定はありません。そのため、精神障害者が授産施設に入居した場合、長く住み続けることも可能です。例えば厚生労働省の資料では、授産施設へ入居する人の平均入所期間は7年5か月です。

それなりに長く入所している人もいるのが授産施設です。いずれにしても、精神障害者はこうした施設を利用して、仕事で必要なスキルを磨けます。

授産施設を活用する精神障害者の割合

このとき、授産施設を利用する人のうち、精神障害者の割合はどれくらいなのでしょうか。授産施設の利用者について、障害者の割合は37.1%です。必ずしも障害者だけが授産施設を利用するとは限らないものの、それなりに障害者が多いとわかります。

これら障害者で授産施設を利用している人について、障害の種類は以下のようになっています(重複回答あり)。

障害の種類割合
身体障害20.8%
知的障害34.7%
精神障害43.0%
発達障害4.1%

※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業

このように、精神障害者の利用割合が非常に高いです。また発達障害は精神疾患でもあるため、やはり多くの精神障害者が授産施設を活用しているとわかります。

・精神疾患の重症度

なお前述の通り、授産施設では施設内で仕事を行うのが一般的です。そのため、重度ではない精神障害者が利用者となります。例えば授産施設を利用する精神障害者について、障害者手帳の等級は以下のようになっています。

障害者手帳の種類割合
1級0.0%
2級52.9%
3級47.1%

※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業

このように重度の精神障害者は利用しておらず、精神障害者保健福祉手帳2~3級の人で利用されているとわかります。

どのような精神疾患で授産施設を利用するのか?

それでは精神障害者について、どのような人が授産施設を利用するのでしょうか。厚生労働省の資料では以下のようになっています。

障害の種類割合
統合失調症47.1%
うつ病・双極性障害11.8%
てんかん5.9%
その他35.3%

※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業

他の保護施設(救護施設や更生施設)では、アルコール依存症・薬物依存症の利用者がいます。ただ授産施設でそうした精神障害者はおらず、統合失調症やうつ病・双極性障害、てんかん、発達障害などがメインとなります。

もちろん、その他の精神疾患を理由に授産施設を利用している精神障害者もたくさんいます。

精神障害者授産施設で行われる日中活動

このとき、授産施設では日中活動を行います。授産施設での日中活動は基本的に作業訓練となり、施設内で作業を行います。このとき行われる作業訓練は以下のような軽作業になります。

  • 箱折り、菓子詰め
  • お菓子・パンの製造
  • パッケージのシール貼り
  • 小物づくり
  • パソコン作業・データ入力

精神障害者はこうした作業訓練を日中に行うことにより、工賃を得ながら社会復帰に向けたトレーニングをしていきます。

精神科デイケアと併用することもある

なお精神障害者の中には、精神科デイケアを活用したいと考える人もいます。入院するほどの重症度ではないものの、精神疾患に対するリハビリが必要な人で精神科デイケアを利用します。

一般的には、精神科デイケアによるリハビリテーションが終わった後に授産施設を利用します。このときの授産施設の利用法としては、通所でも入所でも問題ありません。

ただ精神障害者の中には、生活保護受給者で授産施設に入所している人がいます。精神障害者は症状の変動があるため、これまで授産施設内で作業訓練をしていたものの、精神科デイケアを併用したいと考える人がいるかもしれません。そうしたとき、授産施設から精神科デイケアへ通っても問題ありません。

精神障害者では、就労継続支援B型と精神科デイケアを併用している人がいます。これと同様に、授産施設での軽作業と精神科デイケアの両方を利用するのです。

軽度から中程度の精神障害者が授産施設を利用し、授産施設を利用する人の多くは自ら公共交通機関を用いて外出できます。そのため必要であれば、授産施設の外へ出向いて精神科デイケアへ通うのは問題ありません。

精神疾患を有する人が授産施設を利用する

精神障害者の数は多いです。また精神疾患を有するために十分に働けず、生活保護に陥っている人はたくさんいます。そうした精神障害者で授産施設を利用する人がいます。

軽作業をメインとした仕事を施設内で行うことにより、スキルの向上を目指します。たとえ一般企業で働くのが難しくても、授産施設での作業訓練であれば行えます。このとき、工賃を得ながらの作業訓練になります。

なお通常、軽度から中等度の精神障害者が授産施設を利用します。このとき、一般的には精神科デイケアを卒業後に授産施設を活用しますが、両者を併用しても問題ありません。

精神障害者が生活を考えるとき、生活保護受給者は授産施設という選択肢があります。そこで、生活保護の場合はこうした施設にて軽作業を行うことも視野に入れましょう。

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