一般的には、障害者グループホーム(共同生活援助)で看護師を独自に雇っているケースはほとんどありません。ただ障害者であるため、場合によっては看護師によるケアが必要になるケースがあります。

そうしたとき、訪問看護ステーションなど医療機関との連携を図っている事業所であれば、医療連携体制加算を得ることで月の売上が増えます。また、看護師が常駐している場合は医療的ケア対応支援加算を取得できます。

それでは、医療に関わる加算を得るにはどうすればいいのでしょうか。看護師の配置に関する加算を解説していきます。

医療的ケア対応支援加算と訪問看護ステーションとの連携

看護師を配置することにより、医療的ケア対応支援加算を得られます。看護職員が常勤換算で1.0人以上の場合、医療行為を必要とする人に対して120単位(1日)を算定できます。

こうした報酬であるため、医療的ケアが必要となる利用者数がそれなりにたくさんいないと、看護師1名を配置しても赤字になります。そのため「難病患者を含め、医療的ケアが必要な障害者をメインに受け入れている」「経営者が看護師」という施設を除き、看護師を常に配置している施設は少数です。

・訪問看護ステーションと連携する

日中支援型グループホームであっても、常に医療的ケアが必要な人は少数です。そこで通常、他の医療機関と連携することにより、医療連携体制加算の算定を目指します。

医療連携体制加算であれば、訪問看護ステーションとの連携でも問題ありません。自社で看護職員を雇う必要がないためリスクは少なく、たとえ対象となる利用者が少数でも利用できます。

医療的ケアと非医療的ケアの違い

なお医療連携体制加算を利用する場合、医療行為とそれ以外(非医療行為)で報酬が大きく異なります。厚生労働省による通知では、例えば以下は非医療的ケアに該当します。

  • 体温測定
  • 自動血圧計での血圧測定
  • 切り傷、擦り傷、やけどなど
  • 軟膏塗布、湿布貼付、点眼、一包化された薬の内服、坐薬挿入・点鼻介助
  • 口腔ケア
  • 爪切りや耳垢除去

医療行為でない場合の加算は低いです。一方、医療的ケアが必要な利用者は加算が大きくなっています。

加算を得られる内容は何か

なお、医療連携体制加算には複数の種類があります。そこで、加算の種類や内容を把握する必要があります。医療連携体制加算の種類は以下になります。

  • 医療連携体制加算(Ⅰ):医療的ケア以外を実施(1時間未満)
  • 医療連携体制加算(Ⅱ):医療的ケア以外を実施(1時間以上、2時間未満)
  • 医療連携体制加算(Ⅲ):医療的ケア以外を実施(2時間以上)
  • 医療連携体制加算(Ⅳ):医療的ケアを実施
  • 医療連携体制加算(Ⅴ):看護職員が介護職員へ喀痰吸引を指導
  • 医療連携体制加算(Ⅵ):研修済みの介護職員が喀痰吸引を実施
  • 医療連携体制加算(Ⅶ):日常的な医療ニーズへの対応

それぞれについて確認していきましょう。

医療連携体制加算(Ⅰ~Ⅲ):医療的ケア以外を実施

看護師が障害者施設を訪問して処置をするとき、必ずしも医療的ケアを実施するとは限りません。日々の健康チェックや服薬管理、メンタルケアなど医療的ケアではない行為をするケースがよくあります。

その場合、実施した時間に対して医療連携体制加算(Ⅰ~Ⅲ)を取得できます。

  • 医療連携体制加算(Ⅰ):32単位/日(1時間未満)
  • 医療連携体制加算(Ⅱ):63単位/日(1時間以上、2時間未満)
  • 医療連携体制加算(Ⅲ):125単位/日(2時間以上)

加算額は少ないものの、こうした加算を利用できます。なお、利用者の上限は8人です。

医療連携体制加算(Ⅳ):医療的ケアを実施

看護職員が障害者グループホーム(共同生活援助)を訪問し、医療的ケアを実施した場合に算定できます。加算内容は以下になります。

人数加算内容
利用者1人800単位/日
利用者2人500単位/日
利用者3~8人400単位/日

医療的ケアを実施している場合、加算は大きくなります。

医療連携体制加算(Ⅴ~Ⅵ):喀痰吸引などに関する加算

難病患者を含め、重度の障害者では喀痰吸引などの医療行為が必要になるケースがあります。そうしたとき、看護職員が介護職員に対して喀痰吸引等の指導をした場合、医療連携体制加算(Ⅴ)の対象になります。

  • 医療連携体制加算(Ⅴ):500単位/日

また、研修を受けた介護職員がたん吸引等の医療行為を行う場合、医療連携体制加算(Ⅵ)の対象になります。

  • 医療連携体制加算(Ⅵ):100単位/日

一部の医療行為については、研修を受けた介護職員であっても可能です。そうしたとき、医療連携体制加算の対象になります。

医療連携体制加算(Ⅶ):看護師の常時サービスを提供

看護師により、24時間連絡できる体制を整えており、利用者への日常的な健康管理や医療機関との連絡・調節が行われている場合、医療連携体制加算(Ⅶ)を取得できます。看護職員は以下のうち、どれかになります。

  • 事務所職員として看護師を配置(同一法人の他の事務所の看護職員でも問題ない)
  • 訪問看護ステーションと連絡し、看護職員を確保

なお、オンコール(必要なときのみ駆けつける)体制だけでは不十分であり、障害者グループホームでの勤務実態が必要になります。このときの加算は以下になります。

  • 医療連携体制加算(Ⅶ):39単位/日

毎日について、利用者分の医療連携体制加算(Ⅶ)を算定できれば、それなりに大きな売り上げになります。そこで他の事務所で看護師を雇っていたり、訪問看護ステーションと連携できたりする場合、医療連携体制加算(Ⅶ)によって売り上げを増やせます。

看護職員を活用し、医療での加算を得る

実際のところ、障害者グループホーム(共同生活援助)で看護師を雇っているケースは少ないです。医療的ケア対応支援加算を得るにしても、対象者が多くなければいけません。そのため、一般的には医療連携体制加算を活用します。

医療連携体制加算は種類が多いです。そこで、どの加算を利用できるのか学びましょう。このとき医療的ケアなのか、それともそれ以外なのかによって加算内容が大きく異なります。また、介護職員が喀痰吸引などを実施する場合についても医療連携体制加算の対象です。

なお、必ずしも看護職員を雇う必要はなく、訪問看護ステーションとの連携であっても医療連携体制加算を利用できます。このとき、日常的な健康管理をすることで医療連携体制加算(Ⅶ)を算定することもできます。

障害者グループホームの運営で加算を得るとき、医療連携体制加算を活用できます。そこで、看護師を活用することで医療に関する加算を得ましょう。