障害者やホームレスを含め、生活場所を確保できない人はたくさんいます。そこで、生活保護受給者が利用する施設として宿所提供施設があります。生活保護受給者に対して住む場所を提供するのです。

住宅扶助の提供が宿所提供施設の主な目的・役割です。そのため宿所提供施設で介護サービスはないものの、住む場所を求めている生活保護受給者にとって優れます。

それでは、宿所提供施設の目的や入所期限としては何があるのでしょうか。宿所提供施設の利用法や無料低額宿泊所との違いについて解説していきます。

住宅扶助の提供を目的とする宿所提供施設

宿所提供施設とは、生活保護受給者に対して住居を提供する施設と考えましょう。身寄りのない生活保護受給者では、一般賃貸での審査が厳しいです。そこで、一時的に住む場所として宿所提供施設を利用するのです。

生活保護受給者が利用する施設として保護施設があります。保護施設としては、以下の種類や違いがあります。

  • 救護施設:障害者に住居と生活扶助を与える
  • 更生施設:障害者の独り立ちを目指す
  • 授産施設:就労や技能の訓練を行う
  • 宿所提供施設:住まいの提供を行う

保護施設によって目的は異なりますが、生活保護受給者に住居の提供を一番の目的としている保護施設が宿所提供施設です。

住まいの提供がメインであり、生活扶助は基本的にない

なお多くの場合、保護施設では介護スタッフが常駐しており、日常生活での介助を依頼できます。また、将来に向けた生活指導も行われます。要は、保護施設の中で生活扶助が提供されます。

それに対して宿所提供施設では、前述の通り住居の提供が一番の目的となっています。要は、住宅扶助を提供できれば十分です。

住まいを提供できればいいため、スタッフによる介助や職業訓練、その他の援助が提供されることはありません。

ちなみに厚生労働省の資料では、宿所提供施設を利用する人のうち96.7%が生活保護受給者です。宿所提供施設の利用では生活保護の受給(または生活保護への申請)が利用条件になるため、施設を利用したい場合は生活保護である必要があります。

無料低額宿泊所とは別の施設

なお、宿所提供施設と似ている施設として無料低額宿泊所があります。介護サービスや機能訓練などは提供されず、住居の提供を目的としているという意味では、宿所提供施設と無料低額宿泊所の役割は同じです。

ただ根拠となる法律が異なり、以下のようになります。

  • 宿所提供施設:生活保護法が元
  • 無料低額宿泊所:社会福祉法が元

前述の通り、宿所提供施設の利用者は生活保護受給者です。生活保護の利用者へ住宅扶助を提供し、住めるようにするのです。

一方で無料低額宿泊所を利用するとき、必ずしも生活保護である必要はありません。住民税の非課税世帯を含め、生活困窮者であれば無料低額宿泊所を活用できます。すぐには単身生活が無理であるものの、一時的に住居を確保したい場合、生活保護でなくても利用できる無料低額宿泊所は優れます。

健常者や軽度の障害者がメインで利用する

なお生活困窮者となるのは、一般的に障害者が多いです。このとき、ホームレスを含めて健常者も宿所提供施設を利用するものの、どうしても障害者の割合は高くなります。宿所提供施設の場合、利用者全体で障害者の割合は35.8%です。

このとき、一人であっても日々の生活に困らない軽度の障害者が宿所提供施設を利用します。前述の通り、施設内での介助などは基本的にないからです。施設内で食事が提供されることはあるかもしれませんが、日常的な介助はありません。

そのため一般的には、宿所提供施設を利用する人の障害の程度は前述の通り軽度です。参考までに、障害者で宿所提供施設を利用する場合、障害の種類は以下のようになります(重複回答あり)。

障害の種類割合
身体障害19.2%
知的障害6.4%
精神障害62.8%
発達障害5.1%

※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業

このように、障害者で宿所提供施設を利用する人はほとんどが精神障害者です。発達障害も精神障害者ですが、いずれにしてもうつ病・双極性障害や統合失調症、パニック障害、発達障害などの精神障害者がメインで宿所提供施設を活用します。

入所期間はどれくらいなのか?

それでは、宿所提供施設を利用する人はどれくらいの入所期間になるのでしょうか。あくまでも、一時的な利用となるのが宿所提供施設です。そのため、ずっと同じ施設で入居し続けることはないと考えましょう。

厚生労働省の資料では、宿所提供施設での平均入所期間は2年9か月となっています。また、1年未満で退所する人の割合は78.6%です。以下は公開されている宿所提供施設での入所期間です。

入居期間割合
1年未満78.6%
1年以上、2年未満0.5%
2年以上、3年未満2.3%
3年以上、4年未満4.7%
4年以上、5年未満3.3%
5年以上、10年未満4.7%
10年以上6.0%

※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業

入所期間が短いことから、宿所提供施設へ入居しても、早い段階で次の入所先を考えなければいけません。

健常者であれば、賃貸マンション・アパートなどでの一人暮らしを考えます。一方で障害者の場合、障害者グループホーム(共同生活援助)などの公的施設を活用し、格安にて生活することを考えるといいです。

実際の利用法はどうするのか

なお保護施設について、宿所提供施設を含めて通常は福祉事務所へ相談することで入所できます。つまり施設へ直接、申し込むわけではありません。

生活保護を受給するとき、福祉事務所や市区町村の役所で相談し、生活保護へ申請する必要があります。このとき、生活保護法を元に宿所提供施設が設立されているため、生活保護申請と同様に福祉事務所にて相談し、宿所提供施設の利用を開始するのです。

福祉事務所から依頼されることで、宿所提供施設はようやく手続きを開始します。そこで実際に施設の見学などを行い、利用者と宿所提供施設の双方が合意したら入所となります。

なお引越しに必要な持ち物については、事前に宿所提供施設へ確認しましょう。そうして契約し、引越しすれば宿所提供施設の利用開始になります。

生活保護で宿所提供施設を活用する

障害者やホームレスなどで生活保護の場合、人によってはいますぐの自立が困難なケースがあります。そこで、そうした生活困窮者が一時的に住むための場所として宿所提供施設があります。宿所提供施設は保護施設の一つです。

あくまでも、住宅扶助の提供が宿所提供施設の役割・目的です。そのため、対象の生活保護受給者が住めれば問題ありません。なお、宿所提供施設はあくまでも一時的な滞在であるため、多くの人で1年以内に退所します。

このとき、似た施設に無料低額宿泊所があります。基本的な内容はほぼ同じですが、根拠となる法律が違います。無料低額宿泊所の場合、生活保護でなくても多くの人が利用しています。

生活保護で住む場所に困っている場合、必要であれば宿所提供施設を利用しましょう。福祉事務所に相談することで、宿所提供施設を一時的に活用できます。

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