障害者の場合、一般受給者(健常者)に比べて失業保険の給付内容が良くなります。具体的には、障害者手帳を保有することによって失業保険の受給条件が緩くなり、さらには長い期間の失業手当の受給が可能になります。障害者であると、給付内容が有利になるのです。

受給日数が違うため、当然ながら受け取れる金額の総額も大きく変動します。失業した人の中には「健常者だったが、身体障害者や精神障害者となった」という人もおり、こうした人も障害者としての受給対象になります。

ただ障害者手帳を入手する前に失業保険へ給付申請すると、一般受給者と同じ内容になります。そのため、申請前に障害者としての要件を満たしておかなければいけません。

それでは、障害者はどのように考えて失業保険を利用すればいいのでしょうか。障害者手帳と失業保険(失業手当)の関係を解説していきます。

障害者手帳の保有者は失業保険で有利

失業手当をもらうとき、会社都合のケースは少なく、多くは自己都合による退職になります。自己都合退職の場合、90日などの失業手当となります(10年未満の勤続)。

また一般受給者が失業手当を受けるためには、1年以上は雇用保険に加入している必要があります(2年間のうち、1年以上の雇用保険への加入が必要)。つまり、会社で働いて1年未満の退職では失業手当を受給できません。

一方で障害者の場合、雇用保険に6か月以上の加入で失業手当を受け取れます(1年間のうち、6か月以上の雇用保険への加入が必要)。半年働けば失業手当を受給できる資格を得られるため、受給条件は非常に緩くなっています。

一般受給者と障害者での受給日数の違い

また、受給日数も一般受給者と障害者で大きく異なります。健常者の場合、自己都合による退職では多くのケースで90日の受給日数です。一方で障害者の場合、1年以上の勤続であれば、たとえ自己都合による退職であっても45歳未満は300日、45歳以上は360日の受給日数となります。

失業手当による受給日数の違いは以下のようになっています(自己都合による退職のケース)。

雇用期間1年未満2~9年10~19年20年以上
一般受給者90日120日150日
障害者:45歳未満150日300日
障害者:45~64歳360日

このように受給日数で考えると、あらゆる時点において、障害者の受給日数は健常者に比べて圧倒的に長いとわかります。

失業手当の金額の計算

それでは、失業手当の支給金額の計算はどのようになるのでしょうか。ザックリと以下の方法によって金額を計算できると考えましょう。

  • 過去6か月の月間平均給与 × 50~80%

例えば月収30万円の人では、失業手当によって月15~24万円が支給されるとわかります。

  • 月収30万円 × 50~80% = 15~24万円

こうした失業手当が90日で終わるのと、300日(または360日)が続くのでは大きな違いになります。障害者は就職困難者であり、簡単には新たな就職先・転職先を見つけることができないため、こうした措置になっています。

申請前に障害者手帳を保有しておく必要がある

こうした障害者の失業手当について、障害者であると証明する必要があるため、事前に障害者手帳を保有しておきましょう。以下が障害者手帳の種類です。

  • 身体障害者手帳:体の機能に障害のある人
  • 療育手帳:知的障害のある人
  • 精神障害者保健福祉手帳:精神障害のある人

障害者手帳の種類や等級に関係なく、知的障害者や精神障害者、身体障害者は手帳の提示によって失業手当の支給日数が伸びます。

注意点として、事前に身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を保有している必要があります。失業保険の申請をした後に障害者手帳を入手した場合、就職困難者であると再申請して認められることはありません。あくまでも、申請時に障害者(就職困難者)である必要があります。

精神障害者保健福祉手帳と失業保険は申請の兼ね合いが重要

身体障害者であれば、医師の診断書によってすぐに障害者手帳の申請が可能です。また知的障害者については、既に障害者手帳を保有していると思います。

一方で精神障害者は注意が必要です。大人になって統合失調症やうつ病、躁うつ病(双極性障害)、パニック障害、発達障害などの精神疾患を発症するのは普通です。ただ精神障害者保健福祉手帳の申請には、初診日から6か月以上が経過している必要があります。

場合によっては、会社を辞めたものの初診日から6か月以上が経過していない人がいるかもしれません。この場合、次の就職時期を見極めながら、手帳の取得時期と失業保険の申請時期を考えましょう。

すぐに再就職する場合、早めに失業保険に申請すればいいです。一方で再就職を先送りし、療養期間を長く取りたい場合、精神障害者保健福祉手帳を取得できるようになった後、失業手当を受け取るようにしましょう。

失業保険の申請期限は原則、退職の翌日から1年間です。1年間もあれば、精神障害者保健福祉手帳の取得は可能です。そのため精神疾患の症状が重く、すぐの復職は無理であるものの、まだ障害者手帳を保有していない人は「障害者手帳の保有後に失業手当をもらう」ように調整するといいです。

失業保険の申請に必要な書類

それでは、障害者が失業保険を申請するときに必要な書類には何があるのでしょうか。以下の書類を入手して、ハローワークで申請する必要があります。

  • 離職票:辞めた会社に依頼する
  • マイナンバーを確認できる書類
  • 身分証明書:運転免許証、マイナンバーカードなど
  • 本人名義の預金通帳、またはキャッシュカード
  • 写真2枚(縦3.0cm×横2.5cm)
  • 障害者手帳

必要書類について、健常者との違いは「障害者手帳の提示があるかどうか」だけです。障害者手帳の入手には医師の診断書が必須であり、障害者手帳を提示できれば「障害者である」と客観的にわかります。そのため、どの等級や種類でもいいので障害者手帳を提示できるように準備しておきましょう。

障害者雇用での就職・転職は可能

なお障害者が就職・転職を考えるとき、一般枠で応募してもいいですが、障害者雇用の枠を利用できます。障害者手帳の入手でメリットになるのは、失業保険だけでなく障害者雇用も含まれているのです。

「企業は一定数の障害者を雇用しなければいけない」と法律で明記されています。そのため、大企業であるほど障害者を積極的に採用しなければいけません。

特に身体障害者や精神障害者であれば、脳機能は正常である人が多いため、一般企業の障害者雇用で働くのは問題ありません。

また障害福祉サービスに就労移行支援があります。一般企業への就職を目指す障害者のためのサービスが就労移行支援であり、こうした公的サービスを活用することで失業手当を受給しながら再就職を目指しても問題ありません。

障害者グループホームで症状を立て直す

なお人によっては、より症状が重く、すぐには再就職できないケースがあります。例えば統合失調症やうつ病の症状が重い場合、いますぐの就職は最適ではありません。

この場合は1年以内の就職・転職とはならないため、障害者グループホームなど、ほかの公的サービスも活用して症状の立て直しを考えましょう。ほとんど自己負担なしに格安で住める障害者向けの公的施設が障害者グループホームであり、障害者であれば誰でも活用できます。

実家暮らしができるならいいですが、そうでない場合は賃貸物件の支払い費用が高額になるため、障害者は支出を抑えるために障害者グループホームを利用します。

また、ひとまず格安で住める場所を確保した後、一般企業への就職が難しい場合、就労継続支援B型(または就労継続支援A型)を利用します。

作業所などにて、1日に数時間ほど無理のない程度で働く仕組みが就労継続支援B型です。その後、症状回復に伴って行えることを増やしていき、最終的には社会復帰を目指すのです。

障害者は失業保険以外にも、社会復帰するための仕組みがいくつもあります。人や症状の程度によって適切な復帰時期は異なるため、すぐの復帰が難しい場合、こうした公的サービス(障害福祉サービス)の利用も考えましょう。

就職困難者は失業保険の受給期間が長くなる

障害者が失業手当の申請を行う場合、一般受給者に比べて給付内容は有利です。健常者は1年以上の雇用保険に入っている必要があるものの、障害者は半年以上の加入期間で問題ありません。また、失業手当の受給期間は健常者に比べて長くなります。当然、自己都合による退職であっても、その分だけ受け取れる金額は総額で大きくなります。

障害者手帳をもつ場合、就職困難者に該当します。障害者手帳の種類や等級に関係なく、知的障害者や精神障害者、身体障害者、難病患者であれば失業保険での優遇措置を受けられます。

注意点として、事前に障害者手帳を入手しなければいけません。特に精神疾患の場合、障害者手帳の入手には、初診日から6か月以上が経過している必要があります。そのためすぐに障害者手帳の申請ができない場合、失業保険の申請時期との兼ね合いを考えましょう。

就職困難者であれば、その分だけ失業保険の受給日数が長くなります。障害者手帳を利用して、こうした公的制度をうまく活用しましょう。

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