高額な給付金となり、生活費を得ることを考えるときに重要な給付金が傷病手当金です。こうした給付金について、同じ病気が再発したときに2回目の傷病手当金を利用できるのか気になります。

傷病手当金では、受給できる期間が決まっています。このとき、たとえ病気が再発したとしても通算での受給期間は同じです。ただ条件を満たせば、たとえ同じ病気の再発であってもゼロから傷病手当金を得られるようになります。

それでは、2回目の傷病手当金を得るときの考え方はどのようになるのでしょうか。再発した場合の傷病手当金の活用法を解説していきます。

通算して1年6か月まで利用可能

給料の3分の2を得られるため、傷病手当金を活用できれば、たとえケガや病気によって働けなくても生活費の支払いに困らなくなります。

そうしたとき、傷病手当金は1年6か月を期限として受け取り可能です。このときの1年6か月というのは、通算での期間です。例えば、1年間にわたって傷病手当金を受け取って仕事に復帰したとします。その後、再発によって欠勤した場合は残り6か月の傷病手当金を利用できます。

傷病手当金の期間はあらゆるケースで1年6か月であり、延長申請はできません。また、既に1年6か月の傷病手当金を利用している場合、同じ病気で再発したのであれば、2回目の受け取りはできません。既に1年6か月の傷病手当金が済んでいるからです。

完全に異なる傷病はゼロから給付金を受け取り可能

それでは、すべてのケースで傷病手当金を再び利用できないのでしょうか。完全に異なる傷病であれば、傷病手当金を再び1年6か月にわたって受給可能です。例えば、以下のケースが該当します。

  • 1回目:うつ病で傷病手当金
  • 2回目:ケガによる傷病手当金

この場合、明らかに違う傷病であるとわかります。その場合、完全に別の傷病なので、会社員・公務員は2回目の傷病手当金を無条件で利用できます。

同じ病気なら、完治が傷病手当金の条件

一方、同じ病気では2回目の傷病手当金は利用できないのでしょうか。これについて、最初の傷病が治癒していると判断できる場合、再び傷病手当金を利用できます。

ただ、実際のところ治癒しているかどうか非常に判断が難しいケースがあります。例えば以下のケースです。

  • 精神疾患:回復と悪化を繰り返す
  • 完治が存在しない難治性の病気
  • 病名変更はあるものの、原因が同じ

この場合、最初の傷病と同じではないかと判断されやすいです。

なお、「完治が存在しない難病について、2回目の傷病手当金を利用できるのか?」と思う方は多いですが、条件を満たせば可能です。医学的な治癒ではなく、「社会的治癒」が傷病手当金の受給で重要になるからです。

治癒かどうかの判断ポイント

それでは、どのようなときに治癒となるのでしょうか。傷病手当金の基準での治癒について、判断するポイントとしては、以下のすべてを満たしているかどうかになります。

  • 対象の傷病でそれ以上の医療が不要(予防的医療を除く)
  • 通常の勤務をしている
  • 安定した症状が相当な期間、達している

このとき、通常の勤務をしていてある程度の期間が経過しているのは当然として、特に重要なのが「対象の傷病でそれ以上の医療が不要」という部分です。

治療完了後についてもひんぱんに通院しており、薬の服用を含め、予防的医療を超える範囲の医療を受けている場合は治癒しているとはいえません。ただ、予防的範囲での継続した服用であれば、治癒と判断され、傷病手当金の対象になります。

過去の裁判でも、重視されているのは「予防的医療を超えた範囲での治療かどうか」になります。社会的治癒に該当して傷病手当金を受け取れているケースがあれば、社会的治癒に該当せず2回目の傷病手当金を利用できていないケースもあります。

実際のところ、社会的治癒に該当するかどうかの判断は難しいです。ただ、予防の範囲内での医療機関受診であれば、社会的治癒として2回目の傷病手当金を利用できます。

繰り返し傷病手当金を受け取る

場合によっては、傷病手当金を繰り返し利用したいと考えるケースがあります。そうしたとき、通算で1年6か月であれば傷病手当金を受給できます。そのため既に傷病手当金を1年6か月にわたって受給している場合、同じ病気で2回目の受給は基本的にできません。

一方で違う傷病の場合、ゼロから傷病手当金を活用できます。異なるケガや病気であれば、再び1年6か月の受給が可能です。

なお、たとえ同じ病気であっても治癒している場合は2回目の傷病手当金の利用が可能です。予防的医療を超えないのであれば、たとえ通院していても同じ病気の再発によって再び傷病手当金を利用できます。ただ、社会的治癒に該当するかどうかの判断は難しいです。

原則として、1年6か月の受給が終わった後は傷病手当金を繰り返し利用できません。ただ条件を満たせば、同じ病気の再発であっても傷病手当金へ申請できます。