障害者グループホーム(共同生活援助)の経営では、国へ報酬請求することによって運営が成り立ちます。そうしたとき、減算によって得られる報酬を減らされることがあります。

当然ながら、減算によって経営状況は悪化します。そこで、可能な限り減算を避けることで売上を確保しなければいけません。そのためには、減算の種類や内容を把握しておく必要があります。減算には人員配置や施設の定員、サービス内容などが関わります。

それでは、共同生活援助での減算には何があるのでしょうか。減算の種類や内容について解説していきます。

人員配置に関する減算

障害者グループホームの運営では、人員配置に関する基準があります。こうした基準としてサービス管理責任者や世話人・生活支援員があります。

  • サービス管理責任者欠如減算
  • サービス提供職員欠如減算

それぞれについて確認しましょう。

サービス管理責任者欠如減算:サビ管の人員配置基準

すべての障害者グループホームについて、サービス管理責任者(サビ管)を配置しなければいけません。サビ管一人につき、利用者30人まで付けることができます。もし利用者が30人を超え、31~60人の場合、サービス管理責任者2人の配置が必須です。

そうしたとき、サービス管理責任者の人員配置基準を満たさないと減算となります。サービス管理責任者が退職などで不足した場合、その状態が翌月末まで続くと、「不足の翌々月からサビ管不足の解消月」まで、利用者全員分の減算があります。

例えば3月31日にサビ管が辞めて不足する場合、4月が不足月となります。

サビ管が不足し、それが翌月の末日以降も続いた場合、不足の翌々月からサビ管不足が解消された月まで、利用者全員分について報酬の30%が減算になります。

3月31日にサビ管が辞めたのであれば、4月(不足が発生した月)の翌月(5月末)までにサビ管を採用し、配置すれば減算はありません。

一方、5月末以降もサビ管不足の状態が続く場合、6月(不足の翌々月)の請求分から減算になります。

サビ管減算
3月配置なし
4月不足なし
5月不足なし
6月不足あり

なお、仮に6月中にサビ管を配置した場合、6月は減算になるものの、7月からは通常の報酬を請求できます。このとき、報酬減額の割合は以下のようになります。

  • 減算適用から4か月目まで:全体報酬の30%減算
  • 減算適用から5か月以上:全体報酬の50%減算

減算が5か月以上も続く場合、報酬は50%の減額になります。こうなると赤字経営になってしまうため、できるだけ早くサービス管理責任者を配置しましょう。

サービス提供職員欠如減算:世話人・生活支援員の人員配置基準

減算の対象になるのは世話人・生活支援員の人員配置についても同様です。共同生活援助では、利用者の人数や区分(重症度)に応じて、世話人・生活支援員の人員配置基準が決められています。

指定基準に対して、人員欠如の状態が10%以内であれば、「不足の翌々月から不足の解消月」まで減算となります。つまり、減算となる期間は先ほどのサビ管と同じです。一方で人員欠如が10%超の場合、「不足の翌月から不足の解消月」まで減算です。また、減算の割合は以下になります。

  • 減算適用から2か月目まで:全体報酬の30%減算
  • 減算適用から3か月以上:全体報酬の50%減算

世話人・生活支援員はパート職員でも問題ありません。そこで、人員不足の場合はできるだけ早く要件を満たすようにしましょう。

規模の大きい共同生活援助は減算

なお場合によっては、障害者施設自体が減算の対象になるケースがあります。一般的には、共同生活援助は定員3~6人ほどの小規模運営となります。家庭的な雰囲気の中、少人数の障害者を手厚く支援する施設が障害者グループホームです。

ただ場合によっては、施設の規模が大きいケースがあります。そのため大人数になってしまうと、入所施設(障害者支援施設)との違いが薄くなります。そこで、定員の大きい障害者グループホームに対して、大規模住居等減算が適用されます。

大規模住居等減算の内容は以下のようになります。

  • 利用定員8名以上:対象施設の5%減算
  • 利用定員21名以上:対象施設の7%減算
  • 一体的運営の施設の利用定員21名以上:対象施設の5%減算

なお「一体的運営の施設」とは、同一敷地内(近接地含む)に施設が存在し、世話人・生活支援員の勤務体制が住居ごとに区別されていないケースを指します。

サービス不十分に対する減算

なお、利用者に対するサービス提供が不十分な場合に減算となります。こうした内容には、例えば以下があります。

  • 個別支援計画未作成減算
  • 身体拘束廃止未実施減算
  • 虐待防止措置未実施減算
  • 業務継続計画未策定減算
  • 情報公表未報告減算

それぞれについて確認しましょう。

個別支援計画未作成減算:利用者の個別支援計画の不備

障害者グループホームを利用するとき、個別支援計画を作らなければいけません。ただ利用者(障害者)の個別支援計画に不備がある場合、減算となります。以下のようなとき、減算の対象です。

  • サービス管理責任者が作成していない
  • アセスメント(面談)をしていない
  • 作成時に担当者会議をしていない
  • モニタリング(経過観察)や見直しをしていない
  • 開始日までに個別支援計画が作られていない
  • 利用者からの同意がない

有効な個別支援計画がない場合、対象利用者について30%減算となります。また、この状態が3か月以上続く場合、50%減算となります。

身体拘束廃止未実施減算:身体拘束の防止

障害者グループホームでは、利用者が暴れてしまうことがあります。ただ、そうした場合であっても身体拘束をしてはいけません。

共同生活援助では、身体拘束廃止未実施減算について利用者全体の10%減算になります。以下について、一つでも実施していない場合は減算になります。

  • 身体拘束をする場合、「そのときの様子・時間・入所者の心身状況・理由」を記載
  • 身体拘束適正化検討委員会を定期的に開催し、結果をスタッフに周知徹底
  • 身体拘束の適正化の指針を整備
  • 介護スタッフに身体拘束の適正化の研修を定期的に実施

なお実際に身体拘束を行う場合、「本人または他利用者の生命・身体が危険」「身体拘束以外に方法がない」「身体拘束は一時的」の3要件を満たし、これらの要件確認が慎重に実施される必要があります。

虐待防止措置未実施減算:虐待防止の徹底

すべての障害福祉サービスについて、利用者の虐待防止に関する減算があります。減算は利用者全体の1%であり、減算を防ぐためには以下の対策が必要になります。

  • 虐待防止委員会を定期的に開催し、結果をスタッフに周知徹底
  • 介護スタッフに虐待防止の研修を定期的に実施
  • 虐待防止の担当者を置く

そこで、虐待防止に関する措置を取りましょう。

業務継続計画未策定減算:感染症や災害の対策

共同生活援助を含め、障害福祉サービスでは感染症や災害に備えて業務継続計画(BCP)を策定する必要があります。そのため、業務継続計画(BCP)が未策定の場合に減算となります。

感染症や災害が発生した場合、利用者へのサービス提供が滞りやすくなります。そこで、実際に感染症や災害の発生で利用者にサービス提供を継続し、さらには「非常時のときに早期に業務再開するための計画」が業務継続計画(BCP)です。

障害者グループホームでは、基本報酬の3%が減算になります。減算を回避するためには、以下が必要になります。

  • 業務継続計画(BCP)を策定:感染症と災害の両方
  • 業務継続計画(BCP)に従い、必要な対応を行う

感染症と災害の片方だけでは減算の対象になります。そこで、必ず感染症と災害の両方について業務継続計画(BCP)を策定しましょう。

情報公表未報告減算:必要情報を報告

すべての障害福祉サービスでは、サービス内容などを行政へ報告する必要があります。また、報告された内容は公表されます。

実際の報告はWAM NETを通して行われます。未報告の場合は減算となり、共同生活援助では利用者全員分に対して10%の減算になります。

そこで減算を防ぐため、報告の案内が来たらできるだけ早く報告をしましょう。報告内容は多岐にわたるため、可能な限り早い段階で報告の準備に取り掛かり、期日までに報告を終えるようにするといいです。

減算を防ぎ、利益率を維持する

障害者グループホームの運営では、そこまで利益率は高くありません。そのため、報酬全体に対して減算になると、すぐに赤字経営に陥ってしまいます。そこで、可能な限り減算を回避しましょう。

減算には複数の種類があります。最も注意するべき減算がサービス管理責任者や世話人・生活支援員など、人員配置基準に関する減算です。ただ大規模住居等減算など、施設の規模が大きいと避けられない減算も存在します。

さらに、サービス不十分に対する減算を避けましょう。これらについては、適切に対応していれば防げる減算です。

利益を確保して共同生活援助を運営するためには、減算の内容を理解しなければいけません。そこで、減産を回避して障害者グループホームを経営しましょう。

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