障害年金を受給中であるものの、急に症状が悪化して本人が死亡してしまうことがあります。このとき、配偶者や子供は障害年金が入ってこないので生活に困ってしまいます。

そこで障害厚生年金を受け取っている人の死亡に伴い、遺族年金が支給されます。若くして亡くなった場合、その配偶者や子供が遺族年金を受け取れるのは有名です。このとき、亡くなった人が障害者の場合、「障害年金を受給していれば遺族年金の対象になる」というわけです。

なお障害年金の受給者死亡で遺族年金を得るためには、障害年金1~2級など特定の条件が必要となります。

それでは障害年金を活用している人が死亡した場合、どのように考えて遺族年金を利用すればいいのでしょうか。障害者が死亡してしまった場合の遺族年金受給を解説していきます。

障害厚生年金の受給者が死亡すると遺族年金を受けられる

障害者のみ受給できる年金制度が障害年金です。たとえ若い人であっても障害年金を利用できます。このとき知的障害者や精神障害者であれば長生きするケースが多いものの、難病を含め身体障害者では死に直結する人がいます。

例えば白血病やALS、脳梗塞など、こうした人が数年以内に死亡するのは普通です。そうしたとき、残された親族が障害年金の代わりとして遺族年金を受け取れるというわけです。

・障害基礎年金ではなく障害厚生年金が対象

注意点として、死亡した人が初診日(対象の傷病で初めて医療機関を受診した日)に厚生年金に加入している必要があります。言い換えると、初めて医療機関を受診した日に会社員・公務員でなければいけません。

こうした人は障害厚生年金を受給でき、障害厚生年金の加入者が死亡した場合に残された家族(配偶者や子供)は遺族年金の受給が可能です。初診日に国民年金に加入していた障害者(障害基礎年金の受給者)が死亡しても遺族年金は受給できません。

遺族年金を受け取るためには、亡くなった人が初診日に会社員・公務員である必要があり、初診日に自営業や無職、主婦の人は対象外となります。

遺族年金の金額はいくらになるのか

それでは、遺族年金の金額はいくらになるのでしょうか。残された家族は以下の金額を受け取れるようになります。

  • 死亡した受給者の障害厚生年金の4分の3

注意点として、障害年金全体の4分の3ではありません。障害厚生年金を受給している人では、障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受け取っています。

このうち障害基礎年金を除外して、障害厚生年金の4分の3を遺族年金として残された家族が受給できるというわけです。

1級または2級が遺族年金の対象

なお障害厚生年金を受け取っていた人が亡くなって遺族年金を利用するとき、注意点があります。それは、「障害年金1級または2級である必要がある」という点です。つまり、ある程度重度の状態で亡くなる必要があります。

なお数年以内に死亡する病気の場合、たとえ障害年金3級であったとしても、徐々に症状が悪化することで障害年金1級や2級の条件を満たすようになります。そこで症状が重くなったのであれば、早めに額改定請求をすることで障害年金1級または2級となるようにしましょう。

・障害年金3級は死亡の原因が対象傷病の必要あり

厳密には、障害年金3級であっても「死亡の原因が対象傷病の場合」であれば、遺族年金の対象になります。

ただ実際のところ、死亡の原因が対象傷病かどうか微妙なケースはよくあります。例えば「脳卒中を発症して寝たきりになるにしても、死亡の原因は誤嚥性肺炎」などは普通です。そのため症状が悪化したのであれば、できるだけ早く額改定請求をすることによって障害年金3級から1級または2級に変更すると安心です。

なお障害年金1級や2級であれば、死因に関係なく遺族年金の受け取りが可能です。これが、症状が悪化したら早めに額改定請求をするべき理由です。

遺族年金を受け取れる条件

なお遺族年金を受け取るとき、主に3つのパターンがあります。以下のケースが該当します(他にもありますが割愛します)。

  • 厚生年金の加入者が死亡
  • 初診日に厚生年金に加入しており、対象傷病が原因で5年以内に死亡
  • 障害年金1級・2級の受給者が死亡

このように病気やケガによって「すぐに死亡」または「5年以内に死亡」の場合、遺族年金が支払われます。それに加えて、たとえ病気やケガをして5年超が経過したとしても、障害年金1級・2級を受給していれば、遺族年金を受け取れるというわけです。

初診日から5年超が経過しての死亡は障害年金が重要

障害年金なしであっても、初診日から5年以内に本人が死亡する場合、先に記した通り遺族年金の対象になります。ただ初診日から5年超が経過している場合、障害年金を受け取っていないのであれば、遺族年金の対象外になります。

それまで、どれだけ長く会社勤めをしていて厚生年金を支払っていたとしても、障害年金1級・2級でない場合、遺族年金の要件を満たしません。

障害年金へ申請するのは、「年金受給によって本人が生活できる」という意味だけではありません。仮に本人が死亡してしまった場合、「家族が遺族年金を受け取り、配偶者や子供が生活できるようになる」という意味もあります。

生計同一関係が必須であり、所得制限がある

ちなみに遺族年金について、「亡くなった人が生計を維持していた」という受給条件があります。つまり、死亡した障害者ではなく配偶者が生計を維持していた場合、障害年金の対象外になります。

多くの場合、障害者は低所得者です。そのため配偶者が頑張って働くことになりますが、年収によって遺族年金を受け取れるかどうかが変化します。遺族年金を受け取るとき、配偶者には以下の所得制限があります。

  • 年収850万円未満(または年間所得655万5000円未満)

前年や前々年の年収・所得が対象になります。この金額を超えている場合、たとえ障害厚生年金の受給者が死亡しても遺族年金の対象外になります。

なお、遺族年金の受給には生計同一関係が必須になります。ただ配偶者や子供なのであれば、たとえ別居中(単身赴任)や入院中であっても生計同一関係であるため、これについては特に大きな問題にはなりません。

受給者の死亡により、家族が遺族年金を受け取る

一般的には、家族の死亡によって配偶者や子供が遺族年金を受け取ります。ただ急な死亡に限らず、障害年金の受給者が死亡する場合についても家族は遺族年金の受け取りが可能です。

障害年金受給者の死亡によって遺族年金を受け取るとき、いくつかの条件があります。

  • 障害厚生年金を受け取っている
  • 障害年金1級・2級を受給している

この2つを満たしている場合、遺族年金を受け取れる可能性があります(所得制限など、他の要件もある)。そこで障害厚生年金の受給者が死亡した場合、遺族年金を受け取ることができるかどうか確認しましょう。

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