障害者であれば、障害年金を受け取ることで生活をします。このとき子供がいる場合、障害年金について子の加算を受けることになります。

このとき、ひとり親家庭(シングルマザー、シングルファーザー)であったり、父または母の一方が重度の障害者であったりする場合、児童扶養手当を受け取れます。ただ児童扶養手当を受け取る場合、障害年金との併給調整があるため、両方を満額受け取ることはできません。

仮に重複して受け取った場合は返還が必要であり、障害者にとって思ったほどもらえる額が増えないのが児童扶養手当です。言い換えると、障害年金をもらっている人は児童扶養手当による影響が薄いと理解しましょう。

それでは障害年金と児童扶養手当の併給や返金はどのように考えればいいのでしょうか。障害者で子供がいる場合について解説していきます。

ひとり親家庭・母子家庭に支給される児童扶養手当

健常者や障害者に関係なく、シングルマザーやシングルファーザーの場合、お金が支給される制度が児童扶養手当です。

ひとり親家庭・母子家庭の場合、どうしても金銭面で大変です。そこで国の制度によって定期的にお金を支給し、生活困窮の状態を少しでも改善させるというわけです。

子供一人でも月4万円以上となり、子供が増えるごとに児童扶養手当の額は大きくなります。そのためシングルマザーやシングルファーザーにとって、児童扶養手当は大きな収入源の一つとなります。

子供の数全部支給一部支給
児童1人44,140円44,130円~10,410円
児童2人目10,420円10,410円~5,210円
児童3人目以降(一人につき)6,250円6,240円~3,130円

ひとまず、こうしたわりと高額なお金が児童扶養手当として支給されるようになります。

父または母が重度の障害者の場合も対象

なお児童扶養手当が支給される対象は以下になります。

  • ひとり親家庭(母子家庭)
  • 父または母が重度の障害者

つまり、ひとり親家庭・母子家庭だけでなく、親のうち一方が重度の障害者であっても児童扶養手当の対象になるというわけです。「重度の障害者」とは、具体的には以下の人が該当します。

  • 身体障害者手帳1級・2級
  • 療育手帳:A程度(IQ35以下)
  • 精神障害者保健福祉手帳1級

このように、重度の障害をもっている人であれば児童扶養手当を利用できるようになります。

子の加算へ併給調整され、差額が支給される

なお障害者の場合、多くの人で障害年金を受け取っています。障害年金を受け取っている場合、前述の通り、児童扶養手当を満額受け取れるわけではありません。併給調整されるため、実際は児童扶養手当の効果はそこまで大きくありません。

障害年金を受け取っている人で子供がいる場合、すべての人で子の加算を利用できます。ただひとり親家庭・母子家庭や重度の障害者の場合、実質的に子の加算は意味がありません。児童扶養手当を受け取るとき、子の加算の分だけ差し引かれ、差額のみの受け取りになるからです。

つまり、「子の加算が存在しない」のと同じ状態となります。そのため障害年金の受給者が児童扶養手当を受け取る場合、以下の金額になると考えましょう。

  • 障害年金(子の加算なし) + 児童扶養手当

なお障害年金の子の加算と児童扶養手当を重複して受け取った場合、後で返金・返納しなければいけません。返還しない場合は横領であるため、ばれる心配をするよりも、素早く返金しましょう。

・特別児童扶養手当は併給調整や返金が不要

なお、児童扶養手当と名前の似ている手当に特別児童扶養手当があります。障害児を育てている親に支給されるお金が特別児童扶養手当です。

児童扶養手当とは異なり、特別児童扶養手当は障害年金との併給調整がありません。障害年金と特別児童扶養手当は両方とも、返金なしに満額を受け取れます。

障害年金3級では、児童扶養手当をもらえない可能性

ここまでの解説について、障害年金1級または2級を受け取っている人が児童扶養手当の対象になります。障害年金1級・2級の人が児童扶養手当を受け取る場合、以下のようになります。

  • 障害年金を満額受け取る
  • 児童扶養手当を差額分受け取る(子の加算を差し引いて支給)

一方で障害年金3級については、どのように考えればいいのでしょうか。初診日に厚生年金に加入している人の場合、障害年金3級を受け取りできます。ただ障害年金3級には子の加算がありません。

種類子の加算
障害年金1級
障害年金2級
障害年金3級

子の加算がないため、障害年金3級では「障害年金3級と児童扶養手当を比較し、金額の大きいほうが支給される」ようになります(児童扶養手当のほうが大きい場合、差額分の児童扶養手当が支給される)。

例えば障害年金3級を月5万円、児童扶養手当を月4万4000円受け取るとします。この場合、障害年金3級と児童扶養手当を比較すると、障害年金3級のほうが金額は大きく、児童扶養手当の支給額は0円です。

障害年金3級については、以下の受け取り方になります。

  • 障害年金3級を満額受け取る
  • 児童扶養手当を差額分受け取る(障害年金3級の分を差し引いて支給)

つまり、実質的に「障害年金3級と児童扶養手当のうち、額の大きい方のみを満額受け取ることになる」と理解しましょう。そのため障害年金3級を受け取っている人については、児童扶養手当の効果がより薄くなります。

児童扶養手当をもらえないケース:所得制限など

なお児童扶養手当による効果が減少するとはいっても、障害年金を受け取っている人について、児童扶養手当を活用すれば受給額が増えやすくなるのは間違いありません。そのため、障害年金を受け取っている障害者について、受給資格があるなら積極的に児童扶養手当を活用するべきです。

ただ、ひとり親家庭や一方が重度の障害者であり、子供を育てているとしても、児童扶養手当の対象外になるケースがあります。以下が該当します。

  • 子供または親(本人)が日本国内に住んでいない
  • 子供が里親に託されている
  • 子供が施設に入所している
  • 親(本人)や子供の扶養義務者(配偶者)が所得制限に引っかかっている

障害者の場合、高所得者であるケースは少ないです。ただ身体障害者であれば、たとえ障害者であっても高い所得を得ているケースがあります。または、健常者である配偶者の年収が高い場合も所得制限に引っかかります。以下が所得制限の内容です。

扶養数受給者本人(全部支給)扶養義務者(配偶者)
1人87万円230万円
2人125万円268万円
3人163万円306万円
4人201万円344万円
5人239万円382万円

表にある数字は所得であるため、年収換算だと金額はより大きくなります。また障害年金は非課税所得であるため、受給者本人の所得制限について、障害年金で受け取れる額を考慮する必要はありません。

ただ児童扶養手当の所得制限は基準が低く、一般企業で働いている場合、わりと簡単に所得制限に引っかかります。そのため児童扶養手当というのは、所得の低い世帯が利用できる制度と理解しましょう。

障害年金と児童扶養手当は併給調整がある

障害者は多くのケースで低所得者になりやすいため、お金を受け取る制度を積極的に活用しなければいけません。特に子供がいる場合、支出が多くなるので国や自治体の制度は重要です。

ただ子供をもつひとり親家庭・母子家庭や重度の障害者について、障害年金と児童扶養手当を両方とも満額受け取ることはできません。必ず併給調整があり、仮に満額受け取った期間がある場合は返還しなければいけません。返金しない場合は横領になってしまいます。

なお障害年金は満額が支給されます。一方で児童扶養手当については、子の加算との差額が支給されます。障害年金3級を受け取っている人については、より児童扶養手当の効果が薄くなります。

障害年金を受け取っている人にとって、児童扶養手当によって支給額は増えやすくなるものの、効果はどうしても弱くなります。こうした事実を理解して、障害年金と児童扶養手当を活用しましょう。

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