指定難病を発症している人は多く、こうした人はほとんどのケースで身体障害者に該当します。内臓に障害をもつ人も身体障害者なのです。

身体障害者であるため、難病患者は障害者手帳を得ることができます。難病患者で障害者手帳を保有している人は少ないですが、保有するとさまざまな特典を得られます。お金の支出が大幅に減るため、メリットは多いもののデメリットは特にありません。

役所で申請することによって障害者手帳を発行できますが、このときは医師の診断書が必要です。そこで、日常生活で困っている内容を医師に伝え、診断書に記載してもらわなければいけません。

それでは難病患者が障害者手帳を申請・保有するにあたり、何を考えればいいのでしょうか。障害者として認定され、得られるメリットを含めて解説していきます。

難病の人は身体障害者手帳の取得が多い

難病法による指定難病を発症している人はたくさんいます。指定難病は種類が多いですが、例えば以下は患者数の多い難病となります。

  • 潰瘍性大腸炎・クローン病
  • パーキンソン病
  • 全身性エリテマトーデス
  • 後縦靱帯骨化症

膠原病(免疫異常による疾患)が難病患者で多いです。こうした難病患者はほとんどのケースで身体障害者手帳を保有することができます。

障害者手帳には以下の種類があります。

  • 身体障害者手帳:体の機能に障害のある人
  • 療育手帳:知的障害のある人
  • 精神障害者保健福祉手帳:精神障害のある人

体や臓器に機能障害がある場合、身体障害者となります。体の動きが不自由な人は当然として、内臓の機能が低下している人も身体障害者として認められるのです。難病患者で知的障害や精神障害を持つ人もいますが、基本的に難病患者は身体障害者として申請するのが一般的です。

障害者手帳を保有する難病患者の割合

それでは難病患者のうち、どれくらいの割合の人が障害者手帳を保有しているのでしょうか。東京都福祉保健局によると、難病患者は以下のような状況になっています。

※東京都福祉保健局:身体障害者・知的障害者・精神障害者・難病患者の状況

このように、難病患者で身体障害者手帳を保有している人の割合は約4分の1であり、その他の障害者手帳はほとんど保有していません。また、手帳なしの人が約7割を占めており、実際のところ障害者手帳を持っていない難病患者は多いです。

ただ障害者手帳の保有はメリットが圧倒的に多いです。また、障害者手帳の保有を第三者に言わなければバレることはありません。メリットばかりでデメリットが特にないため、難病であるなら積極的に障害者手帳を保有するほうが優れています。

内臓の障害を含め、認定基準は多い

なお前述の通り、体の見た目や動きだけでなく内臓の障害についても身体障害者として認められます。外見上は問題なくても障害者になることができ、身体障害者手帳を保有するときの認定基準は多いです。

  • 上肢・下肢・体幹
  • 目・耳・言語・そしゃく
  • 心臓・肝臓・呼吸器・ぼうこう・直腸・小腸・じん臓

これらに異常があり、日常生活が困難になっている場合は身体障害者手帳の申請が可能です。膠原病を含め、難病では原因不明の疾患が多く、内臓機能が衰えることになります。そうした人であれば、障害者手帳を発行できるというわけです。

難病患者の場合、それまで健常者だった人が多いです。そのため身体障害者手帳の発行をためらう人は多く、これが結果的に「難病患者にも関わらず障害者手帳を発行していない人が約7割」という状況になっています。ただ障害者手帳を発行できるのであれば、積極的に申請しましょう。

等級が大きいほど得られるメリットは大きい

このとき、障害者手帳によって得られるメリットとしては例えば以下があります(重症度によって得られるメリットは異なります)。

  • 本人または扶養者の所得税・住民税が低くなる
  • 自動車税の減免やガソリン代の補助
  • 医療費の助成
  • 映画館やテーマパークの割引
  • 高速道路代・ETC代の割引
  • 電車代・バス代・タクシー代の割引

他にもありますが、例えばこれらが障害者手帳によって得られる特典です。減税や割引など、お金の支払い・補助に直結するのが障害者手帳です。

また身体障害者手帳には1~6の等級があります。この中でも、等級が大きいほど得られるメリットは多くなります。例えば等級が重い場合、所得税・住民税の減税額は大きくなりますし、電車代の割引も利用できるようになります。

医師の診断書が最も重要であり、できないことを伝えるべき

なお難病患者が障害者手帳を取得するとき、役所で申請することになりますが、必須となるのが医師による診断書です。医師によって「どのくらい日常生活が困難になっているのか」が記されることになります。

例えば以下は「呼吸器に関する身体障害者手帳の診断書」の一部になります。

このように、どれだけ活動量の低下が見られるのか記載する項目があります。そこで、どれだけ生活が困難になっているのか伝えましょう。また、医学的所見や数値を記入する項目も存在するため、これらを医師によって記入してもらうのです。

こうした診断書をもとに身体障害者手帳の等級が決定されるため、医師に正確な内容を伝えることで診断書を作成してもらいましょう。

障害者向け公的サービスの利用も障害者手帳があればスムーズ

難病患者で障害者手帳を保有していれば、さまざまな金銭的なメリットを得られるだけでなく、公的サービスも利用できるようになります。

例えば65歳未満の人が利用できる障害者向けのサービスとして障害福祉サービスが知られています。リハビリを利用できる「自立訓練(機能訓練)」、一般企業にて障害者雇用・就職が可能な「就労移行支援」、格安で住居に住める「障害者グループホーム」など、さまざまな公的サービスがあります。

以下は障害者グループホームにて、利用者(障害者)が複数人で共同生活を送っている様子です。

これら障害福祉サービスを利用するとき、障害者手帳は不要です。ただ実際には、障害福祉サービスを利用するときに障害者手帳の提示を求められるケースは多く、身体障害者手帳の事前の取得は重要になります。

基本的に負担1割にて利用でき、収入のない人(住民税の非課税世帯)では利用料金が無料になるのが障害福祉サービスです。難病患者は公的サービスも利用できるため、必要であればこうした制度の利用も視野に入れましょう。

難病患者は身体障害者で手帳をもらえる

肢体不自由や臓器障害などによって身体障害者手帳を発行できます。難病患者は多くのケースで身体障害者に該当するため、身体障害者手帳を利用できます。

ただ難病患者は元々が健常者であったことが多く、身体障害者手帳の発行をあまり考えません。その結果、難病であるにも関わらず多くの人が障害者手帳を保有していません。そこで、四肢や臓器に障害があるなら積極的に身体障害者手帳を申請・保有しましょう。

身体障害者手帳があれば、障害者割引や税金の減免など多くのメリットを受けられます。お金の支払いや助成に直結するため、すべての難病患者にとって身体障害者手帳の保有は重要です。また、障害福祉サービスなど障害者向けの公的サービスも利用できます。

潰瘍性大腸炎やクローン病、ネフローゼ症候群、パーキンソン病、間質性肺炎など、多くの指定難病が存在します。こうした指定難病を発症しているのであれば、医師の診断書をもらって身体障害者手帳を申請するといいです。

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