障害者が生活するための公的施設は複数あり、その中に救護施設や入所施設(障害者支援施設)があります。障害者が施設内に住み、生活するという点で両者は同じです。ただ、施設の形態が違うので救護施設と入所施設は別物になります。

救護施設は生活保護を受給する障害者やホームレスが生活する場所です。それに対して、重度の障害者のみ利用できる施設が障害者支援施設です。

それでは救護施設と入所施設(障害者支援施設)について、どのような違いがあるのでしょうか。両者の内容について解説していきます。

施設の規模は大きく、外に出る必要はない

救護施設も入所施設(障害者支援施設)も施設の規模は大きく、施設内に50人以上の障害者が共同生活しているのは普通です。

施設が大きいため、介護スタッフが常にいるだけでなく、看護師もいます。そのため、多少の医療的ケアであれば問題なく対応できます。

なお救護施設でも障害者支援施設でも、規模が大きいため、一つの施設内ですべての作業が完結します。障害者であっても平日の昼間は日中活動をします。こうした障害者の日中活動について、施設内で行うというわけです。

施設内で障害者が内職のような仕事をしたり、デイサービスを受けたりします。こうして、障害者は施設内でスキルを伸ばし、行えることを増やしていきます。工賃を得ることにより、お小遣いを稼ぐことも可能です。

また日常生活を送るうえで発生する費用の心配をせず、問題なく暮らせる施設が救護施設や障害者支援施設です。症状が重く、まったく働けない障害者であっても日々を安心して過ごせる施設が救護施設や障害者支援施設となります。

救護施設と入所施設は根拠の法律が異なる

このとき、救護施設と入所施設(障害者支援施設)では設置の根拠となる法律が異なります。具体的には、以下のようになっています。

  • 救護施設:生活保護法
  • 障害者支援施設:障害者自立支援法

根拠となる法律が異なるため、救護施設と入所施設(障害者支援施設)はまったく違う公的サービスになります。

救護施設の場合、生活保護法が元になるため、生活保護を受けている人が利用します。救護施設の場合、生活保護受給者の利用割合が99.4%です。つまり、生活保護なしで救護施設に入るのは厳しいと理解しなければいけません。

それに対して、入所施設(障害者支援施設)は障害者自立支援法が元になっています。そのため生活保護であるかどうかは関係なく、重度の障害者であることが重要になっています。救護施設にはホームレスを含め、障害者以外が入居しているものの、障害者支援施設の利用者は障害者のみです。

提供サービスが生活扶助と障害福祉サービスで異なる

なお生活保護受給者が利用する救護施設では、生活扶助の提供がメインになります。つまり、生活保護を受けている人に対して「日々の生活を送れるように支援する」のが救護施設です。

このとき、救護施設の利用者が障害福祉サービスを利用することは基本的にありません。前述の通り、救護施設の中であらゆるサービスが提供されるからです。救護施設の中で作業訓練やクラブ活動などの日中活動を行えるものの、これらは障害福祉サービスとは異なります。

それに対して、障害者支援施設では「一つの施設内で複数の障害福祉サービスを提供する」ことになります。例えば入所施設(障害者支援施設)を利用する場合、以下の障害福祉サービスを利用できます。

  • 施設入所支援
  • 生活介護(デイサービス)
  • 就労継続支援B型

障害者支援施設についても、同じ施設内で障害者へ日中活動を提供し、寝泊まりもできるという意味では救護施設と同じです。ただ、入所施設で提供されるサービスは障害福祉サービスになります。

救護施設と障害者支援施設の大きな違いは何?

それでは、救護施設と障害者支援施設について大きな違いには何があるのでしょうか。実際に利用する人にとって重要な違いは対象者です。対象者について、両者には以下の違いがあります。

  • 救護施設:生活保護の障害者が利用
  • 障害者支援施設:重度の障害者が利用

施設の支援内容は似ているものの、利用対象者について両者には明確な違いがあります。

生活保護の障害者で救護施設を利用可能

前述の通り、生活保護受給者が救護施設を利用します。また生活保護であることに加えて、知的障害者や精神障害者、身体障害者などであり、生活が困難になっている人が生活できるように支援する施設が救護施設です。

生活保護であることが利用の第一条件であり、さらには支援なしでは日々の生活が困難になりやすい人が救護施設を利用しています。

なお厚生労働省の資料によると、救護施設を利用している人のうち86.2%の人が障害者です。ただ、障害の程度は人によって異なります。例えば救護施設を利用している知的障害者について、療育手帳の等級(重症度)は以下のようになっています。

療育手帳の重症度割合
A1(IQ20以下:最重度)10.5%
A2(IQ21~35:重度)29.7%
B1(IQ36~50:中等度46.5%
B2(IQ51~75:軽度13.2%

※厚生労働省:保護施設の支援機能の実態把握と課題分析に関する調査研究事業

このように、軽度から最重度の知的障害者が同じ施設内で生活しています。

障害者施設では、どのような障害者を受け入れのターゲットとしているのか施設ごとに異なります。一方で救護施設の場合、生活保護を受けている障害者であれば、すべての人が受け入れ対象になります。

そのため一つの施設に知的障害者や精神障害者、身体障害者がごちゃまぜで生活し、さらには重症度も人によって異なります。

重度の障害者が障害者支援施設を利用

それに対して、入所施設(障害者支援施設)では生活保護受給者かどうかは重要ではありません。実際のところ、生活保護の利用者が大半であるものの、生活保護でなくても障害者支援施設を利用できます。

施設入所支援によって障害者支援施設で寝泊まりするためには、必ず障害福祉サービス受給者証が必要になります。障害福祉サービスを利用するとき、必須になる書類が障害福祉サービス受給者証です。以下が障害福祉サービス受給者証であり、市区町村の役所へ申請することで入手できます。

また障害者支援施設を利用する場合、区分4以上(50歳以上は区分3以上)である必要があります。区分には1~6まであり、数字が大きくなるほど重度を表します。

また実際のところ、入所施設で寝泊まりしている人は区分5~6が大多数です。つまり、非常に重度の障害者のみ障害者支援施設を利用できると考えましょう。生活保護である必要はないものの、重度の障害者のみ受け入れている施設が入所施設です。

なお障害者支援施設によって特徴が異なり、知的障害者をメインで受け入れている施設があれば、知的・精神・身体障害者をまんべんなく受け入れている施設もあります。救護施設とは異なり、入所施設は施設ごとに特徴が異なります。

救護施設と入所施設・障害者支援施設は異なる

障害者が利用できる公的サービスは複数あります。その中でも、生活保護受給者が利用する施設が救護施設であり、障害者向けの施設が障害者支援施設です。

障害者が施設内で生活できるという点では、救護施設も入所施設(障害者支援施設)も同じです。ただ救護施設は生活保護受給者である必要があります。また救護施設の場合、障害の種類や重症度に関係なく入居できます。

それに対して障害者支援施設の利用では、障害福祉サービス受給者証が必須となります。また区分4以上の重度障害者が入所施設の利用対象者です。

根拠となる法律が異なるため、救護施設と障害者支援施設には大きな違いがあります。そこで、それぞれの特徴を理解したうえで最適な公的サービスを活用しましょう。

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