身体障害や精神疾患を含め、何かしらのケガや病気によって働けなくなる場合があります。こうした障害者について、会社員・公務員であれば傷病手当金の対象になります。

このとき、退職後であっても傷病手当金を受け取り可能です。「傷病手当金を受け取っている状態で辞める」「退職後に傷病手当金を申請し、受け取り始める」のどちらも対象です。傷病手当金の受け取りというのは、会社に在籍しているかどうかはあまり関係ありません。

ただ、退職後も傷病手当金を受け取るときは条件があります。そこで、どのようなときに退職後も傷病手当金を活用できるのか解説していきます。

条件を満たせば退職後も傷病手当金を受け取り可能

給料の3分の2という、非常に大きなお金が支給される制度が傷病手当金です。ただ、会社に在籍しているときに支給されるお金が傷病手当金と考えている人は多いです。

実際には、退職後であっても条件を満たせば傷病手当金を利用できます。以下の条件をすべて満たしておけば問題ありません。

  • 退職日までの1年以上、継続して働く(社会保険に加入)
  • 辞めるまでに3日連続の休みがある&退職日に出勤しない
  • 同じ傷病により、働けない状態が続いている

会社で働けなくなってクビになる場合、会社を辞めた後も傷病手当金を利用できないと障害者は困ります。そこで、それぞれの条件を確認しましょう。

退職日までの1年以上、継続して働く(社会保険に加入)

会社員・公務員である場合、傷病手当金の対象です。このとき、1年以上は継続して社会保険へ加入している人で退職後も傷病手当金の対象になります。言い換えると、1年以上は会社で働いている人が条件になります。

ただ中には、転職をする人がいます。この場合、「継続して」働いていたかどうかがポイントになります。たとえ転職したとしても、1日も空白期間を開けずに働いている場合、継続して社会保険に加入しているため、転職直後に障害者になってしまって退職したとしても傷病手当金の対象です。

一方、退職に伴って1日でも空白期間を設けて転職した場合、継続して1年以上の社会保険加入ではありません。この場合、転職後すぐにケガや病気で働けなくなってしまった場合、傷病手当金の対象外になります。

転職直後に障害者になってしまった場合、退職後に傷病手当金を受け取れるかどうかというのは、継続して働いているかどうかが関与しています。

辞めるまでに3日連続の休みがある&退職日に出勤しない

なお傷病手当金を受け取るには、必ず3日以上の連続した休みがなければいけません。そこで、有給休暇を利用してもいいので3日以上は連続して休みましょう。

なお、このときは事前に医療機関を受診している必要があります。医療機関の受信日より前の状況について、ケガや病気の状況を客観的に証明することはできません。そのため病院・クリニックを受診して、3日以上の連続した休みを作るのは必須です。

また最大の注意点として、退職日に出勤してはいけません。引継ぎなどによって退職日に出勤する人は多いですが、短時間でも退職日に出勤してしまうと、退職後に傷病手当金を受け取れなくなります。

「会社を辞める前に有給休暇を使い切る」などは何も問題ありません。ただ退職後も傷病手当金を受け取りたい場合、退職日に出勤を要請されても必ず断るようにしましょう。そうしないと、傷病手当金の受給資格を失います。

同じ傷病により、働けない状態が続いている

基本的には問題ないと思いますが、身体障害や精神疾患を含めて、同じケガや病気によって継続して会社を退職後も働けない場合に傷病手当金の対象になります。

例えばうつ病や双極性障害の発症によって傷病手当金の対象になった場合、同じ精神障害によって働けない場合は傷病手当金を退職後も利用できます。

一方、退職後に新たに発症した傷病では傷病手当金の対象外です。先ほどの例であれば、うつ病が治ったものの、新たに体をケガして歩行困難になったとします。ただ、体のケガは退職後の新たな傷病であるため、これについては傷病手当金の対象外です。

会社(事業主)への依頼は必須

実際に傷病手当金を利用するとき、申請者が記入してもいいですが、通常は会社(事業主)へ依頼します。これは、在職中であっても退職後であっても同様です。

傷病手当金への申請が在職中なのか、それとも退職後なのかによって必要書類は少し異なります。例えば退職後に申請する場合、退職日が分かる離職票などの添付が必要になります。

ただ退職後の申請を含め、すべてのケースにおいて、傷病手当金支給申請書に会社が記入しなければいけない欄があります。これは、申請者が会社で働けなくなった期間や賃金の支払い状況を会社側が証明しなければいけないからです。

傷病手当金の申請では、必ず会社側への依頼が必要になります。なお、倒産や会社の協力拒否などによって依頼できない状況であっても、健康保険組合に連絡することで協力してくれます。他には、あなたが給与明細や出勤簿のコピーを保管している場合、それらも傷病手当金を得るための助けになります。

支給開始から1年6か月が期限

なお、傷病手当金の支給期限は1年6か月です。高額なお金をずっと受け取れる制度ではなく、あくまでも一時的な給付金と考えましょう。

在職中に傷病手当金を受け取り始めたのか、それとも退職後に傷病手当金の受け取りを開始したのか、人によって状況は異なります。ただ、いずれにしても傷病手当金の受け取り期限は1年6か月です。

1年6か月の間に新たな仕事を見つけ、社会復帰できるのであれば何も問題ありません。特に身体障害者であれば、社会復帰できる可能性は高いです。

一方で精神障害者の場合、1年6か月では病気が治らず、社会復帰できないケースがよくあります。その場合、傷病手当金が切れた後も給付金を得られるようにするため、障害年金の申請を同時に行うなどの対策も必要です。

途中で働ける状態になると継続給付は打ち切り

このように退職後であっても継続給付できたり、退職後に申請できたりする傷病手当金ですが、あくまでも働けない人のための制度です。そのため障害によって十分に働けない人であっても、途中で働けるようになり、仕事を開始したら傷病手当金の受給は停止となります。

ただ、人によっては「仕事を再開したものの、実際には体調が万全ではなく、仕事復帰後にすぐ辞めてしまった」というケースがあるかもしれません。特に精神障碍者の場合、こうした事態が発生しやすいです。

この場合、前述の通り一度でも仕事できるようになれば、その時点で傷病手当金は打ち切りになります。たとえ、復帰後すぐに辞めても傷病手当金の再開とはなりません。

健常者だった人が障害者となり、症状が改善してくると「早く働かないといけない」という焦りが出てきやすいです。

ただ、体調が万全でないのに仕事復帰してしまうと、働けないのに傷病手当金の打ち切りとなり、その後の生活が成り立たなくなります。そのため、たとえ体調が改善しても仕事腹筋のタイミングを適切に見定めましょう。

退職後の継続給付や申請は可能

ケガや病気によって急に働けなくなった場合、会社をクビになって退色するのは普通です。そうしたとき、傷病手当金は「退職後に継続給付を受ける」「退職後に申請する」のどちらであっても問題なく可能です。

「継続して1年以上、途切れなく社会保険に加入している」「3日以上の連続した休みがある&退職日に出勤していない」「同じ傷病で休んでいる」という条件はあります。ただ、こうした条件に当てはまっているのであれば傷病手当金の対象です。

なお、一日でも仕事復帰すると傷病手当金はその時点で打ち切りとなります。たとえ復帰後すぐに仕事を辞めても傷病手当金は復活しません。

退職後も傷病手当金を利用できるものの、受給には要件があります。そこで、会社を辞めた後も傷病手当金を受け取れるように準備を整え、申請をしましょう。