障害年金へ申請可能な年齢について、通常は20歳以上となります。つまり障害年金の受け取りをするためには、未成年だけでなく、成人後の18歳や19歳であっても申請できない人が大半になります。

それでは未成年・18歳未満で障害年金の受給が無理かというと、必ずしもそうではありません。世の中には、10代から社会保険・厚生年金に加入している人がいます。こうした10代(20歳前)で会社勤めの人が障害者になった場合、障害年金の対象になります。

つまり、中卒で就職した人は20歳前であっても障害年金を受け取れる可能性があります。対象者は少ないものの、人によっては未成年や20歳前でも障害年金に申請できるのです。

それでは、未成年や18歳・19歳の人はどのように考えて障害年金を活用すればいいのでしょうか。10代(20歳未満)で障害年金へ申請するときの考え方を解説していきます。

障害基礎年金は20歳以上から受給できる

障害年金について調べると、書籍でもネット上の情報でも「20歳以上でなければ障害年金を受け取ることができない」と記されています。これは、障害基礎年金へ申請できるのが20歳以上だからです。

最も有名な年金は老齢年金です。65歳以上になると老齢年金を受け取れますが、この障害者バージョンが障害年金です。また「年金」という言葉からわかる通り、日本年金機構が障害年金を管理しています。

国民年金保険料の支払い開始義務を生じる年齢は20歳からです。そのため、障害基礎年金(国民年金を支払っていた障害者が受け取れる障害年金)は20歳以上でなければ申請できません。未成年で障害年金を受け取れないという根拠は「障害基礎年金の受給開始年齢が20歳」だからです。

そのため生まれつき全盲だったり知的障害だったりする人について、障害年金の基準を満たしているとしても、20歳になるのを待つ必要があります。

厚生年金加入の10代は障害厚生年金を受け取れる

ただ障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。老齢年金にも老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類があり、厚生年金加入者のほうが高額なお金を年金として受け取れるのは有名です。これと同じ制度は障害年金にもあります。

国民年金保険料は前述の通り、20歳から納付義務を生じます。そのため、すべての人で20歳から障害基礎年金へ申請できるようになります。

ただ中卒や高卒で就職する場合、10代のうちから会社で働き始め、社会保険・厚生年金に加入することになります。これらの保険料を支払うというのは、日本年金機構へ保険料を支払っていることを意味します。つまり、こうした厚生年金の加入者が障害者になった場合、障害厚生年金を受け取れます。

初診日に会社員である必要がある

10代(20歳前)で障害年金を受け取るためには「初診日に厚生年金に加入している」ことが条件になります。障害の原因となった傷病について、初めて医療機関を受診した日が初診日です。

例えば中卒で就職し、厚生年金に加入したとします。その後、16歳のときにうつ病を発症して医療機関を受診した場合、初診日のときに厚生年金に加入しているため、障害年金(障害厚生年金)の対象になります。

障害年金で初診日は重要であり、初診日に会社員(または公務員)だったのかどうかによって、障害基礎年金なのか、それとも障害厚生年金なのかが違ってきます。

なお会社員の場合、強制的に社会保険・厚生年金へ加入するようになります。そのため年金保険料の未納期間は発生していないはずなので、保険料の納付要件も満たしているはずです。

いずれにしても、10代から就職していて初診日に会社員の場合、たとえ20歳未満であっても障害厚生年金の申請・受給が可能と理解しましょう。

・10代(20歳前)で支給されるのは障害厚生年金の部分のみ

なお通常、障害厚生年金をもらう人について、2級以上では障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受け取ります。ただ障害基礎年金の受け取り開始は20歳以上です。そのため10代で要件を満たしている人で障害年金の申請は可能ですが、10代では障害基礎年金の部分がなく、障害厚生年金の部分のみ支給となります。

年齢が上がり、20歳になれば障害厚生年金に加えて障害基礎年金も支給されるようになります。そのため、10代で障害年金2級以上を受け取っている人については、20歳になると同時に、もらえる障害年金の額が大きくなります。

初診日から1年6か月後(障害認定日)に申請できる

なお10代で障害年金を受給するとなると、高卒ではなく、ほとんどが中卒にて就職している必要があります。これには障害認定日が関係しています。

障害年金に申請するためには、原則として、初診日から1年6か月が経過する必要があります。初診日から1年6か月の時点を障害認定日といいます。障害認定日を基準にして、障害年金に関する書類を提出できます。

例えば中卒で就職し、働き始めて16歳のときにうつ病や統合失調症などを発症して精神障害者になったとします。その1年6か月後の障害認定日に17歳である場合、17歳のときに障害年金の申請が可能です。

中卒で就職している人は全体からすると稀であるため、人数は多くありません。ただ場合によっては、18歳未満や20歳前でも障害年金を受給できるというわけです。

なお注意点として、あくまでも「初診日に厚生年金の加入者」である必要があります。例えば中卒で土木作業員をするとき、初診日に会社員であれば障害年金の要件を満たすものの、同じ土木作業員であっても日払い形式やアルバイトでは障害年金の要件を満たしません。こうした人は自営業と同じであり、厚生年金の加入者ではないからです。

自営業(個人事業主)は厚生年金ではなく、国民年金であることは有名です。中卒で働く場合も同様に、日雇いやアルバイトではなく、障害年金の受け取りでは会社員である必要があります(アルバイトであっても、厚生年金に加入していれば障害年金の対象です)。

障害年金の未受給なら遡及請求が有効

ここまで解説した通り、中卒(または高卒)で働いている人の場合、たとえ20歳に達していなくても、初診日に会社員であれば障害年金へ申請可能とわかります。特に中卒で働き始めた人の場合、たとえ未成年であっても障害年金へ申請できるケースがあります。

なお多くの人で「20歳以上でなければ障害年金を受給できない」と考えています。そのため障害年金を申請していない10代の障害者は多いですが、その場合はできるだけ早めに遡及請求をしましょう。

過去(障害認定日)までさかのぼって障害年金を受け取る方法が遡及請求です。10代のときまでさかのぼって請求する場合、遡及請求によって数百万円のお金が振り込まれるのは普通です。

なお遡及請求では以下の診断書(合計2枚)が必要になります。

  • 障害認定日から3か月以内の診断書
  • 現在の診断書

両方の診断書について、障害年金を受け取るための認定基準を満たしている必要があります。当然、書類を集めるには時間がかかります。また障害年金には5年の時効があり、5年以上前にさかのぼっての遡及請求はできません。

そのため遡及請求をするとき、できるだけ早めに準備に取り掛かり、素早く障害年金の申請をする必要があります。準備が遅いと「医療機関がカルテを既に廃棄しており、障害認定日の診断書作成ができない」「時効により、本来ならもらえるお金が少なくなる」などの不都合を生じやすくなります。

10代(20歳前)でも働いている人は障害年金を受け取れる

通常、20歳以上でなければ障害年金の申請ができません。ただ場合によっては、10代であっても障害年金に申請できるケースがあります。

中卒や高卒など、10代(20歳前)で働いていて初診日に厚生年金に加入している場合、障害年金へ申請できます。初診日から1年6か月が経過しており、障害認定日を過ぎているのであれば、たとえ20歳未満であっても積極的に障害年金へ申し込みましょう。

特に中卒の場合、たとえ18歳未満の未成年であっても障害厚生年金を受け取れます。また既に年月が経過している場合、遡及請求によって高額なお金を受給できます。

多くの人にとって、障害年金の受給開始は20歳からです。ただ中には例外があり、10代から働いていて初診日に厚生年金に加入している場合、障害年金を活用しましょう。

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